58. Eid Mubarak!
ヒジュラ暦1440.10.02 (2019.6.05)
イード ムバラク!(イードおめでとう!)
ようやくラマダンが終わり、こちらでは6月4日からラマダンの終わりを祝うイード・アル フィトルという祝日が始まった。(場所によっては6/5から)
ムスリムではないけれど、今年も断食に挑戦して、なんとか目標の体重3キロ減を達成した。毎年、思うのだけど、体の代謝は、2週間ぐらいで断食仕様に変わる感じがする。体が省エネモードに変わり、月の前半ほど空腹で苦しむことがなくなる。
しかも、日没後の食事も最初のうちは、これでもかってぐらい食べ溜める感じになるのだけど、2週間ぐらい過ぎると、日没後に通常の一食と、寝る3時間ぐらい前に軽食を食べたら、なんとか一日過ごせる体になってくる。体の適応力はすごい。
一方で脳の方は、そこまで適応できなくて、省エネモードなのか、午後は集中力を要する作業はできないし、倦怠感もある。
今年はなんとか、ラマダン中に3キロ落としたが、ラマダンの最後の方には、“ラマダンが終わってからが勝負で、しっかり運動も入れなきゃな”とずっと考えていた。早寝早起き、カロリーを抑えた食事、運動。いろいろ計画を立てて気合が入っていた。なので6月4日(イードの初日)は久々に控えめの朝食、昼食を取り、午後はランニングをした。
ランニングが終わって家に帰ってきたら、携帯電話にメッセージが来ていた。近所のサウジ人の友だちで過去に何回かここで書いたことがある人だ。メッセージは「Eid Mubarak!」というあいさつと、「今日、夜9時からみんなでご飯を食べるからおいでよ」と。
彼からの誘いはいつも突然だ。みんなとは言わないけど、サウジ人の誘いはだいたい突然だ(笑)しかも夜遅めだ。私は今日は夜7時には夕飯を終え、11時ぐらいには寝る、そんな計画だった。初日から計画が崩れるなぁと思いながらも、いつもこうして誘ってくれるのはありがたいし、彼の家に行くと毎回、放置されるのだけど、それもだんだん心地よくなってきて、突然でも都合をつけて行くようにしている。しかも、イードの時に彼の家に行くのは初めてだ。
夜7時過ぎには空腹だったのだけど、なんとか9時までしのいで、彼の家に9時に行ってみた。彼の家の敷地に入ると、庭に絨毯が敷いてあり、イスも20脚ぐらい置いてあった。しかも、いつもはいないウエイターさんのような人が2人いた。
早速、招待してくれた友達にあいさつをして、いつものゲストハウスのような離れに入れてもらった。イードの雰囲気は、日本のお正月のような雰囲気だ。多くの人はイードの時に新しい服を買って着る。子どもたちも、いつもの洋服ではなく、トーブと言うこちらの伝統的な服を来ていた。きれいでまっさらだった。子どもたちは大人からお金をもらえるらしい。お年玉のようだ。貯金はしないようだ。
さて、ゲストハウスに通されて、ここは40平米ぐらいはある長方形の部屋で側面にソファーが敷き詰められている。そこに座って食事を待った。座るとウェイターさんがやってきて、アラビックコーヒーを注いでくれる。
その後、デーツを持ってきてくれた。こちらの典型的なおもてなしだ。また、この日はこの家の中学生ぐらいの子がボホールというお香(香木を炭で熱する)を持ってきてくれた。これは香りのおもてなしで、ゲストはシュマーグ(頭にかぶっている布)の中に香りを取り込んだりする。そうこうしているうちに、ぞろぞろと親戚、友人たちがその部屋に入って来た。初めて見る顔も多い。どうも、これまで私が会った親戚たちよりも、もう少し広い範囲で招待をしているようだ(全員、男性)。
ゲストが来るたびにみんなが立ち上がり、順番に握手と頬を合わせたり、年長者に対しては額や頭にキスをするような、そういうあいさつが行われる。立ったり座ったりの連続だ。来る人はみんな正装だった。私はかろうじて襟付きのシャツを着てきてよかったと思った。暑いからTシャツで行こうと思ったのだけど、冷房が寒いかもと襟付きのシャツを着ておいて助かった(笑)
ゲストがひっきりなしに来る中、ウェイターも次々と、おかし、チョコレート、スナック、砂糖がたっぷり入った紅茶、砂糖がたっぷり入ったミントティーなどひっきりなしに勧めてくる。私の1か月の減量が、わずか30分で台無しになるのではないかと危機感を抱いた。彼らもこれが大事な仕事だ。そして、ゲストの人たちも、明らかにサウジ人ではない私を見て「その、おかしおいしいよ、食べてみて。」「ミントティーおいしいよ」と勧めてくれた。
私は思った。“あれ、もしかして既にディナーは終わってて、今はティータイムなのか?”“既に10時半なのに食事は始まらなし、もしかして、今日はお茶に誘われたのかなと”そう考えてしまうぐらい、次から次へと糖分が運ばれてくるのだ。これを全部いただいていたら、間違いなくディナーまでに腹5分目まで来てしまう。こういう場ではディナーこそ全力で食べなければならないのに。
どうにかこうにか、糖分のオファーを2回に1回は断っていると、友だちが「じゃあ、食事の準備ができたんで、こちらへ」と。時計を見ると10時45分。もし自宅にいたら、歯磨きをしているころだ。
いつもの離れじゃなく、どこで食べるのかと思ったら、庭だった。水こそ入ってなかったがプールもあった。フットサルコートぐらいの庭だ。そこにビュッフェスタイルで食事が並んでいて、丸いテーブルが5つぐらい。
“これ、ちょっとしたホテルじゃん”って思った。
ご飯を食べながら、いっしょのテーブルの人が
「日本はすごい!」「日本に行きたい、でも物価が高いだろ」「プレイステーション4は日本では安いのか?買ってきてくれないか」「Wagyu(和牛)は日本でいくらだ、サウジにも持ってきたいんだけど」「(結婚相手)の女の子紹介してあげるよ。でも、高いよ」
等々、無茶ぶりなコンテンツをぶち込んできた。
典型的なアラブ料理をたっぷりと食べた。おいしいのだけど、胃にはとても重い。お肉やご飯たっぷりだ。そして、デザート。カロリーの嵐だ。甘いし、チーズ入ってるし、揚げてるし。もちろん全部いただいた。ラマダン明けの体に糖分が染みわたっていくのを感じた。ほんと、ラマダン明けのお祝いだ。
30分ぐらい食べた後、また、ぞろぞろと離れに戻り、それから30分ぐらいそれぞれ談笑したあと、なんとな~くみんな帰っていく。すでに時間は0時前を過ぎていた。
帰り際に、お友達に今日もとても楽しかったとあいさつをすると
「自分のうちだと思って、いつでも遊びに来てね」と。
いつも、ありがたいなと思う。別に私が彼らに何かしてあげられるわけでもないんだけど、それとは関係なくいつもwelcomeなのだ。初対面から続く、圧倒的なアットホーム感。サウジアラビアの好きなところの一つだ。
今年のイードはまさにラマダンの終わりを祝う楽しい一日だった。