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相続税の計算体系を理解しているのは、それこそ日本人の3割にも満たないと思うのでその計算方法を解説します その①

相続税自体は税金のなかでもそれなりになじみがあるものだと思います。

たぶん、街行く人に「知っている税金を3つ挙げてください」と聞いたら、2人に一人は挙げそうです(想像)。一位が消費税、次が所得税・・・ここまではほぼ全ての人が挙げて、その次に来るのが相続税か酒税あるいは自動車税、ダークホースで入湯税といった感じでしょうか。

一方で、相続税の計算体系をきちんと理解しているという人は、たとえば金融機関に勤めていて金銭リテラシーの高そうな人であったとしても、実は多くはないのではないかという気がしてなりません。

何を隠そう、わたしも税理士事務所に入ってからきちんと理解するようになりました。

相続税の計算は以前の下記記事で大雑把に言及しているところですが

今回から2回にわたって、相続税の計算体系をきちんと、設例を用いて説明します。

設例

1億2千万円(12,000万円)の財産を持つ人Aさん(=被相続人)が亡くなり、相続が発生しました。相続人は、Aさんの妻Bとそのこども3人(C,D,E)の4人です。

ここで、相続人が話し合って、こどもが各1,800万円(全体の15%ずつ)、妻が残りの6,600万円(12,000-1,800×3)分(全体の55%)を相続することとなりました。

相続時精算課税だとか、被相続人が生前に贈与をしたとかといった事情はありません。さて、相続税額はどうなるでしょうか。

基礎控除額

相続税には基礎控除額があります。3,000万円+600万円×法定相続人の数 で計算されます。これはわりとよく知られているかと思います。

設例の場合
3,000万円+600万円×4=5,400万円となります。

相続税の税率

相続税の速算表は、以下の画像(表)の通りとなっています。

画像1

税額はどう計算するか その1

財産の価額12,000万円-基礎控除額5,400万円=6,600万円

6,600万円で、上の表の税率のあてはまるところは
税率30% 控除額700万円 だから

6,600×30%-700=1,280万円

この1,280万円は
妻 :1,280×55%=704万
各子:1,280×15%=192万円 子合わせて192×3=576万円 納税する。

税額はどう計算するか その2

そういえば相続税にも配偶者控除というものがあって、1億6千万円まではかからないはず。となると その1 は間違っている。妻Bの分は考えなくていい。

こどもたちの相続した財産は全部合わせて1,800万円×3=5,400万円 

これは基礎控除額5,400万円と同じ。そうすると相続税なし

税額はどう計算するか その3

その2はさすがになにかオカシイ気がする。いくらなんでもこどもたちも相続税額がゼロにはならないだろう。これは基礎控除額の計算がおかしい。

基礎控除額は全体で5,400万円だから、4人の相続人一人あたりだと1,350(5,400÷4)万円

妻Bは配偶者控除額上限の1億6千万(16,000万円)に満たない財産をもらっているから、ゼロ。

子は
1,800-1,350=450 これに対する税率は10%だから
450×10%=45万円 ずつの納税

税額はどう計算するか その4

いやいや、基礎控除額は全体の財産から引くもので、このように計算するはず。

12,000-5,400=6,600
妻A:6,600×55%=3,630<16,000(基礎控除額以下) 税額ゼロ
各子:6,600×15%=990 990×10%=99万円 
99×3=297万円が全体の納税額

正解

考えられそうな計算パターンを挙げてみましたが、上記は全て違います。

正しくは、
12,000-5,400=6,600
妻:6,600×1/2(法定相続分)=3,300
  3,300×20%-200=460
各子:6,600×1/6(法定相続分)=1,100
  1,100×15%-50=115
相続税の総額 460+115×3=805
妻:805×55%=442.75
  805×6,600/12,000=442.75 (配偶者の税額軽減額)
  442.75-442.75=0
子:805×15%=120.75
相続税の納付税額総額 120.75×3=362.25万円

…ちょっと複雑ですかね。
ここまで、文字ばかりでよく分からなくなってきたと思いますので、次回、図表も入れて、より詳しく解説していきます。

本日は以上です。ご覧いただきありがとうございました。

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