![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/90528626/rectangle_large_type_2_9504bef805c96acac0717ef537ebf423.jpeg?width=1200)
これといった原体験がない人が、取り組むべき社会課題を見つける方法
こんにちは。認定NPO法人フローレンスの米澤です。
突然ですが、自分が取り組むべき社会課題について考えたことってありますか?
今まで強い想いがある方だけがそのようなことを考えるのかなって思っていました。でも少し変わってきたと感じたので、そのことについて書いてみました。
きっかけ
コロナが少し落ち着き、人と出会うことが多くなり、非営利組織のことやフローレンスのことを話したり、ご質問を頂いたりする機会が増えました。
そこで下記の質問を受けました。
「自分にはこれといった原体験がない。興味は多岐に渡る。いろんなNPOにもボランティアとして出入りしている。本格的にジョインする先をどういう基準で選べば良いと思うか」
「NPOに転職ではなく、プロボノとして参加をしてみたい。ただ、何不自由なく過ごしてきた自分に引け目を感じてしまって、HPを見ては諦めてしまう。どう決めたらよいのか?」
取り組む社会課題やNPOを
『ビジョン』や『役に立てるかどうか』
で、選ぶことがほとんどです。
ところが、それでは選べないというのです。
一人目の方は、既に多くのNPOに無償で自分のスキルを提供されていました。
興味も多岐に渡っていて、これといってないと言われていました。
二人目の方は、ゆくゆくは自分を活かしたいと思うかもしれないが、いきなり責任があるタスクというのは怖く、少し遠くから将来自分が本気で参加するNPO先を見つけたいというものでした。
社会貢献がこんなにも身近になっているなんて!!!
シンプルに嬉しかったので、何を基準に、参加する社会課題を決めればよいのかnoteに書いてみることにしました。
もちろん、個人的な考えです。
今、興味がなくても、人生100年時代、いつかのご参考程度にお付き合い頂ければと思います。
4つの分類
結論から、書いてしまうと、ビジョン共感やスキルで参加するNPOを決められない場合、縦軸を上流と下流、横軸を時間軸で考えて、判断するのが良いと思っています
※寄付以外での参加を考える場合です
![](https://assets.st-note.com/img/1667632663492-eZ9GmxzCOk.jpg?width=1200)
縦軸:上流と下流
弊会、会長、駒崎の著書でも出てくる、社会課題に取組む人々の間で知られている「溺れる赤ん坊のメタファー」という寓話があります。
旅人が川で溺れている赤ん坊を発見して、急いで川に飛び込み、赤ん坊を助け出し、岸に戻り、安堵しながら振り返ると、次々に溺れている赤ん坊が流れてきて、必死に目の前で溺れている赤ん坊を助け続ける。忙しさに忙殺されて、実は川の上流で、一人の男が赤ん坊を川に投げ込み続けていることに気づかない。という話です。
問題(下流で起きていること)と、それを生み出している構造・仕組み(上流)があり、解決していくために具体的に取り組むべきことが「社会課題」となります。
今、目の前で困っている(例えば)子どもを助けたいのか、それを生み出している仕組みを変えたいのか、どちらに取組むのが合っているのかを考えると良いと思っています。
ちなみに、私の場合は、今、目の前で困っている社会的養護の子どもや出身の若者(児童養護施設や里子)の自立支援をしていた団体から、国内の親子領域の社会課題を仕組みや制度を変えることで解決してきたフローレンスに転職しています。
下流・上流どちらが良いとか秀でているとかいうことは、ないです。一見、根本を解決する方が良いとか、長いスパンで物事を考える方が大きなことを成し遂げていると思われがちですが、今、目の前で困っている子どもを放っておいて良いと言える人はいないです。
お互いの存在がお互いの存在を可能にしているのです。
私は、下流から上流の問題を解決しようと決断してフローレンスに転職したものの、転職して暫く後ろめたさを感じていました。支援途中でバトンタッチした子どもの顔が浮かぶからです。でも、自分にできることはそう多くないと心を落ち着かせました。
ちなみに、なぜ決断したかというと、子ども支援をしていて、3つの壁にいつもぶつかっていたからです。3つの壁とは愛着形成の問題、社会の価値観、社会の制度です。
仕組みや構造の課題解決支援と目の前で困っている方の支援と、どちらが満足するかを考えてみて下さい。支援なのに自分が満足?と思われるかもしれませんが、向いているかどうかの判断です。それに長く続けるには自分も相手も喜ぶ形が一番です。
向いていないことに取り組み続けると、心が疲弊しバーンアウトを起こしてしまいます。
そんな仲間を沢山見てきました。
横軸:結果までの時間
初めて就職活動をした時、何を軸に選びましたか?
給料、仕事内容、働き方、多くの基準があると思います。その1つに「結果までの時間軸」という考え方があるのはご存知でしょうか。
例えば、研究職は一般的には結果が出るまでの時間軸が長いと言われています。逆に接客・販売というのは短いことが多いです。営業でも新規開拓部門は場合によっては長く、ルート営業部門は短いといった類です。時間軸という考え方は、性格的に合うか合わないかが出やすいです。
縦軸と横軸を組合せた各領域に関して
A:既得権益が少なく世論を高められる領域
一番イメージされにくい領域です。
すぐ変えられる仕組みや構造がここにあたります。ITの力や、制度で変えられる類です。
例:2022年9月5日に、静岡県の保育園で、バスの中に取り残されたお子さんが亡くなるといった痛ましい事件が起こりました。弊会のHPに記載していますが、フローレンスでは、事件直後すぐ、「置き去り防止装置」の設置義務化とその導入支援等を政府に要望し、4万人を超える署名を小倉大臣に提出して、9月29日、小倉大臣より、「置き去り防止装置」義務化の指示が表明されたということがありました。
B:多くの既得権益が絡む領域
例えば、明治時代から続く女性の再婚禁止期間というものがあります。先月、その廃止などを盛り込んだ民法の改正案が10月14日、閣議決定されました!(平成28年に禁止期間が6か月から100日にはなっています)ジェンダーによる問題も既得益の1種だと言われています。明治時代からです。記事を読んだ時、このことに苦しみながら20代・30代をおくられた方はどういう思いでいるんだろう。そんなことを考えてました。
この領域は、特に強い想いをお持ちの方が取り組んではいますが、すぐ結果が出ないものこそ、体力がいるのでボランティアやプロボノはとても助かります。資料をわかりやすくまとめる、調べ物をする。シュレッダーをかける、紙の資料をデータ化する。そういった類の仕事に人手が足りないことも多いです。
C:物理的な支援で解決できる領域
下流の目の前で困っている子ども支援の中でも、奨学金支援や学習支援などは、ゴールがあり、結果までに多くの時間を要するものではありません。
環境系NPOの地元のビーチを綺麗にしようという活動も、すぐ成果がでます(維持するのが難しいかもしれませんが)
D:アンコントロールな領域
虐待によって傷ついた子どもを笑顔で暮らせるよう支援をしようというのは、短時間でできることではありません。一般的に伴走型支援、自立・自律支援と言われるものは、時間軸が長い支援となります。
環境系のNPOで例えると、海洋プラスチックごみをなくそうというのは、この領域です。それでも少しでも環境を守ろうとか、少しずつでも子どもの笑顔を増やしたいと想って活動するもので、解決できないから、やらないという領域ではないです。性格的にそういう考えが合うかどうか考えてみて下さい。
補足
●同じNPOで複数の領域を展開している団体もあります。
フローレンスは、全部していると言えばしています。ただ、上流のABを変えていくことで、社会的課題を解決していっている団体です。参加するなら、どのポジションの団体で、どの領域に自分がジョインするのか、理解していた方が良いです。
●時間軸の考え方で、1つのエリアでの展開は可能だが、それを広げようとすると時間がかかるといった場合があります。
その場合、どういうポジションの募集をしているかで考えれば良いです。
同じC:物理的な支援で解決できる領域の中でも、既存事業のテコ入れか、エリア展開の事業開発・新規開拓系が合うかで選べば良いと思います。
時間がかかると言っても、D:アンコントロールな領域とは違って工数や費用をかけたら何かしらの結果は出ます。
1つのテーマを4つに分類すると
ご参考程度に1つのテーマでの4象限の分類も記載しておきます
テーマ:子どもの教育
A:オンラインで日本の子どもの教育格差に取組む
B:文科省に要望・提言して日本の学校教育の制度・方針を変える
C:奨学金支援、学習支援の提供
D:将来キャリアの参考になる為の様々な体験機会の提供
自分が上流・下流どちらの課題と向き合いたいか、時間軸との相性はどうか、ボランティアでもプロボノでも、有償スタッフとしてでも、参加しようと考える時、参考にして頂ければと思います。
強い原体験がなくても、社会課題の4つの分類で相性が合う領域を取組むべき社会課題として選ぼうという話でした。
最後に
強い原体験がある→自分で判断可
ビジョンやスキルで選べない→本記事ご参考
じゃあスキルで選びたい場合は?
自分のスキルがどう役に立つのかなんて分からないじゃないか!
という方の為に下記のイベントを紹介させて頂きます。
「のぞき見!フローレンス@オンライン」2022年11月29日 19時~
![](https://assets.st-note.com/img/1667633094425-IPTlYLywTJ.jpg?width=1200)
「こんな経験・スキルあるけど活かせる?」といったご質問にも答えるイベントになっていますので、ご興味ある方は覗いてみて下さい!
最後までお付き合い頂き、有難うございました!!