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自叙伝「#車いすの暴れん坊」#34 ユニバーサルデザインの街や店舗と車いすの飲んだくれ

ユニバーサルデザインの街や店舗

もう今からのお店はすべてユニバーサルデザインにするべきだ。

飲食店もそうだし、洋服店であっても、雑貨屋でも。なぜなら先にも言ったように超高齢化社会では、20~25%は杖をついたり車いすに乗ったりするような人が出て来るわけだ。

そこでオーナーたちはこう聞いてくる。「ユニバーサルデザインにしたら何人の方が来ますか」と。

ただ考えてほしい。例えば、A店、B店という美味しい中華料理屋があるとする。味のレベルは同じくらい、サービスも同じくらい。しかしA店には車いすに対応したテーブルがあったり、車いすで使えるトイレがあり、入口に段差もない。

俺は見ての通り電動車いすに乗った障害者だ。俺が20人の健常者の友達と中華料理を食べながら酒が飲みたいなと思ったとする。A店とB店のどちらを選ぶだろうか。

答えは言うま でもないが、つまり車いす対応などのユニバーサルデザインにすることによって、設 備を使う人はひとりかも知れないが、その他大勢がもれなく付いてくる。

これは家族 で考えても一緒だ。例えば、家にいれば、爺ちゃん婆ちゃんが使えるトイレもあり、テーブルもある。だけど一歩、街中に出て中華料理が食べたい、日本料理が食べたい、ラーメンが食べたい、お好み焼きが食べたい、と思ったときにそういう設備がある店 がなければ、まず家から出ようとさえしないだろう。

寿司屋の出前、テイクアウトで 我慢しなさいというのだろうか。でも、そういう店があれば、家族はお爺ちゃんお婆 ちゃんを月に1回くらいは連れて行きたいと思うのではないだろうか。

家族4人かも知れない、6人かも知れない。親族あわせて10人かも知れない。つまりユニバーサルデザインにするということは、そういう新しいお客さんの取り込みにつながるのである。


車いすの飲んだくれ

自立生活を始めて、友達とよく飲みに行った。そこは居酒屋であったり、スナックであったり、ラウンジであったり、クラブであったりするのだが、まずどこへ行っても車いすで使えるトイレというのはほとんどなかった。

たまに車いすの頭だけ突っ込めるところはあったが、ドアまで完全に閉められるトイレというのはなかった。

だから飲むお酒もビールなどを飲むとトイレが近くなるので、ウイスキーのバーボンをロックで飲んでいた。トイレは集尿器という袋に貯めたり、途中から自己導尿に変わったりした。

ときにはビルの隅の方でしたりもしたが、その頃、車いすで使えるトイレと言えば、公園くらいしかなかった。

例えば北浜で飲んでいて、トイレに行こうと思えば、海門寺公園が一番近い。では北浜のナイトセンターとかのビルの、よく3階のラウンジに飲みに行っていたが、そこから海門寺公園までわざわざトイレに行くだろうか。

なんで商店街に公共トイレがないのか、ビルの中にトイレがないのか考えた。でも、その頃はいくら俺らが訴えようと簡単に変わることはなかった。

しかし、中には一緒に飲んでいて、そこを分かってくれるオーナーも現れてきた。ヒットパレードクラブ、別府では有名なオールディーズの生バンドが聞ける150人くらいが入るお店だ。

そこの社長と知り合いになり、トイレを作ってもらった。これはとても画期的だった。飲んでいて店の中にトイレがあるというのがどれだけ障害者にありがたいか。

ヒットパレードクラブにユニバーサルなトイレを作ったことで、日本最大の障害者雇用を誇る「太陽の家」の人たちがこぞって訪れるようになった。

それはそうだろう。ライブを聞きながら美味しいお酒や料理を食べられる。太陽の家には関連会社だけでも何社もある。そしてその中には何人かの割合で車いすの従業員がいるわけだ。

そうなれば当然、会社の飲み会、歓送迎会で利用するようになる。お客が増えるのは至極、当然なことだ。ぜひともこれからお店を作るのであれば、ユニバーサルデザインにしてほしい。

そして既存の店が多いところ、狭くてどうしようもないところは、地域にひとつはユニバーサルデザインの公共トイレをつくろう。

別府の商店街にも2箇所できた。だが、大分市の商店街はどうだろう。車いすの公共トイレがあるだろうか。ハートビル法で大型店舗やビルには多目的トイレを設けるという法律がある。

しかし、あの広い商店街の中に、どこにも広いトイレがなければ、そこで食事をするとき、酒を飲むとき、困るのは当り前のことである。

各店舗が無理であれば、地域の中にひとつはそういう公共トイレを作ってほしい。

それから飲みに行くところでトイレを広げてくれるところが少しずつできてきた。クラブバカラもそうだ。完璧な車いす対応トイレではないが、車いすがトイレの中まで入る。これだけでも車いすを使う人にとってはとてもありがたいことだ。

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ユニバーサル別府


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