✉️その想いが届くように
こちらの流れをお借りしています。
▼お借りしました!
倉橋さん宅:レフティアさん
この時期―――ユールは特別仕事が多い。
年に一度の特別な日。大切な人に贈り物をし、大切な人と共に過ごす大切な日。頼まれていた商品自体を送り主まで運ぶこともあるし、包装されたプレゼントを預かって届けることだってある。
その一つ一つに想いが、感情が込められていることが分かるから、この時期の配達はどんなに忙しくともイゼットの中では最も楽しい時期であるのだ。
それなのに目の前の依頼主である女性……レフティアは、なぜかとても申し訳なさそうにしている。
その手の中には丁寧に包装された小さくて真っ白な箱。クリスマスプレゼントだろうということは容易に分かる。
「その、どこにいるか普段はわからない人への配達なんです。普段旅をされていて……大丈夫でしょうか?お名前はテオさんと仰るのですが」
なるほど、と合点は言った。どこにいるのか分からない人への贈り物なら、確かに届け先が分かっている人よりも大変ではある。
それに、珍しい依頼だな、とも思う。
「あの、もしも厳しいようでしたらいいのです」
イゼットが何かを発する前に彼女は持っていたプレゼントを下げてしまう。その行為に、反射的に言葉が飛び出た。
「何が厳しいんすか?」
「えっ」
レフティアは驚いた声を上げ、それにイゼットもハッとして慌ててぶんぶんと首を振り、すみません、と添える。
「ええと……居場所が分からない、ってことは、居場所を特定する手段がない、ってことっすもんね?住所もそうですけど、連絡先とか」
「はい……」
「それでも贈りたいって思ったから、オレに声掛けてくれたんすよね」
少しだけ気まずそうにしているレフティアに、イゼットはにかっと何の偽りもない笑顔を向ける。
「じゃあ、レフティアさんがそんな顔する必要、なんもなくないっすか?」
「でもわたくし、無茶なお願いをしているのではないですか?」
下げられていた視線を少しだけあげて彼女がこちらを見上げるも、イゼットが笑顔を絶やすことはない。それどころか彼女が持つ大切な贈り物を受け取ろうとするように、ゆっくりと手を差し出した。
「俺は頼ってくれたことが嬉しいですし、レフティアさんも贈り物できてハッピーっすよね?」
そりゃあ通常の配達よりは時間かかっちゃいますけど、と頭を掻きながら答えれば、レフティアは少しだけくすりと笑ってくれる。
それを見たイゼットも楽しそうに言葉を続けた。
「テオさん、でしたっけ。その人の写真とかあれば一番いいんすけど……なければ外見とか、どんな人かとか。伝えたいことがあるなら、その言葉も」
きっと会いたいのだろう。それが伝わってくる。暖かで優しくて、居心地の良い感情。
どんなに忙しくても、大変でも、それを無下にするような選択肢が、イゼットの中には存在していなかった。
「教えてください。オレが絶対、届けますから」