💤また会えたね

こちらの流れをお借りしています。

▼お借りしました！
いるいさん宅：アマナちゃん、アリスちゃん

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　初めてのハロウィン。
　仮装をして、『バトルオアトリート』と唱えて、相手チームとバトルする楽しい大会。
　ただし、シックスがその呪文を唱えることは一度もなかった。理由は至極簡単で、出会う人が皆同じチーム、もしくはイエローチームだったからだ。
　ただただバトルがしたいという理由だけで参加したために、スイーツチップ集めなどに興味はなく、結局最初から最後までふらふらしているだけで終えることとなってしまった。
　競技を終え、早々に仮装を脱ぎ捨てて森を出る。どのチームが優勝したかなんてことにも興味が湧かず、バトルが出来なかったことへの不満で不機嫌を極めていたのだった。

「……つまんない……」

　自分の運の悪さをどこにぶつけることも出来ず、ぎゅっと腕に力が入る。その腕に抱かれていたエウはたまらずそこからするりと抜け出しシックスの肩に上ると、怒ったように硬い尻尾でぺしぺしと彼の頭を叩いた。
　彼女もまた、バトルが出来なかった鬱憤が溜まっているようだ。

「もう……僕だってバトルしたかったって……」

　鬱陶しそうにエウの尻尾を払いのけて不機嫌を露わにする。大会が終了した会場にはバトルを終えたトレーナーばかりで、自分からふっかけたとしても断られるのは目に見えている。無理矢理させることもできるだろうが、ここには人目が多すぎる。

「はあ……」

　大きなため息を、一つ。
　ぼんやりと周りを眺めていると、春の色が目の前を横切った。
　そういえば競技中に会った、花の名の女の子。バトルが好きだと言っていて、また今度会ったときにバトルをすると約束をしたあの子。挑戦的な笑顔で自分を煽ってきたイエローチームの彼女も、そういえばこんな色をしてたような。

「……あ」
「わっ……！？」

　咄嗟に横切る春の色の手を取って、強めに引き寄せる。バランスを崩した彼女を少し強引に立たせて、顔を覗き込む。
　優しい春の色の髪。やっぱりふわふわしてて、柔らかかった。思わず口元が緩む。

「また会えたね。思ったより早かった」

　逃がさない、と言わんばかりに少しだけ強めに手を握る。彼女はとても驚いた表情をしていて、それがとても新鮮で、心地よい反応だった。

「えっと、シックス……さん？」
「……うん。アマナ……だっけ。仮装じゃないと雰囲気変わるねぇ」

　彼女の手を取っていない反対の手は、すぐさま”ともだち”の入った自分のモンスターボールへと伸ばされる。まだ誘ってもいないのに、誰で戦おう、どんなバトルを見せてくれるんだろう、そんなことしか考えられなかった。
　エウはいつの間にかシックスの肩から降りて、アマナの足元にいる大人しそうなイーブイにちょっかいを掛けていた。

「ねえ、約束。覚えてるよね」

　エウを一瞥して、手に取ったモンスターボールを見せびらかすようにアマナへ突き出す。

「次に会ったらバトル、してくれるんでしょ？大会はもう終わったし、やろうよ。今から」

　彼女が何か言いたげに口を開こうとするが、拒否の言葉は聞きたくなくて間髪を入れずに続けた。

「僕が勝ったら、キミの"夢"を僕にちょうだい？逆にキミが勝ったら、言うこと一つ聞いてあげる」

　悪くない条件でしょ、なんて、笑って。