見出し画像

原発汚染水(ALPS処理水)海洋放出についての一私見

ネットを検索すると、汚染水と処理水との言葉の違いの説明が登場する。

これは国が定義したものだ。マスコミはそれに従って、海洋放出する水を「処理水」と呼んでいる。社民党の福島瑞穂は「汚染水」と言い、日本共産党の志位和夫は「汚染水(ALPS処理水)」という表現を使っている。れいわの山本太郎も。私自身は、迷うが、ひとまず「汚染水(ALPS処理水)」と呼ぼう。福島第一原発の事故から12年。正直なところ、わずか12年で、日本人が、あのタンクの水を「処理水」という言葉で呼び、「汚染水」という呼び方をやめるとは思わなかった。事故後ずっとマスコミは、「増え続ける汚染水」と報道してきたし、この政治問題は「汚染水の海洋放出」だったはずだ。それが、いつの間にか「処理水の海洋放出」に変わった。絶対悪だった対象が必要悪の存在に変わった。

今や、それを「汚染水」と呼ぶ人間は、反体制で親中の左翼という異端の立場づけを余儀なくされ、ネットで猛然と叩かれる。世間の目を憚る者は、それを政府とマスコミに倣って「処理水」と呼ばなくてはいけなくなった。不思議なものだと思うし、ふざけた話だと思う。IAEAがお墨付きを与えているから問題ないとか、韓国政府が了解したから安全だとか、トリチウムを含んだ排水なら世界中どこでも海洋放出しているからOKとか、そういう問題ではないだろう。何で昨日まで「汚染水」だったものが、いきなり「安全な処理水」に化けるのだろう。科学的には何も変わってない。日本と日本人の政治の思想が変わり、それへの価値観がマイナスからプラスに変わり、危険な汚染水から安全な処理水へと認識が変わった。

最初に、私自身の政策的な持論を言うと、周辺の土地を東京電力が取得して敷地を拡げ、タンクを増設し続ければよいという見解である。それで問題ないだろう。この先10年間分のタンク増設を計画し、土地を買収して拡張すればいいという発想だ。その間に、一番いいのは、デブリ除去の技術開発を成功させて汚染水の発生を止めることであり、あるいは、トリチウム除去の技術革新を達成することである。それができない場合、技術的解決が困難な見通しの場合でも、政治外交で問題解決する道はある。つまり、漁業者を説得して納得してもらい、中国を説得して中国政府が納得してくれれば、それで海洋放出の障害はなくなる。見たところ、中国への説得はしてないし、漁業者に対して誠意を尽くした対応もしていない。

例えば、私が首相なら、今後10年間分のタンク増設を準備し、その上で、まずは粘り強く漁業者と対話し、農水・経産・環境・復興の4大臣が出向いて末端に至るまで話を聞き、要求を受け止め、それを5年間続けるとしよう。それをすれば、漁業者の安心安全問題は前へ進むだろう。中国との外交問題は、論理的にはもっと早く解決できるのであり、日本が敵視政策をやめれば、あっさりと韓国のようになる。分かり切ったことだ。中国の一般の人々も、日本産水産物の全面禁輸は本望ではないだろうし、できれば日中関係が改善して日本産食材を口にする機会が途絶えない方がいいだろう。この問題で、日本は中国を説得する外交努力を全くしなかった。逆に、この問題を悪用して中国の対日敵視を嗾け、関係をヨリ悪化させる方向に仕向けた。

と言うよりも、手口はもっと悪辣で、中国の対日反発を利用して、日本の国内世論をこの問題を正当化させている。マスコミやネットで中国側の対日反発の諸々を流し、日本の世論を反中へと煽り立て、その敵意感情を梃子にして、政府の汚染水(ALPS処理水)放出を正当化するという政治をやっている。反中感情を先行させ、そのことで、汚染水(ALPS処理水)放出の不当性を相対化させ希釈化している。中露北が反対し、韓国を含む西側諸国が賛成している日本の政策だから、この政策は正しいのだという構図にしている。原発の汚染水の問題をイデオロギー対立の構図にして、国内世論の反対を押さえ込むという手法をとり、それに成功している。汚い手口だと思うし、中国叩きに乗って汚染水(ALPS処理水)放出への批判を弱めるリベラルもリベラルだ。

それにしても、まさか10年以上経っても燃料デブリの取り出しができず、廃炉作業の見通しが全く立たないままなどという事態は想像もできなかった。スリーマイル島の例をネット情報で見ると、1979年から1993年までの作業でほとんどのデブリを除去したとある。福島第一とは環境条件が違うから一概には言えないのだろうが、スリーマイルから半世紀も経っているのにどうしてこれほど作業が遅滞し、それを放置したままなのかと呆れる。政府も関係者も、廃炉のための除染(デブリ除去)を諦めているとしか思えず、すなわち科学技術による廃炉完遂を断念し、永久に汚染水(ALPS処理水)を海に流し込んで済まそうとしているようにしか見えない。事故の後2、3年は、除染ロボットの開発と試作がどうのこうの、期待できるとか失敗したとかマスコミで言っていた。

今は全く言わなくなった。








いいなと思ったら応援しよう!