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韓国総選挙で革新系野党が圧勝 - 祝福のメッセージを送り、曹国の活躍を期待する

4/10 に投開票が行われた韓国の総選挙では、300議席中、革新系野党が合わせて187議席を獲得して圧勝、保守系与党が惨敗(108議席)する結果となった。投票直前の情勢報道で、野党優勢の観測が流れていたため、大いに期待していたところ、まさに地すべり的勝利の展開となって満悦爽快の気分だ。22年の大統領選の手前、21年頃から、韓国の政治が右へ右へ反動の逆流を続けていて、3年間ほど憂鬱で深刻な状況だったが、ようやくここで左派の反撃が成功し、韓国民主主義が息を吹き返した感を受ける。右翼反動とネオリベ原理主義ばかりが席巻して凱歌を上げ続けている世界で、韓国市民が希望の光を届けてくれた。快挙に感激し、久しぶりの朗報を祝賀したい。Good Job !!! 2月の研修医ストライキの際、世論が尹錫悦を支持する動きに出ていたため、懸念と不安を持って選挙の行方を見守っていた。

詳細な情報がないので、選挙の分析まではできないが、テレビ報道を見たかぎりでの感想を述べると、やはり経済と国民生活の問題が大きく、物価高に苦しむ庶民の悲鳴が現政権への反対票となったと思われる。長ネギ問題は象徴的な絵柄だが、決して今回の政治の本質を外していない。韓国の消費者物価指数の推移を確認すると、2021年から急激に上昇し、22年中は毎月出る前年同月比の値が5%を超えていた。現在も3%を超える高い水準が続いている。日本と同じで、物価上昇は中低所得者層の生活に打撃を与える。生活水準の切り詰めを余儀なくされる。韓国の場合、それが日々の食料品価格の高騰だけでなく、不動産価格の高騰という現象になって現れ、若者がマイホームのマンションを買えず諦めるという事態に至っていた。21年に文在寅政権の支持率が急激に下がったのは、この問題が原因であると考えられる。

不動産価格の上昇、それに伴う貧富の格差の不条理と若年層の怨嗟。これに足を引っ張られ、22年の大統領選で革新系は敗北した。物価高とか、不況(失業)とか、経済問題の不具合については、必ず現政権の責任が追及される進行となる。政権批判の世論が強まり、政権与党が選挙で不利になる。どこの国でも基本的に同じだ。コロナ対策(K防疫)を絶賛された文在寅も、不動産価格高騰のトレンドを抑えることができず、その経済禍の直撃を受けて政権後半に支持率を落として行く。不動産価格取引指数とソウルのマンション価格基準値は、文在寅政権が始まった17年から21年の間に約1.5倍に跳ね上がった。文在寅は、住宅供給のコントロールで対策の手を打とうとするが失敗、国民とマスコミから反発を食らう結果となる。そこに尹錫悦との政争が入り、曹国が叩かれて辞任となり、レイムダック化の様相が極まった。

文在寅は運が悪かったと思う。私なりの視点と考察だが、韓国で不動産が高騰したのは、まさに日本のバブル期(87-91頃)と同じであり、韓国経済がカネ余りの繁栄の段階に至った証拠だ。そういう経験は韓国経済は初めてだろう。韓国製造業の国際競争力は強く、半導体とエレクトロニクスだけでなく自動車も好調に売れている。韓国のGDPはずっと右肩上がりの成長を続け、2023年の名目GDP値は15年前の2008年のそれの2倍のサイズとなった。その資本主義の構造は、日本以上にシビアなネオリベ経済である点が特徴で、格差の矛盾(ソウルと地方、大企業とそれ以外、学歴差別)が強烈な社会に他ならない。大企業の利益は蓄積され、儲かるソウルの不動産投機に回される。もし文在寅が、住宅供給の調節(ソウル中心部から周辺に供給分散)ではなく、三重野日銀的な総量規制をやっていれば、ソウルの不動産バブルは退治できたかもしれない。

だが、それを断行すると、日本経済のように「失われた30年」の端緒を開くリスクがある。そういう政策決定のジレンマに悩んでいるのではないかと、遠目から感じていた。それと、文在寅は曹国を後継者に指名し、22年の大統領選に出馬させようと計画していたに違いない。タマネギ醜聞で保守派と保守マスコミに潰されてしまったが、醜聞に遭うことなく曹国が立候補していれば、22年の大統領選も革新系が制していただろう。曹国にはカリスマ性が備わっている。背が高く、ルックスがよく、学歴が抜群で、指導者として申し分ない完璧な資質を持っている。傍から覗きつつ、タマネギ醜聞は何とも勿体ないアクシデントに見えた。側聞するところの、社会主義労働者連盟に加わっていた経歴も、右翼化した日本社会のイデオロギー聴覚からすれば、拒否感をもよおす不穏な情報かもしれないが、私には全く逆で、こんな華のあるエリートがよく、と驚嘆する属性要素だ。

文在寅も同じ評価だっただろう。韓国民主主義をリードする前衛は左派であり、廬武鉉の志を継ぐ民主化革命の闘士でなければならない。曹国はその条件にぴったりのキャラクターであり、これ以上の魅力的人物はいない。その曹国が、醜聞と政争に敗れて引っ込むのではなく、意を決して選挙の戦いに捲土重来した姿を見て、我が意を得たりの感慨に包まれる。革命家はかく不屈でないといけない。李在明は力のある政治家だが、華がなく、カリスマ性に欠ける。22年の大統領選に僅差で敗北したのも、カリスマ性の不足が原因ではないか。昨年、一生懸命にハンスト抗議をやっていたけれど、絵の演出的訴求力が弱いせいか、支持と注目がいま一つ集まらなかった。別の人間ならば、もう少し同情が集まって世論を動かせたかもしれない。今回の選挙の主役は明らかに曹国であり、曹国が台風の目となって嵐を起こし、尹錫悦を吹っ飛ばして引導を渡す局面に追い込んだと言える。

日本のマスコミが「親日」のリーダーとして美化しまくる尹錫悦だが、韓国の報道では評判がよくない。独裁的手法が非難されている。女性の有権者に評判が悪い。保守派からも批判が出ているように、尹錫悦には政治家としての経験がなく、傲慢で、他者の意見に耳を傾けて聞く姿勢がない。これは決定的な問題だろう。韓国の人々は日本と違って政治家に対する要求と評価の基準が高い。採点が厳しい。日本よりも政治(民主主義)一般のレベルが高く、最低限に必要とされる資質のラインが高いからだ。韓国人の好きな「不正弾劾」のシンボルとして登場し、保守派のヒーローとして担がれた尹錫悦だが、私の目からは最初から不適格だった。政治を理解してない素人だった。この男がモデルとしたのは、明らかに日本の安倍晋三なのである。安倍晋三のパフォーマンスを見て、その「成功」に憧れ、そのスタイルを模倣しようとした形跡が窺える。韓国人からすれば、最低の邪悪な行動だろう。

何でこんな男がと思うけれど、世界全体が親米反左翼の潮流に動く中で、いかに市民革命の伝統と実績を持つ韓国民主主義といえども、全体の空気の影響から免れず、政治の振り子の周期反動に抗するのが容易でなかったのだろう。21年以降、否、20年頃から韓国マスコミの右傾化・親米化は凄まじかった。目の前で北朝鮮が次々とミサイルを高性能化し、対米戦争の軍事力を強化し誇示したことも、韓国の保守派が力を回復する上で順風の環境だったと言える。韓国民主主義の足を引っ張り、順調で健全な発展を阻害するのは、常に北朝鮮の存在と害毒である。まさに、タタールの軛の如く忌々しい宿命的な疫病神だ。あれほど譲歩し融和に努め、「血は水より濃い」信念と真理を説得しながら、文在寅の努力は報われなかった。南北統一の悲願と献身は金正恩によって踏みにじられた。無残であり、文在寅と韓国左派に同情する。

今後、韓国政界では保守派の混乱と内紛が始まり、選挙惨敗の責任のなすり合いが起こるはずだ。選挙結果は、野党が唱えた「政権審判」の争点が有権者に支持されたものとしか意義づけようがない。すなわち、韓国国会は速やかに「政権審判」の民意を実現する動きに出るべきで、尹錫悦政権の失政を糺し、大統領の政策転換と態度矯正を求めて圧力をかけるべきだ。同時に、検察権力の恣意と暴走についても民意の包囲をかけ、国民から信頼される理性的で端正な司法権力の一に戻すべきだろう。尹錫悦の辞任に追い詰め、大統領選の前倒しという政局に進行することを期待する。そしてできれば、曹国に新大統領になってもらいたい。文在寅が挫折したところの、不動産・住宅問題についても新機軸を打ち出して成功を見せてもらいたい。韓国の経済社会は格差が激越すぎる。政治の民主主義は先進的なのに、経済はアメリカや南米に近い類型で、資本がグロテスクに一握りに集中し、いわば後進的と言える。

「親日」とか「反日」の言葉を、日本のマスコミと同じ意味で使って議論するのはやめよう。無意味だ。今の日本のマスコミとネットで横溢し氾濫している「親日」と「反日」のフレーズは、すべて安倍晋三や櫻井よしこの発信と主張がベースになった言説だ。つまり極右が使い回している言葉であり、極右が「常識」としている語法である。客観的に整理すれば、現在の日本の空間で言われている「韓国の親日」とは、日本右翼に靡いて媚びを売る韓国の政治勢力という意味であり、「韓国の反日」とは、三一運動以来の韓国の独立と民主化の前衛となってきた韓国の左派を意味する。なので、韓国の市民は、日本のマスコミとアカデミーで膾炙され放散されている「親日」と「反日」の語にナーバスになる必要はなく、その意味をナイーブに受け止めてはいけない。躊躇を覚える必要は一切ない。日本の政治言論一般が異常で猛毒な右翼体質なのだから。

10年前、橋下徹が「慰安婦は必要だった」と暴言を吐いたとき、日本でも弁護士会を始めとして巨大な批判が沸き起こったし、アメリカ政府も「言語道断で侮辱的」と非難のコメントを発した。だが、今、橋下徹はテレビ報道のご意見番のような「標準的位置」に陣取って影響力を持ち、権勢を縦(ほしいまま)にしている。日本全体が10年間で激しく右翼化したから、橋下徹は異端ではなくなった。10年間とは、安倍晋三の天下の10年間であり、安倍晋三と菅義偉と麻生太郎が政策を仕切り、その仲間と子分がマスコミを統治支配した10年間である。現在はその延長上にあり、10年間で固まったイデオロギー体質と世論環境の中で「親日」や「反日」の言葉が飛び交っている。本来、日韓関係の基本は95年の村山談話にある。日韓関係は村山談話の上に築かないといけない。村山談話の基本思想に従えば、今の「親日」や「反日」は全く一蹴し否定すべき空語だ。

2024年の韓国総選挙、革新系野党の圧勝を祝福する。

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