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金建希と国外逃亡か - 相変わらず尹錫悦を美化し韓国左派を貶める日本のマスコミ

尹錫悦が戒厳令を発して一週間が過ぎた。週末の 12/7 夜、野党が国会に提出した大統領弾劾訴追案の採決が図られたが、与党議員がボイコットして退場、可決に必要な3分の2が得られず廃案となった。国会前(汝矣島)では市民の大規模抗議集会が開かれ、警察発表で15万人が集まって声を上げている。週が明けても(12/9 -)ソウルでは激動が続いていて、辞任せず粘る尹錫悦は法的には未だ大統領職のままだ。弾劾案を不成立にした後、12/8、与党代表の韓東勲は首相の韓悳洙と記者会見を開き、「大統領を国政に関与させず」、首相の韓悳洙が当面の国政運営を担う旨を発表した。だが、韓国の憲法にはこのような政権の運営や統治は認められておらず、与党の党首に現職大統領の職務を停止させる権限があろうはずもない。こうした政治行動そのものが憲法違反で、クーデターの延長行為に他ならない。野党の最高委員国会議長が批判しているとおりだ。

弾劾案採決の直前の 12/7 午前、尹錫悦は会見で、今後の政権運営を与党に一任する旨を述べたが、韓国の憲法にそのような権限移譲の規定はなく、この発言も憲法違反である。大統領の職務を遂行できず、誰か他に権限を譲ろうとするなら、自ら辞任しなくてはならない。要するに、「与党に一任」だの、「大統領に国政関与させない」などと、巧言と詭弁を細工しながら、尹錫悦は辞任の意思が全くなく、韓東勲も尹錫悦を辞任させる所存はないのである。二人は巧妙にその場凌ぎの口上を垂れて時間稼ぎしていて、国民の怒りと興奮が冷えて収まる漸次的進行を狙い、反撃の隙を窺っているのだ。事態は予断を許さない。現在、韓国は権力の真空状態にあり、憲法が想定していない、脱憲法的な、国家権力の中枢が麻痺して半崩壊した現状にある。一刻も早く尹錫悦を罷免するか辞任させて、憲法の規定に則った次の統治局面に移行させ、国家の安定を取り戻す必要がある。

この間、戒厳クーデターの真相についてポツポツと情報が出始めた。12/3 深夜の戒厳令発布直後に、国会突入より早く、特殊部隊300人が中央選挙管理委員会に侵入、保管されているサーバーシステムの配線装置を撮影していた。撮影した目的は、サーバー機器を選管施設から強奪搬送した後に戒厳軍でもう一度組み立てて稼働させるためで、内部を覗いて「不正選挙の証拠を掴む」ためだった。つまり、「不正選挙」をでっち上げて野党を追い落とすべく、"物的証拠"となる選管のサーバーを押収しようと図ったわけだ。4月の選挙を「不正選挙」だと言い上げて、世論を説得し感化させることで、戒厳クーデターを正当化する目論見だった。結局、午前1時過ぎに戒厳令解除決議案が可決され、尹錫悦が戒厳令を断念・撤回したため、戒厳軍はサーバーの回収を諦めて中止するに至った。電算室への侵入時間が異常に早いあため、予め計画した上での軍部隊の行動だと分析されている。

また、戒厳クーデターを策謀した一団として、尹錫悦の出身高校である忠岩高校OBのグループが浮上し、政界や軍に人脈のない尹錫悦がクーデター工作で出身高校閥を頼った事情が明らかになっている。12/8 に内乱罪容疑で拘束され、首謀メンバーの核心である国防相の金龍顯が尹錫悦の1年先輩。国会や選管に戒厳部隊を派遣する指揮を執った国軍防諜司令官の呂寅兄も同窓。この男は11月に部下に指示して戒厳計画の文書(戒厳司令部-合同捜査本部運営参考資料)を作成していた。クーデター作戦の実務主担であり、内乱の共犯として逮捕されるべきだろう。それから、発令後に戒厳軍が逮捕しようと標的にしていた対象者9名も明らかになった。①野党代表の李在明、②国会議長の禹元植、③与党代表の韓東勲、④野党最高委員の金民錫、⑤野党院内代表の朴賛大、⑥野党議員の鄭清来、⑦祖国革新党代表の曺国、⑧ラジオDJの金於俊、⑨元大法院長(最高裁長官)の金命洙、である。

辺真一が 12/9 のモーニングショーに出演し、尹錫悦が日本への亡命を考えていたのではないかという観測を述べている。私は、今回の尹錫悦の戒厳令の行動には妻の金建希が深く関わっていて、戒厳令が失敗したらアメリカに亡命しようと、妻の金建希が最悪の場合の選択肢を構想し、尹錫悦の背中を押していたのではないかと想像する。12/7 に、金建希による株価操作疑惑などを捜査する特別検察官制度実施の可否をめぐる採決が行われ、これも3分の2に満たず否決されたが、戒厳令の騒動で政局が動転する以前は、可決されるのではないかという見方が少なくなかった。夫婦は追い詰められていて、有効な打開策がなく、破滅に向けて世論の支持を失う一方だった。辺真一は、尹錫悦が金建希を切る決断ができていれば、失地回復する余地があったのではないかと解説している。正鵠を射た分析だろう。尹錫悦は、金建希を切るか、二人で死地に突入するか、二つに一つの選択で後者を選んだのだ。

これも想像だが、金建希にとっては、弾劾だの訴追だの拒否権だのの毎日で、日々韓国国民から憎悪され侮蔑され、針の筵の境遇で1年2年を過ごすより、そしてまた、仮にそれを乗り切ったとしても、大統領任期が切れた途端に訴追され収監される憂き目に遭うよりも、夫と二人で憧れのハワイ生活に飛び込む方が、よっぽど快適で価値ある人生に映るのではないか。韓国の地上に二人の理解者はいないのであり、特に嫌われ者の金建希には誰も味方がいない。尹錫悦も同様で、政治の能力と素養がないため仲間を作れず、高校同窓とか、極右陰謀論のユーチューバーぐらいしか頼るところがない、裸の王様の権力者だ。結局、尹錫悦の唯一の相談相手は金建希で、一つ一つの意思決定についても金建希の影響力が及んでいたと考えられる。夫婦間では、常に金建希の方が主導権を握っていた。妥協のない、拒否権に次ぐ拒否権の連発は、尹錫悦の独善と倨傲の性格だけでなく、金建希の気性が反映したものだっただろう。

李承晩と妻フランチェスカが、1960年の四月革命(4.19学生革命)のとき、ソウルを脱出してアメリカ・ハワイに亡命している。李承晩とフランチェスカも年齢が離れていて、妻は夫より25歳も若かった。李承晩は亡命して5年後に高齢で死ぬが、フランチェスカは1970年にソウルにカムバックを果たしている。時間が経てば韓国の政情も変わる。台湾有事に向けてアメリカが準備を進めている。金建希からすれば、屈辱にまみれながら危険な韓国に留まるよりも、安全で快適なハワイでしばし余生を愉しみ、ときどき東京に来て岸田文雄夫妻と会食して話題の人となり、時期が来ればまたソウルに戻ればいいという、そういう無責任な計算を立てておかしくない。類似した夫婦の範疇は現代史に幾つか散見され、フィリピンのマルコスとイメルダが1986年のピープルパワー革命で失脚し亡命、行き先はハワイだった。ルーマニアのチャウシェスクとエレナの夫妻は、1989年の革命の際に逃亡に失敗して銃殺された。

日本のマスコミは、相変わらず尹錫悦を善とし、尹錫悦に反対する野党側を悪と決めつける報道を変えない。北朝鮮に宥和的で歴史問題に厳しい左派勢力を反日と断定し、親米一辺倒で歴史問題で妥協的な右派勢力を親日とする認識を一貫させている。木村幹もそうだし、西野純也もそうだ。この認識と主張に反論する者はなく、この言論レジームに抵抗する者はいない。不思議でもあり、腹立たしくもあり、テレビの前で無力感と敗北感に苛まれる。立憲民主党も、韓国右派を親日とし、韓国左派を反日とし、尹錫悦を正義と仰ぎ、文在寅を悪魔と貶す立場なのだろうか。30年前に戻って、日本政府が発した村山談話に即せば、韓国左派の立場こそが正当で、東アジアの正しい共通認識で、文在寅の日韓歴史認識こそが普遍的な真理である。今の日本政府と日本マスコミの立場は、特に韓国や中国との関係での基本姿勢は、安倍晋三のそれが標準として固まったもので、客観的にはきわめて右翼的で佞悪で反動的で誤っている。東アジアを不幸にする発想だ。

韓国はイデオロギー的に分断している。この分断は、アメリカの新冷戦政策によって惹起され深刻化している問題であり、アメリカが新冷戦に周辺諸国を巻き込んだ結果だ。また、アメリカの新冷戦政策に対して有効な外交対処ができず、なすがまま、毛沢東時代にしがみついている習近平中国の無力さの責任でもある。アメリカの新冷戦政策がなければ、韓国の政治は革新勢力がずっと政権を担い、北朝鮮とも関係改善を進め、いわゆる今の保守勢力などという反動的存在は消滅していただろう。文在寅・曺国的なラディカルな左派と、それより右寄りのリベラル派と、二つで政権交代する韓国になっていたと思われ、経済政策も含めて、他のアジア新興諸国に模範を提供する韓国になっていたはずだ。それがあるべき韓国民主主義の方向性であり、民主化以降の基軸の延長線である。韓国の分断は、世界の政治力学的にやむを得ないもので、同盟国のアメリカに引き摺られた影響でこうなっているのだが、分断している現実が、言わばまともな社会的生理現象だと言える。

本当は、韓国のように日本も分断しなければいけないのである。それが自然なのだ。具体的な仮想図を描けば、日本共産党・れいわ新選組・社会民主党が、国会の4割とか5割の議席を占めていなくてはいけない。そういう政治バランスであれば、日本も韓国のような分断状況になっているだろう。30年前の「政治改革」以降、日本の左派は個々が右派へと転向を続け、労働組合も大学教授も出版社も右旋回し、マスコミは右派だけで固まった。ネットは「政治改革」以降の後発メディアだから、最初からネオリベ右翼的なDNAと環境で生育している。この20年、安倍晋三的な思想と言説が標準的となり、左派的なものは異端となり、社会に存在感のないものとなった。日本は顕著でグロテスクな右翼大国だと思う。その認識は間違っていないだろう。韓国や台湾、タイやフィリピンやマレーシアと比較しても、際立って反共的で従米的なイデオロギーで統一され斉一化されている。対立がない。そして日本の特徴として、左派の思想性の消失が知性の劣化に結びついている。

日本は不幸なイデオロギー体制が確立し、テレビとネットと教育機関を通じてセメント化され、正常な状態へ戻せなくなった。韓国には日本の轍を踏んで欲しくない。戒厳令クーデターの迎撃・粉砕を機に、朝鮮日報や東亜日報のような反共反動マスコミの妨害を無力化し、真っすぐに韓国民主主義の理想的体制を築いてもらいたい。

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