細やかさが大事なときもある
おもてなしの国だと言われて久しい日本。
電車なんかがわかりやすい例ですが、3番線に電車がまいりますとか、カバンは前で持てだとか、優先席は譲るようにだとか、そんなような注意を促すアナウンスを他国で聞いたことはありません。
良く言えば気が行き届いている、悪く言えばお節介といったところでしょうか。
同じように、日本のものづくりは細かなところまで行き届いていると言われてきました。私もメーカーで働いているわけですが、たしかに新人時代に諸先輩方の議論を聞いたり現場の作業を見る機会がある中で「え、そんなことまで考えてるの?」と思わされることが多々ありました。
一方で、裏を返すと、枝葉末節な細かい部分を詰めていくことは得意でも、木の幹に当たる部分を育んでいくという点は、弱い部分とも言えます。
産業界で言うと、いわゆる「ルールづくり」「規格化」といった分野は欧米の独壇場で、日本はいつも追い付け追い越せで、常に欧米の背を見ながら走っている感があります。
枝葉のない木は枯れ木ですし、木の幹がなければ枝葉も育まれないので、どっちが良い悪いというのはないですが、日本は枝葉の部分を扱うのに長けている国だと思っています。
私個人はというと、どちらかというと木の幹、骨格の部分にしか目がいかず、枝葉の細かい部分まで議論できる人たちにはリスペクトしかありません。
しかし、そんな私でも、細部にまで目を光らせねはならんなと痛感した事案がありました。
私は波乗りを嗜む程度にやっているのですが、当然波乗り後は、ウェットスーツを外で乾かす必要があります。
ある日、いつもと同じように日干しして、乾き終わったウェットをボックスにしまい、ワンシーズン自室で放置してました。
そして次のシーズン、また取り出してきて車に運ぼうとしていたところ
…….コロッ
何かが床に落ちる音がしてみてみると…….なんとカメムシがひっくり返って脚をバタつかせているではありませんか。
驚いた拍子に持っていたウェットを振り上げると
…….コロッ
2匹目が落ちてきて戦慄を覚え、恐る恐るウェットスーツを上下に振ってみると
……..わっさわっさ落ちてくる
慌ててウェットスーツを外に運び出すと、振れば振るだけカメムシが出てくる打出の小槌状態。
数えていませんが、優に80匹は超える量が出てきました。
地獄絵図。トラウマになるレベルの出来事でした。
前シーズンで最後にウェットスーツを片付けた時、おそらくカメムシがどこかに潜んでいて、それが1年かけて繁殖したのでしょう。
確認はしたつもりだったのですが、甘かったようです。
察しの良い皆さまはもうお気づきでしょうが、こうして私は、細部まで気を抜かないことの大切さを学んだのでした。
木を見て森を見ずのタイプの細かさは考えものですが、細部を疎かにした結果、このように足元をすくわれてしまうこともあるのです。
(ちなみに、私のウェットスーツはボロボロになり、使い物にならなくなりました・・・そうでなくとも、カメムシ何十匹に巣くわれたスーツを着ようとは思わなかったでしょうが)。