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キャパシタを使ってLEDを時間差で点灯させる


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ガチャガチャづくりにある程度めどが立ってきたので、子供たちの次なるおもちゃづくりは何にしたものかと思案しました。

いま現在進行中でハマってるものが間違いないと思い、仮面ライダーやウルトラマン界隈で何か作れないだろうか・・・剣はなんか自分たちでもしょっちゅう段ボールで何かつくってるようだし・・・

ということで、変身ベルト、これしかない!と速攻決まりました。

元々、手回し発電機を何かの形で応用してみたかったので、手回し発電したらゲージがチャージされるようなベルトがつくれたらいいなぁとぼんやり考えてました。

ところが、工作用のモーターを使って発電させようとすると、モーターの軸を高速回転させて満足いくだけの発電量を得るためには手回しの部分を結構なサイズで作らないとならず、腰にとりつけて使う変身ベルトの特性上ちょっと扱いづらそうだなーとすぐに思い至りました。

そこで、手回し発電機はいったん脇に置いておいて、他のチャージ手法を考えてみました。そこでふと、ずっと以前に購入して積読状態になっていた「Make: Electronics - 作ってわかる電気と電子回路の基礎」という本に、指を使ってトランジスタを動作させるといった記載があることを思い出しました。

これだ、と。

何もしなければ動作しないけど、触ることでチャージが始まるような仕組みをつくれば、変身ベルトの寸法感でも十分収まるし、何より子供でも簡単に使うことができる。

そこで、まずは簡単なプロトタイプとして、トランジスタとコンデンサとLEDを使って、触るとトランジスタがONになってチャージが始まり、あるタイミングでLEDが光るような動作が実装できないか検証してみました。

実験回路

まず始めに考えた回路は図1のようなものです。これは次のような順序で動作する回路です。

  1. 指先マークのところに実際に、濡らした指先をあてがう ⇒ トランジスタのベースに微妙に電流が流れてトランジスタがオン状態になる

  2. コレクタ電流が流れ、キャパシタに電荷が溜まり始める ⇒ キャパシタの電圧が上がっていき、同時に、LEDにかかる電圧も上がっていく(キャパシタとLEDにかかる電圧は同じ)

  3. LEDの動作開始電圧を超えたところで、LEDが点灯する

図1.キャパシタに電荷がたまるとLEDが光る回路

こう書いてしまえばどうってことない回路、どうってことない動作原理ですが、構想するのと実装するのは別次元です。実装してなんぼですので、具体的にパラメータ設定等をどう考えたかを、次にお話ししたいと思います。

パラメータ設定

時定数の考え方

この変身ベルトのポイントはなんといっても、チャージを開始して「しばらくすると」LEDが点灯するという点でした。つまり、「時間遅れ」をいかに表現するかという点にポイントがあります。

時間遅れといえば、「時定数」です。まず設計値として、チャージしてからどれくらいの時間で点灯してほしいかを「決める(設計する)」必要があります。

時定数の詳しい考え方は別記事に委ねるとして、図1の抵抗RとキャパシタCを使うと、時定数は$${\tau=RC}$$と表せます。時定数についてよく知らないという方は、とりあえず時間遅れがどの程度あるかの目安という程度に捉えておいてください。

「時定数はこれくらいにしたいから、RとCはこれくらいの値に設定しよう」という流れで考えたいのですが、ここで現実的な壁が立ちはだかりました。

キャパシタンスの値

手持ちのキャパシタにバリエーションがなさすぎる・・・つまり、「時定数はこれくらいにしたいから、RとCはこれくらいの値に設定しよう」ではなく、手持ちのキャパシタありきでRを調整して時定数を決める、という方向で進めざるを得なくなりました。

実際手元にあったのは、$${100\mu F}$$x3、$${220\mu F}$$x3、$${1000\mu F}$$x1でした。これらを使って、なるべくキャパシタンスを大きくしたい。なぜなら、Cが小さいということはRを大きくせざるを得なくなり、電流が制限されてしまうため、LEDが光らないという事態が起こり得るからです。

キャパシタは並列させるほど値が大きくなるので、持ってるだけのキャパシタを並列接続することにしました。合計は、単純和で$${1960\mu F = 1.96mF}$$です。

「キャパシタンスが決まってるなら、設定したい時定数に合わせて抵抗を設定するだけなのでは?」と思われるかもしれません。が、先ほど書いたように、抵抗を高く設定しすぎると電流が流れずLEDが光らないということが起こり得ます。

抵抗値

そういうわけで、「時定数をある程度大きくとる」「LEDを光らせる」ということを両立させる、ちょうどいい抵抗値を設定する必要があります。

LEDがどの程度の電流でどの程度光るかについては、こちらの記事で実験して確認しています。4mAくらい流せば、光ることがはっきりと確認されました。ただし、LEDの色によって電流電圧特性(IV特性)は変わるので、先ほどの記事のものは黄色のLEDについてのものだという点は注意です。

では、図1の回路でLEDに4mA流すためには、抵抗Rはどの程度の値に設定すればよいでしょうか。

最終的、つまりコンデンサが充電されきった状態では、コンデンサに流れる電流はゼロなので、LEDに流れる電流=抵抗Rに流れる電流です。そのため、抵抗Rに4mA流すために抵抗Rをどうすればよいかを考えることになります。

オームの法則$${V=IR}$$から、抵抗にかかる電圧Vがわかれば、抵抗値を計算できます。LEDにかかる電圧を$${V_{LED}}$$、抵抗Rにかかる電圧を$${V_{R}}$$とすると、キルヒホッフの法則から$${E=V_{LED}+V_{R}}$$となります。

黄色のLEDの動作電圧はだいたい2Vで、電源としてはあまりものの単3乾電池4本を使って4.93Vだったので、抵抗にかかる電圧は$${V_{R}=E-V_{LED}=2.93}$$Vです。ここに4mA流すためには、$${2.93÷0.004=732.5}$$Ωを接続する必要があります。ぴったりの抵抗はなかったので、$${R=680}$$Ωとしました。

ちなみに、トランジスタのベースに接続する抵抗rの抵抗値も、100Ωとしました。

実際の動作

LEDは光るのだが・・・

こちらが、LEDに680Ωの抵抗を直列接続したときのLED点灯の様子です。

LEDは光るには光るのですが・・・ちょっと早すぎる。

変身ベルトですから。

やっぱり、溜めて溜めて溜めて・・・光った!!!みたいなのがほしいじゃないですか。

$${\tau=RC}$$なので、もっと抵抗値を高く設定する必要がありそうです。

時定数とLED輝度の絶妙なバランス

$${E=4.93}$$V、$${R=2200}$$Ω、$${r=100}$$Ω、$${C=1.96}$$mFとした場合の実際の動作は次の動画のようになりました。

今度は、”溜め”がそこそこ表現されてるように思います。
ただ、ちょっと暗い・・・

抵抗を大きくすれば電流が小さくなるし、抵抗を小さくすると時定数が小さくなる。あちら立てればこちらが立たぬ。

バランスが取れるのが理想ですが、今回の場合どっちか選べと言われたらやはり、「点灯遅れ」の方でしょう。輝度の方は、とりあえずは光ってることがわかればよしとします。

時定数はどの程度か

ところで、$${R=680}$$Ω、$${R=2200}$$Ωそれぞれの場合の時定数はどの程度だったのでしょうか。

$${\tau=RC=680×1.96/1000=1.3}$$sec
$${\tau=RC=2200×1.96/1000=4.3}$$sec

実際に動画で見る点灯遅れよりも値が大きめな気がしますが、オーダー感としてはまずまず妥当といった印象です。

まとめ

変身ベルトをつくるにあたり、触れただけでチャージされ、しばらくしてライトが点灯するような仕掛けをプロトタイピングしました。

キャパシタと抵抗の値をいい感じに組み合わせることによって、数秒間の遅れをもってLEDを点灯させることができました。

手持ちのキャパシタをあるだけ組み合わせるということをしたので配線がごちゃついてしまいましたが、はじめから静電容量の大きめなキャパシタを用意しておくことで、もっとすっきりとした回路に仕上がるはずです。

次はこの仕組みを応用して、順々にチャージゲージが上がっていくような仕掛けづくりについて考えていきたいと思います。

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