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世界を翻弄する random で non-stop surprising で momentum driven なトランプ政治の速射砲

疾風怒涛のトランプ政治が毎日続いている。このところ、ニュースの話題は常にトランプが発信する指示や談話が中心で、ホワイトハウスの執務室で署名しながら記者団に話す内容が騒々しく取り上げられている。トランプがニュースの主役で、トランプ発のアジェンダが日替わりメニューのようにマスコミ報道を埋めている。トランプとE.マスクが繰り出す仰天の政策攻勢によって世界中のマスコミと人々が狼狽し右往左往していて、まるでテニスのラリーで右へ左へコートの中を振り回されているようだ。先々週(2/2-2/8)は、ガザをアメリカが所有するという暴言が飛び出て、その真意をめぐって議論が続いた。先週(2/9-2/15)の前半はUSAIDをめぐる問題が熱を帯び、トランプ政権によるUSAIDの活動停止と解体推進の過激策について、Xタイムラインはそれを支持する投稿で溢れ、マスコミはそれを批判する報道で応酬した。

先週の後半は、トランプによるウクライナ戦争停戦の和平プロセスが中心になり、日本時間の 2/13、トランプとプーチンが90分間電話会談して戦争終結に向けた交渉を開始することで合意、2/14 から開かれたミュンヘン安保会議にこれをぶつける戦略に出たため、ミュンヘン会議は完全にトランプのアメリカが主導権を握る展開となった。90分間の会談と合意の詳細については報道の表面に出てないが、サウジで月内にも米露首脳会談が行われる予定だと伝えられている。この電話会談後の取材で、トランプは、ウクライナのNATO加盟と領土の全面的奪還に否定的な考えを示し、バイデン政権の方針の転換を言明、ロシア寄りの姿勢を明らかにした。週末(2/15-16)の日本のテレビ報道は - 膳場貴子を筆頭に - このトランプ発言に対する非難轟轟となっており、また、欧州マスコミからも厳しい反発と批判の声が上がっている。

私自身は、米露主導の和平プロセスを前向きに期待し、ウクライナ戦争を停戦に導く現実的方向性として注目する立場にある。今回の戦争は、微分的に見ればロシアによる侵略戦争に違いないが、積分的に見ればNATOによるロシアへの侵略戦争であり、NATO側の責任がきわめて重い。本質を看破すれば、ロシア側の防衛戦争の意味が大きく、老ジョージ・ケナンの警告を西側為政者が顧みず、徒にNATOを東漸拡大させた暴走が破局をもたらした結果だと言わざるを得ない。戦争は2022年2月に始まったものではなく、2014年の”マイダン革命” - CIAによるカラー革命 - から始まっている。プーチンは今回の戦争を”内戦”と呼び始めたが、あるいは50年後の世界ではその歴史認識が定着しているかもしれない。戦争はCIA(アメリカ帝国主義)の奸計と画策で始まったもので、そのアメリカが手を引いて終わろうとしている。

その意味で、ベトナム戦争やアフガン戦争と基本的に同じ構図だ。戦争は膠着しつつもロシア軍優勢のまま3年が経過していて、継戦能力がないのはロシア軍以上にウクライナ軍である。アメリカの支援継続なしにウクライナは戦争を継続できない。主戦派であるEUと英国も本音は同じで、どれほどロシアの弱体化が顕著であろうと、アメリカの軍事的経済的支援なしに、EUと英国だけでウクライナを支えることは不可能だ。欧州の中は揉めるだろうが、ポーランドやバルト3国は別にして、欧州内部も実際はアメリカ以上に厭戦の気分が大きくなっているはずで、為政者の強気の姿勢とは裏腹に諸国民の本音はトランプの停戦案に賛成論が多いだろう。それが問われるのが、2/23 のドイツ総選挙であり、極右AfDが大きく勢力を伸ばせば、トランプの停戦案を支持する空気が欧州で広がり、マクロンやフォンデアライエンやゼレンスキーが後退する局面になる。

その意味で、2/15 のミュンヘン安保会議の機に合わせたトランプによるウクライナ戦争和平プロセスのローンチは、ドイツ総選挙に影響を及ぼすべく仕掛けた選挙戦略の意味と目的が窺われ、トランプ一党の抜け目のなさがよく表れている。要するに、欧州全体を極右化し、EU政治を汎トランプ化しようとするトランプ一党が(半ば内政干渉の)政局を仕掛けている図だ。このトランプの和平プロセスの提案と始動について、ドイツのAfDが、フランス国民戦線が、またフランスの左翼党派が、どう評価しているかは未だ確認できない。が、この動きを牽制するべく、マクロンが、ショルツやメローニをパリに呼んで 2/17 に欧州首脳会議を開くという反撃に出た。ウクライナ戦争と欧州政治のヘゲモニーをトランプに握らせまいとする対抗措置であり、やはりドイツの選挙を意識している。開戦3年目の日と合わせて出るドイツの民意は、欧州の流れを決める象徴的意味を持つだろう。

先週、トランプが繰り出した quick-random 政治の中で驚かされた一つは、元下院議員のトゥルシー・ギャバード(43歳)が国家情報長官に指名され、上院で承認されたニュースだ。この件は日本のテレビでは全く報道されてない。アメリカの国家情報長官と言えば、CIAなど情報機関を統括する重要ポストであり、アメリカの安全保障政策を決定してゆく要職ポジションである。Wiki にプロフィールが載っているが、サモア出身でハワイ選出の下院議員で元民主党(現在は共和党)。ヒンズー教徒。クリーンエネルギー推進派。TPP反対派。典型的な多様性方面の左派リベラルの表象と属性だ。アメリカの議会で彼女より左に位置する政治家は1割もいないだろう。2016年の大統領選ではバーニー・サンダースを支持。ウクライナ侵攻をめぐってはロシア政府の責任によるものではないと主張、対中関係についてもトランプ政権1期目の対中強硬強硬姿勢を批判していた。

日本の再軍備にも批判的で、ささに左派そのものの政治家像がくっきりだ。ほとんど私と立場が同じ。よくこんな人物がトランプ政権の国家情報長官になれたものだと驚くし、アメリカには若い政治的人材が育っているなと感心する。ギャバードが急に右翼に旋回・変節したとは考えられず、このあたりに、右と左が奇妙に錯綜した第2期トランプ政権のミステリアスがある。

USAIDの問題については、正直なところよく評価ができず、自信を持って意見を言えるほどの立場にない。記事の末尾に、ChatGPT が回答してきたUSAID問題の整理を貼り付けておこう。きわめて無難で一般論的な、優等生的な説明が返ってきて苦笑したが、日本のマスコミによるUSAIDの偏った報道に較べれば中立的で、CIAとの関係も否定していない。開発援助や人道支援が任務のアメリカ政府の独立機関だが、アメリカの政治的利益のために活動する組織であり、反共勢力を支援していた事実を ChatGPT は認めている。

ChatGPT の説明は以下のとおり。

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