💉陽だまりの君へ

こちらの流れをお借りしています。

▼お借りしました！
倉橋さん宅：レフティアさん

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「お前は、私たちの都合の良い人形テオドールであればいい」

　尊敬していた両親から告げられた言葉。幼いながらにその言葉は突き刺さって、でも、それに抗う術を当時の彼は持ち合わせていなかった。
　ただひたすらにドクターの勉強をして、トレーナーに手を差し伸べる両親の見せかけの優しさに呼応した。努力はいつか実を結ぶって、いつか気付いてもらえるって、そう思っていた。
　それでも、両親は野生のポケモンは絶対に助けなかった。金にならないから。それが決定打だった。
　初めて両親に反抗して、ただの都合の良い人形テオドールでいたくなくて、暴れる野生ポケモンを鎮めようとバトルをした。そして、一生消えない傷をつけた。
　恐ろしくなって、両親からも、自分の名も、一緒に戦ってくれたパートナーリーリオからも逃げ出して。

　そんな自分が、世界で一番、大嫌いだった。

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　その手は酷く、温かだった。
　レフティアの手からじわりじわりと伝わってくる熱が、テオを心から安心させた。

「……きっと支離滅裂で、レフには意味の分からない話かもしれない」

　は、と、そういった保身のような前置きをいれてしまったことに気付き、また自分が嫌になる。伝えたい言葉はそんなつまらない前置きなんかじゃなくて、もっと別にある。
　その小さな手を握り返して、ようやく、次の言葉を発した。

「それでも、聞いて欲しい」
「はい、もちろんです」

　想像通りの答えと、柔らかな表情が返ってくる。それにテオも微笑んで、もう一度、彼女の手を握り返した。

　ああ、どうしたって、自覚してしまう。どうしたって、もう、自分の感情は偽れない。

「俺の名前は……テオドール。テオドール・アデール」

　息を、一つ吐く。

「俺は、全部嫌になって……全部から逃げ出して、そんな自分が一番、嫌で嫌で仕方なかった」

　息を、吸う。

「でも、レフに出会って、君と話して、ここがね。久しぶりに……温かくなった」

　空いている片方の手を、胸に当てる。

「それは、何度会っても変わらなかった。……ううん、会う度に、君の優しさと強さに勇気をもらったよ」

　目を、閉じる。

「俺は君の優しさにつけ入って甘えてる。ずっと」

　胸に当てた手を、握りしめる。

「もう、甘えてるだけは嫌なんだ」

　目を、開く。

「だから、弱い自分にけじめをつけたくて……バトルを挑んだんだ。利用したみたいで、ごめんね」

　真っすぐ、レフティアを見据える。

「俺は、自信を持って君の隣に立っていたい」

　その想いが、届くように。

「涙を拭ってもらうんじゃなくて、君を笑顔にしたい」

　想いを、届けるために。

「だから、待ってて」

　此処にいる、理由を。

「自分勝手だって分かってる。だけど」

　進めるだけ、前に。

「今度は俺から、手を引くから」

　世界が、色付いていくのが分かった。
　彼女の手をそっと放して、後ろを向く。一歩、二歩、ゆっくりと進んで、ゆっくりと振り返れば、レフティアの少しだけ不安そうな表情が見えた。

「レフ」

　彼女の名を呼ぶ。
　目の前にいる人を、悲しませないように。声を聞きたい人が、自分を見てくれるのを祈るように。

「でも俺が寂しいから、また会いに来てもいい？」