STEAMとデザインと技術士と
昨今、STEAM教育が脚光を浴びています。Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術、リベラルアーツ)、Mathematics(数学)ということで、いわゆる理系分野にアートが加わった概念です。
STEAMというともっぱら、プログラミングやロボット、AIなどと結び付けられて語られますが、先ほどの言葉の定義のとおり、本来はもっと大きな領域を指す概念のはずです。
特に、元々STEMと呼ばれていたものがSTEAMに置きかわっていったというのは、平たく言うと
理工学と人文学の融合
が強調され始めたということだと理解しています。もっとよく聞く語に置き換えれば
文理融合
の重要性が叫ばれ始めたということでしょう。
いかに「融合」させるかというのがポイントなので、プログラミングだとかロボットだとか、ひとつひとつの単元そのものに重要性があるというよりも、課題解決に当たって、STEAMの視点をバランス良く持つということが大切なのでしょう。
その辺の感覚は、技術一辺倒の見方だけじゃなく、技術者倫理に則った技術的解決が求められる技術士の思想に近いものを感じます。
さて、この文理融合的な思考をどうやって磨いていくかということです。
結論から言うと
デザインの考えを磨いていく過程で、STEAMの思考をバランス良く身につけていける
のではないかと考えています。
デザインというと、ファッションデザインやインテリアデザイン、Webデザインなどが一般的には思い浮かぶところかもしれませんが、ここで言うデザインはどちらかというと、エンジニアリングデザインと呼ばれるものの類です。
工業製品の材料や構造、寸法、特性など、要は製品仕様を決めるのがエンジニアリングデザインです。
エンジニアリングデザインの考えを習得していく過程で、STEMの側面だけでなく、安全や倫理、法律や社会との関係など複合的な目線も自然と持ち合わせることになります。
そういうわけで
エンジニアリングデザインの考えを通してSTEAMの素養を身に着ける
ためのケーススタディをブログの中で発信していくことにしました。
その第一号がこちらです↓↓
「ブランコというものはこういうものです」
「ブランコのデザインはこうです」
という一方向的な教科書ではなく
「ブランコというものがこういうものだったら、こういうことを考えないといけないよね」
といった感じで、考えの取っ掛かりになることを意識して書いた内容です。
答えはひとつではないので、「ブランコというものがこういうものだったら」という出発点が違えばその先で考えることも変わってきますし、もし出発点が同じだったとしてもヒトによって考えの深みが変わってきます。
似たようなケーススタディを積み重ねることで、思考の幅をより広く、深くしていくのが狙いです。
また、副産物として
「アタリ前のことが実はアタリ前じゃないことに気づく」
ためのきっかけになればとも思います。
最近は、先ほど書いたようにプログラミングやらロボットやらに脚光が集まりがちですが、身の回りにアタリ前に存在しているように見えるモノも、ものづくりや維持の過程で関わっているヒトがいっぱいいます。
身の回りにありふれていて一見つまらなさそうでも、デザインのプロセスを辿ってみると、実は様々な知恵の結晶だったりします。
そういったことに気付けるヒトが増えれば増えるほど、他人の仕事に対するリスペクトが高まり、世の中全体が活気づいてくると信じてやみません。そんな副次的な効果も期待して、エンジニアリングデザインを通したSTEAM時代の思考法について発信していければと思います。