💉特別な時間

こちらの流れをお借りしています。

▼お借りしました!
倉橋さん宅:レフティアさん、ミュラッカさん

※前半はフェイの独白になります。



 テオの感情を感じる。落ち着いていて、温かい気持ち。
 種族柄人の感情を読み取るのは得意な方だけど、長い付き合いであるテオの気持ちは耳の触覚で触れなくてもよく分かる。
 僕がグリーンチームへ後押ししたときは、不安と、少しの恐怖、焦り、そういうのでいっぱいだったけど。あのお祭りの後……リーリオがテオのところに帰ってきた日に、テオなりに覚悟を決めたみたいだったから、少しでも前に進めたらいいなって背中を押してみて正解だったな。
 アメリーから少し話を聞いていたけれど、やっぱり、彼女は……レフティアという女性は、テオにとって特別なんだろう。

 テオが僕をレフティアに紹介してくれて、一声鳴いて返事をする。
 オスカーやリーリオの紹介もして、テオが表情を曇らせたのに彼女も気付いたみたいだったけど、何も言わなかった。優しい人だなあ。
 オスカーは……まあ……もうあんな性格だから仕方がないけど、リーリオがバトルするってなったときに、テオをいじめないでいてくれたらいいんだけど。
 彼女のモンスターボールから出てきたのはとてもきれいなユキメノコで、差し出された手に握手で答えながら。

『僕はフェイ。よろしくね、ミュラッカ』

 その手はそのタイプ特有で少し冷たかったけど、いつもより少しご機嫌な僕は、あんまり気にならなかった。

===

 春の日から、彼女は何も変わっていない。
 なんて、失礼な言い方かもしれないが、テオはそんなレフティアの様子に安心したのだ。
 アニーニケとはぐれてしまったことをうっかり忘れてしまっている様子も、彼を心配して……否、心配させている、と思っているのだろう。言葉にせずとも、なんとなく伝わってくる。
 その優しさが、穏やかさが、酷く心地よかった。

「アニさまも探しながらでも大丈夫でしょうか?」

 勿論、と、口にしようとして、口を開いて、声が、出なかった。一瞬、自分でも何が起こったのか分からなくて、固まってしまう。
 驚きのあまりはく、はくと口を開閉させていると、隣から心配そうなレフティアの声が聞こえる。

「テオさま……?」

 答えなければ。
 彼女はただ、ただ当たり前のことを口にしているだけなのに。そこに何の悪意もないことは明白で、答えられない理由など何もないはずだ。何も。


 レフティアは、アニーニケと合流したら。
 あの春の日の時のように、共に行ってしまうんだろうか。



「……一つ、約束をしてくれないかな」
「約束……どのような、内容でしょうか……?」

 ようやく口からついて出た言葉は、肯定でも、否定でもなくて。
 突然約束、なんて言われて、彼女が混乱しているのが分かる。それには少し申し訳なく思いながら、そしてこれから続ける突拍子もない提案にも驚かせるだろうな、と先に反省をしながら、続ける。

「アニーニケさんを探しながら……は勿論、大丈夫だよ。はぐれたのなら、彼も心配してるだろうし」

 心に引っかかったもの。
 今までなら、そんなものは簡単に押し殺せてしまえたはずなのに。どうしてか、どうしても、譲れなかった。

「……でも、大会中だけでいい。一緒にいて欲しいんだ」

 レフティアの、少しだけ驚いた表情が見える。

「大会が終わったら、必ず会場まで……アニーニケさんのところまで届けるって約束するよ」


 なんて酷い独占欲だろう。
 口に出してから、少しだけ後悔して、それでも、彼女の手を祈るように握った。

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