💉優しい色の少女
こちらの流れをお借りしています。
▼お借りしました!
とわさん宅:ユニちゃん、アインくん、リコルくん
酷く、怯えた目をしていた。
こないで、と拒絶の言葉をテオに向けてきた少女は、後方のポニータたちを庇うように立ちはだかった。恐らく、自分のパートナーたちなのだろう。明らかに衰弱していて、放っておけば大事になるかもしれない。
見知らぬ男が突然話し掛けたのだ、彼女の心情も穏やかではなかった中で、咄嗟にパートナーを守ろうとしたのだろう。そうすぐに察することが出来たから、拒絶の言葉に驚きはしたものの、怒りも不快感もなかった。
敵意はないこと、彼女のパートナーたちを助けたいことを伝えたくて、自分のパートナーでもある、同じ種族のアメリーと治療に際してタブンネのフェイをボールから出すと、彼女は少し落ち着いてくれたようだった。助けを、求めてくれた。
「……うん、もう大丈夫だよ」
そう答えて名乗ると、彼女は緊張の糸が切れたのか、ふ、と意識を手放してぐらりと体勢を崩した。咄嗟に手を伸ばして彼女を受け止めて、ほっと胸をなでおろす。
「よかった。……彼女に怪我はないみたいだ」
独り言のように呟いて、テオは自身のもう一つのモンスターボールを放る。そこからはアメリーの兄であるガラルギャロップのオスカーが現れ、彼はなんだなんだと辺りをキョロキョロと見まわしたあと、テオに抱えられている見知らぬ少女を見て驚いたように一声鳴いて見せる。
「オスカー、しばらく彼女を頼めるかな。……こら、そんな顔しない」
テオの言葉に明らかに不服そうに鼻を鳴らしたオスカーを諫めると、彼は渋々と言った様子で地面へ座る。彼女をオスカーの体へ寄りかからせるように寝かせると、ふるる、とまた小さく鳴いて慰めるように頬を寄せた。どうやら面倒をみてやっている感覚なようで、満更でもないらしい。
その様子にテオは少し肩をすくめてからアイン、そしてリコルと呼ばれたポニータたちに近付いて、怯えさせない程度のその美しい鬣を梳くように撫でた。
「アインくんにリコルくん……だったね。彼女の為に頑張ってくれてありがとう。君たちもすぐ元気にしてあげるから」
メディカルバッグからきのみやきずぐすりを用意しながら、傍に控えていたアメリーとフェイに声を掛ける。
「アメリー。フェイ。手伝ってくれる?」
アメリーは気合十分、と言った様子で元気に一声、フェイは少しマイペースにゆっくりと一声する。
オスカーも含め、パートナーたちの相変わらずの様子に微笑ましくなりながらも、傷付いたアインとリコルを一刻も早く助けてあげなければと深呼吸して緊張感を取り戻していく。
「さあ、やるよ。アメリーは"いやしのはどう"!フェイは"ねがいごと"!」
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「……あ、目が覚めた?」
あれから、何刻が経っただろう。
オスカーにもたれかかっていた彼女が身動ぎをしたのを見て、今度は怯えさせないようにとゆっくり声を掛ける。もたれかかられていた当のオスカーは身動ぎに気付かずすやすやと眠ってしまっている。
静かに瞼を開いた彼女はそれでも少しだけ怯えたようにびくりと体を震わせて、キョロキョロと辺りを見回す。あれから、場所は一歩足りとも移動していない。
「……あ、あの……わたし、」
「安心して。アインくんもリコルくんも無事だよ。今は……ほら」
不安そうに彼女にそう声を掛けて指を差す。その先にはポニータが3匹……アイン、リコル、そしてアメリーが身を寄せ合って眠っている。その傍ではフェイが面倒を見るように三匹を見守っていた。
その様子に、彼女も少なからず安心したように見えた。
「改めて。俺はテオ。……えっとね、もう少しゆっくりして、君が元気になったら、このままポケモンセンターに行くのが一番なんだけど……」
状況説明をしようとし、言葉を濁して、目を伏せて、頭を掻く。
その様子に彼女もきょとん、とした様子で、それにまた苦笑を返した。
「……ごめん。迷子なんだ、俺が……」