💉一緒に行こう

こちらの流れをお借りしています。

▼お借りしました！
とわさん宅：ユニちゃん、アインくん、リコルくん

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「………テオくん、は」

　おずおず、と、言いずらそうにユニと名乗った彼女は口を開いた。警戒心が強くて、人見知りな気質のあるように見受けられる彼女が自ら自分の名を呼んだことに少しだけ驚きつつも、微笑ましくて、うん、と相槌を打つと、またゆっくりと言葉を続けた。

「………ポケモンセンターについたら、もう、行っちゃう？」

　それにまた驚いてすぐに言葉を返せずにいると、今度は慌てたように紡ぐ。

「あ、……え、と…………お、お礼……してない。…………ギャロップの話も、ききたい……」

　きっと、精一杯の言葉だったのだろう。
　テオは、自分がお礼を言われるようなことをしたとは思っていない。ポケモンドクターとして、一人の人間として、トレーナーとして、傷付いた彼らを見過ごせなかっただけだ。
　ともすれば、自分のエゴ。
　頼んでない、と、余計なお世話だと、言われたこともある。当然だ、頼まれてないのだから。
　でも、それでも、ユニのように、ありがとう、と。自分のことを、自分のポケモンたちのことを聞きたいと言ってくれる人たちがいるから、自分はやっていけているのだ。

「……ありがとう、ユニちゃん」
「え、えと……お礼は、わたしが……」
「ううん。君が一生懸命自分のパートナーを守ろうとしてくれて、俺と、俺のパートナーたちを信用してくれて、嬉しいんだ」

　ユニの頭に、驚かせないようにそっと手を乗せる。びく、と彼女は少しだけ体を震わせたが、拒絶はしなかった。そのままゆっくりと撫でる。
　もし自分に妹がいたなら、こんな感覚だろうか。少し失礼かな、なんて考えながら。

「俺はね、傷付いた野生のポケモンたちを治療しながら旅をしてるんだ。決まった目的地はないけれど、近くの街から街へ転々とね」

　たどり着けないことが多いんだけどね、と冗談めかして言うと、ユニの空気がまたふわりと柔らかくなった気がした。
　それにまた微笑んで彼女の頭を一撫でしてからぱっと手を離す。

「だから、急ぐ旅じゃないんだ」
「……！それじゃあ……」
「……うん。お話しようか。オスカーのことはもちろん……君たちの話も聞きたいな」

　未だユニの背もたれになっているオスカーと、仲良さそうに眠るアイン、リコル、そして自分のパートナーであるアメリーを見て、ゆっくりと立ち上がる。

「ユニちゃんはアインくんとリコルくんをモンスターボールに戻してあげられる？ポケモンセンターまで歩くには、まだ疲れているだろうから」
「………う、うん」
「フェイ、アメリーもボールに戻って。……オスカー」

　ユニに二匹をボールに戻すようお願いしたあと、同じく傍にいたアメリーと傍に控えていたフェイをボールに戻し、オスカーに声を掛ける。
　彼はすっと静かに目を開いて、ふるる、と一声したあと、自分を背もたれにしていたユニを首をもたげてひょいっと少し乱暴に自分の背に乗せて立ちあがった。

「わっ……！」
「こら、オスカー。女の子には優しくしないとダメだろ？」

　ふん、と顔を背けながら鼻を鳴らすも、その態度は満更でもなさそうだ。そもそも、オスカーが他人を自分の背に乗せること自体、かなり珍しい。

「ふふ。気に入ったみたい。ユニちゃんのこと」
「……ほんと？」
「うん。ユニちゃんが良ければ、このままオスカーに乗ってあげてくれないかな」

ぽんぽん、とオスカーの体に触れる。

「……一緒に行こう。ユニちゃん」

　俺は案内してもらう側なんだけどね、なんてまた冗談を言いながら。