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誰が何のためにトランプを銃撃したのか - 暗殺未遂事件の不可解と政治的動機

日本時間の 7/14、トランプがペンシルベニア州で演説中に銃撃される事件が起きた。容疑者は20歳の若者トーマス・マシュー・クルックスで、銃撃直後にシークレットサービスによって射殺された。トランプは無事で暗殺は失敗。事件は謎が多く不審な点だらけであり、現時点で真相は明らかになっていない。なぜ、あんな至近距離の位置にライフルを所持した容疑者が近づくことができ、狙撃ポイントとして絶好の建物の屋根に上ることができたのか。上空にドローンを飛ばして監視しているはずなのに、捕捉してアラームを発信できなったのか。報道によると、銃撃の2分前にシークレットサービスは容疑者を発見しながら何も対応せず放置していて、7/22 の議会公聴会でもチートルが厳しく追及されていた。杜撰というレベルを通り越して、何か異常な気配を感じる。チートルの隠蔽に徹する態度も不自然だ。

現場の映像をテレビを見た限り、トランプの左斜め後方の屋上にいるシークレットサービスの狙撃手は、明らかに容疑者を捉えていて、容疑者の方向にライフルを構えて狙っている。そうとしか解釈できない。なぜ容疑者の犯行を未然に阻止しなかったのだろう。この点は誰でも疑問に思うところである。射殺された容疑者の動機も不明のままで、いろんな憶測が出るのは当然だろう。容疑者は20歳の介護職員。共和党の有権者登録をしていたらしいが、トランプを憎悪し敵視する思想信条や政治動機については現在まで何も出ていない。組織的な背景や関係についても何もない。子どものような純朴無垢な顔をしていて、本当にこの子が暗殺未遂事件を起こしたのかと素朴に首を捻ってしまう。平凡な田舎町に暮らす20歳のトーマス・マシュー・クルックスは、なぜトランプを殺さなければならなかったのか。

彼は、トランプを銃撃し暗殺した後、すぐに警護に発見されて自分が狙撃手に射殺されるということを理解していたのだろうか。報道によると、容疑者の車の中には爆発物が積まれていたとある。何の目的に使う計画だったのだろう。様子を察するに、私には、彼は自分がその場で即射殺され絶命するとは思っておらず、何か次の行動予定まで描いていたのではと想像してしまう。普通に考えれば、その場で射殺されて当然で、暗殺は決死の覚悟の行動である。そこで命が途絶するわけで、暗殺犯は命と引き換えに自己の正義を社会に訴えようとするものだ。少なくとも、両親か誰か宛てに遺書を残すとかしてよく、この行動(義挙)に至った理由を外に告げようとするものだ。だが、それが全くない。ひょっとして、容疑者は、自分が射殺されるとは思わず、逮捕されるだけだと信じて犯行に及んでいたのではないか。

動機や理由については、取調や裁判の席で語ろうと考えていたのではないか。ここから先の想像は、例によって「陰謀論」の誹謗中傷攻撃を招くリスクがあり、その禍を思うと怯臆に傾かざるを得ないが、敢えて推理を言えば、容疑者の背後に誰かいて、彼に向かって「大丈夫だよ、撃たれることはないよ、命は助かるよ」と囁き、安心させていた図が浮かぶ。その想定を置けば、遺書や犯行声明がないという不自然な問題が合理的に説明され解消される。私は、今回の事件は個人によるものではなく、組織による政治的事件ではないかと疑っていて、組織が犯人だとすればCIAではないかと単純に目星をつける。証拠を何も残さないところ、いつまで経っても真相情報が当局やマスコミから出ないところ、それこそが怪しく、こういう場合は真っ先にCIAを疑うのが通念だ。組織が犯人だとして他に誰がいるだろう。

と思いつつ、それを書いたら「陰謀論者」のバッシング祭りだろうなあと躊躇っていたら、恐れ知らずの田中宇が、諜報当局による謀略説を 7/16 の時点で発表していた。豪胆不羈な論陣である。認識は大胆だが、論理の運びは説得的だ。一つの見方として市民権を認めていい。CIA犯行説を現時点で記事にするには根拠となる情報があまりに少なく、私も確信があるわけではない。だが、「陰謀論」というレッテル攻撃の防弾幕で、ありとあらゆる推察と仮説を封じ、個人が真実に迫る思考回路を遮断し、当局とマスコミによる大本営発表だけを信じるよう強制する昨今の風潮は、本来の民主主義を侵害する不全な環境だろう。言論の自由の抑圧であり、精神の自由の拘束である。ここ数年の「陰謀論」の政治用語の氾濫と横溢を見て、その一面に魔女狩り的な機能と効果を看取し、危うさを感じるのは私だけだろうか。

この稿では、CIA関与説の論拠や分析や傍証を並べるのではなく、仮に事件の黒幕がCIAだったとして、その動機と目的は何だったのかという点に絞って論を試みたい。仮定の上での考察である。CIAには動機がある。それは第一に、ウクライナ戦争へのアメリカの支援が停止される悪夢であり、それへの深刻な危機感である。トランプの得意技は独裁者とのボス交で、プーチンとは仲がいい。自分だったら一日で戦争を終わらせると豪語し、アメリカの資金をウクライナに注ぎ込むのは無駄だと強調してきた。CIAは戦々恐々に違いない。トランプが大統領になり、プーチンと直接会談し、4州線引きで和平案を固めたら、CIAの立場と戦略は潰れてしまう。ゼレンスキーは失脚するしかなく、欧州でもウクライナを見捨てる国が続き、NATOは体制崩壊の危機に瀕する。状況が一転し、プーチンが復権する。

トランプが暗殺されれば、ウクライナ戦争継続における不安要因が消え、CIAにとって福音到来の事態だろう。CIAが大統領(候補)を殺すはずがないじゃないかと、立花隆的な真実探求の知性とは無縁な、軽薄な「陰謀論攻撃者」は言うのだが、実際にCIAは大統領を殺している。数年前、NHKスペシャルのケネディ暗殺の検証報道を見たが、実にあっけらかんと、真正面からCIAが犯人だと関係者の証言に基づいて示唆しており、示唆と言うより断定に近く、決定版と呼ぶべき刮目の編集内容だった。NHKの制作番組だから、当然、やんごとなき方面の検閲が入っているはずで、それを前提に考えたとき、もう後戻りはないはずだ。衝撃の結論の堂々の放送に驚かされた(先日の「下山事件」も同じ)。アメリカ国家の真の権力者、世界支配するアメリカ帝国の司令塔は、4年に一度選ばれる政治家ではない。

ホワイトハウスで執務する大統領は、USA国家権力の主体としてきわめて相対的な存在で、まさに大統領機関説的な役割演技者で、その実相の何たるかは、高橋杉雄や小谷哲男の口振りからよく透けて見える。4年に一度選挙でコロコロ変わる政治家なんぞに、Long Range Strategic Plan で動いている俺たちの実務を仕切らせてたまるかという本音が、神聖な国益任務を現場で遂行中の参謀たちの態度から窺い知れる。なので、いざとなったら、邪魔になったら暴力(銃)で始末してしまうのだ。「陰謀論」の誹りを恐れず、この不穏な仮定考察の延長を言えば、CIAは、射撃の下手な20歳のボーイに失敗させてもよかったのである。どちらに転んでもよかった。その理由は、暗殺失敗はトランプへの脅しのメッセージになるからだ。今回はしくじったけれど、本気でウクライナ戦争を和平させるなら、次は確実に仕留めるぞと。

もう一点、アメリカの真の支配者 - 自己の意思と戦略を持つ国家の最高権力機関 - がトランプを排除する動機があるとすれば、それはやはり、あの2021年1月の議会襲撃事件の恐怖であり、それを未然に防ぎたいという防衛本能からだろう。トランプというシンボルとカリスマは、それをやってしまう能力があり暴発の潜在的本性がある。アメリカ国家を革命で転覆させるリスクがある。国家分裂内戦勃発の危険性がある。それが本当に起きたら、アメリカ帝国の世界支配は終焉し、1945年の日本の軍部や1991年のソ連共産党のようになる。1789年のフランス貴族と同じ運命になる。それは彼ら真の支配者(CIA)にとって没落と死を意味する。トランプには通常のエリートの知性の素地がなく、アメリカのエスタブリッシュメントの常識がない。トランプには、国家を会社と同じように統御・運営したいという欲望がある。

会社はオーナーが一存で動かせる。株主総会で選ばれた代表が自由に経営できる。方針と戦略を独断で決定できる。トランプは国家もかくあるべしという持論(妄想)の持主で、主権者である国民に選挙で選ばれたトップが、何の介入容喙も受けずに統治できるのが国家の理想型で、ベストなパフォーマンスを発揮できる姿だと発想し、その理念を貫徹しようとする。その意味で、アメリカ帝国の真の支配者(CIA)にとってトランプは危険な革命家に他ならない。両者の意向と政策が一致すれば問題ないが、ウクライナ戦争と世界戦略については齟齬と衝突の懸念があり、大統領の権力行使によってCIAの中期戦略が阻害される不安を否めない。トランプを熱狂的に信奉する支持者は岩盤を形成していて、地方の白人の中低所得者層に多く、DCから疎外されていると感じている不満群衆である。トランプを救世主と仰ぎ、DCを破壊することを期待している。

DC政治から疎外された白人の没落中低所得者層。彼らは1789年のパリ群衆になり得る。革命に蜂起し得る。そのシンボルとしてトランプが君臨し、民衆のエネルギーを糾合して指導する以上、その構造とバイタルな運動がある以上、DC中枢で権力を握るアドミニ(CIA)にとって、トランプは厄介な目の上のたん瘤だ。他の共和党の政治家ならいいが、トランプは困るのである。何をするか分からず、アメリカ国家をどこへ導くか不明だから。11月の大統領選はどう転んでも接戦になる。マスコミが演出工作し、世論を操縦して接戦に持ち込む。もしも4年前の再現となり、接戦州での郵便投票の集計がどうのという悶着となったら、民主党候補が最終的に勝利したとしても、トランプと支持者は敗北を認めず「選挙を盗んだ」と難癖をつけかねない。そして、独立宣言の革命権を根拠とした国家転覆の暴動に発展しかねない。それはトランプのみに可能な政治である。

トランプという物理的身体が地に倒れ、心臓が止まって活動が止めば、代替のシンボルはなく、厭わしい不測の事態の発生はないのだ。最後に念のため言えば、仮にCIAが裏で暗躍して事件を仕組んでいたとして、バイデンなど政権中枢は何も知らなかっただろう。すべて極秘の進行であり、だから大統領よりも権力が上なのである。恒久的な最高権力者なのだ。イランのハメネイ師なのだ。ここまで、整理し小括すれば、(1) 20歳の容疑者が個人で単独犯行に及んだのかどうか、その事実を納得するには動機等の材料が少なすぎること。(2) 個人でなければ組織が背後で蠢いた可能性が視野に入るが、それは誰かということ。(3) 組織の関与を仮定したとき真っ先に疑われるのは、能力的にも動機的にも経歴的にもCIAであること。以上である。今後の情報と展開に注目したい。来年か再来年には台湾有事がある。司令塔のCIAが全精力を傾けて工程を進めている国家の世紀の大事業である。

トランプが大統領になった場合、精密に設計した台湾有事のプログラムに変更が入る心配がある。それもCIAにとっては重大な懸念事項(コンサーン)だろう。


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