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子どもの虐待死を数字で考えてみると、本気で、救えるはずだった子どもの命を失っていることが分かる

939人

この数字は、国が子ども虐待による死亡事例などの検証を開始してから今までの約18年間の虐待死で亡くなった子どもの数です(心中以外)。
 ※厚生労働省「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第18次報告)」/第1回目は半年間のみの集計

子どもの虐待死の半分は0歳

子どもの虐待死といっても、0歳から17歳まで幅広いですが、今まで虐待で亡くなってしまった939人のうち、
約半分の455人が0歳で亡くなっています

最新データの内訳

昨年9月に厚労省より公表された報告の内訳を調べてみました。

1年間の子ども虐待死77人=心中28人+心中以外49人
心中以外49人 ⇒ 65%の32人が0歳(※心中による0歳児虐待死は1名)
0歳虐待死32人 ⇒ 半分の16人が0歳0ヶ月
0歳0ヶ月虐待死16人 ⇒ 半分の8人が0歳0日

厚労省:子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第18次報告) 

子どもの虐待死の半数である0歳の虐待死を考えるのに、0ヶ月児、0日児での虐待死を考える必要があることが分かります。

どういう問題があるの?


厚労省:子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第18次報告) 

0日・0ヶ月虐待死事例における実母の妊娠期・周産期の問題として、0日児で50%を超えているものは、「予期せぬ妊娠・遺棄・堕落分娩」
より濃い赤枠の0日児と0ヶ月児、両方で50%を超えているものは、「妊娠届けの未提出」と「未受診」なことがわかります。
妊娠届とは、病院で妊娠判定を受け、保健センターに妊娠届けを出せば、検診チケット(妊婦が定期的に病院で検診する公的補助制度)をもらうことができます。これで、日本の妊婦は医療とも行政とも繋がることになります。

つまり、病院に行かない(行けない)、そして病院受診後、(恐らく)一人で抱えてしまうことが問題に繋がっていることが分かります。
そこで、未受診の理由を調べてみます。

未受診は、経済的理由が一番多い

未受診妊婦の背景要因を調べる為に、過去 30 年間の文献を概観し、妊婦健診を受診しない最多理由が「経済的理由」とレポートしている論文があります。
下記は、妊婦健診を受診しない理由について、件数が多い順に上位 10 位が掲載されていた図になります。

「経済的理由」379 件(37.1%)が最も多く、次いで「妊娠に気づかなかった」104 件(10.2%)、「誰にも相談できなかった・妊娠を隠していた」64 件(6.3%)、「多忙」47 件(4.6%)、「妊娠に気づいていたが放置した」35 件(3.4%)、「知識不足・どうしていいかわからなかった」 28 件(2.7%)、「家庭の状況(離婚、DV、不倫)」26 件(2.5%)、「産むか迷っていた」21 件(2.1%)、「不法滞在や路上生活」11 件(1.1%)、「中絶予定だった」10 件(1.0%)であった。その他の理由には、未成年、自宅分娩希望、精神疾患、病院に断られたなど

大阪青山大学看護学ジャーナル 3 巻 11-19
Nursing Journal of Osaka Aoyama University. 2020, Vol.3, 11-19
未受診妊婦の背景要因に関する文献的考察
https://core.ac.uk/download/pdf/354344969.pdf

未受診の要因として、経済的理由が圧倒的に多かったので、病院にかかる費用を調べてみました。

いくらかかるの?

合計、約15万円かかるということになります。
但し、これらは国民健康保険に加入している場合になります。

https://zexybaby.zexy.net/article/contents/0071/
https://www.excite.co.jp/news/article/Monetasu_1257820/?p=3
https://www.kokuho.or.jp/statistics/birth/lib/h28nendo_syussan5.pdf

出産の公的補助が2023年4月より50万になるので、出産費用の全国平均に近くなりますが、病院側でも値上げがあり、出産費用の全国平均も上昇することが予想されています。
(悪質なところもあるかもしれませんが、値上げせざるを得ない事情が病院側にもあると言われています)

15万円あれば救えた命がある!?

例えば、先の未受診データでの0日児と0ヶ月児の虐待死で未受診だった9人に、未受診の背景要因を調べた論文にあった経済的理由37%というのを当てはめると、3〜4人が経済的理由で病院と繋がれてなかったことになります。妊娠判定も、妊婦検診費用も出産費用も出すよといったら、救えたのでしょうか?
中絶できる時期も過ぎていて、育てられなかったら、特別養子縁組だってあるよと言っていたらどうなってたのでしょうか?何かトラブルを抱えていて、一緒にそのことを考えて解決できたら自分で育てられる可能性だってあったかもしれません。
もし、本当に15万のお金で赤ちゃんが死ななければならなかったとしたら?
経済的理由以外にも多くの要因がありますし、経済的理由に加えて複数の課題を抱えている可能性もあります。
そもそも、経済的な理由を解決しただけで、赤ちゃんの虐待死を、ゼロにすることはできません。

でも経済的問題を仮にクリアすれば、病院や行政、支援団体、また周囲の誰かと繋がっていった妊婦さんがいたかもしれません。年間、3〜4人は救えた可能性も見えてきます。
15万円で、赤ちゃんの命が助かり、実母を犯罪者にさせずにすんだかもしれないんです。
この可能性は、あまりにも重くないですか?
また、このまま20年経つとどうなるでしょうか?

出産費用無償化では0歳児虐待死を防げない

先日(3月31日)小倉大臣より異次元の子ども政策が発表され、出産費用の保険適用化の検討(出産費用の無償化)も、その中に入っていました。
出産費用が無償になったら、赤ちゃん遺棄問題はなくなるのでしょうか?
(出産費用無償化は赤ちゃん遺棄問題解決の施策ではないですが)

そもそも、0歳虐待死では、未受診の妊婦が多いので、その手前の検診費用を解決しないと、経済的などの困窮妊婦は救えないことが予想できます。

一度も病院を受診していない妊婦の受け入れは、感染症リスクの問題、胎児と母体の状況が不明確すぎて非常に危険な為、受け入れて下さる病院を見つけるのが困難だったりします。未受診では、母子ともに安全安心の出産は難しくなるんです。

そもそも、どんな環境だろうと、政治的・社会的に左右されず、「子どもを持つ」「持たない」を決める権利が個々に本来はあり、妊娠、出産にかかる費用は、国が全額負担ということにならなければ、お金がない人が産めない世の中になってしまいます。
もう、なりつつあるとの声も大きいですが…

子どもの虐待死から考えると、検診・出産、両方の無償化が大事であり、又、受け入れて頂ける病院とスムーズに繋がれることが重要になってきます。

以上、子どもの虐待死を数字で考えてみると、救えるはずだった子どもの命を失っていることが分かるという話でした。

全国の産婦人科がある病院で、この問題に関心があるよ!普段、困窮妊婦を受け入れているよ!という方がいれば、是非教えて下さい!(お話したいです)

読んで頂き有難うございました!


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