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書く時の意識:自分の庭に招待するのか、外へ出ていくのか。

2019年の「宣伝会議編集ライター養成講座の米光クラス」について書いたテキストを再掲する。

今シーズンから課題を「noteに書いて出す」ということにしたら、(良くも悪くも)原稿の雰囲気がガラッと変わった。やー、載せる媒体に影響されるパワーの大きさたるや。
全員の課題に、毎回、赤入れをして、それを全員に返却する。個別に、ではなく、全員が全員の課題と赤入れを読めるようにしている。20ほどの課題と赤入れ(A5サイズで100ページ超え)を読むことで多面的な「人を以て鑑と為す」になるからだ(あと、終了生で編集者になった人によく言われるのが「たくさんの課題の赤入れを読めたのがめちゃくちゃ役立っている」)。

以下、宣伝会議編集ライター養成講座の米光クラスの第1回目課題の赤入れの冒頭につけたテキスト(の短縮版)です。

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今期から「noteに書く」方式にした。直接提出方式より、みんなのびのびと書いていていいね。
プチ専門を決めて、プチ専門について取材して調査して考えて、書こう。まず、そこができてない原稿がいくつかあった。
まず「プチ専門に関する発見」を。それを100字以内で書いてみよう。そのことについて書くのだ、という目標を持って書き始めよう

たとえば、鎌塚くんの原稿は、「プチ専門に関する発見」がしっかり定まっていて、それを明記し、軸にして書いているので、読みやすくかつ読みがいがあった。
他の人は、ぜひ参考にしてください。

冗長な原稿が多かった。これはnoteという場がブログで、自分の領域ということも大きく影響しているかもしれない。
自分の家に他の人を読んで、のんびりしていってくださいねという感じで、のんびりとした文章になっている。
プロになると、自分が立ち上げたメディアではなく、よそのメディアに書くことが多くなる。そうすると、この冗長さはマイナスになってしまう。自分のメディアだけで書いていくというのならOKだが(その選択肢もいまやありかもしれない)、そうでなければ「推敲して削る」ことに力を注いでみよう(「文章を書いたらチェックしたい18の項目」を読み返してみてください。その多くが「削る」に関する項目です)。

また「感じました」「のよう」「と思います」の語尾が多い。基本的にこれらの語尾は1度も使わないのがベスト。内容の正確さを曖昧にする語尾を削るために、取材し調べ考えるのがライターの仕事だと心に刻んでください。『悪童日記』のスタイルで書くのだと決意してもらってもいい。
前回のレジュメに引用したフレーズを再度引用しよう。

小説のみならず、あらゆる表現活動を行おうとする際、自分の無意識のパワーなどというものを過信してはなりません。この<特別な私>が主体であれば、カメラのシャッターを切れば自意識が反映されたすばらしい写真が撮れ、舞台に立てば魂の叫びが観客の心を打つ演技表現になる……などとは、ゆめゆめ思ってはならないのです。(島田雅彦『小説作法ABC』新潮社P15)

私が思ったこと、私が感じたこと、は、原稿の隙間からどうしても漏れ出てしまう程度でギリギリです。原稿の中にこれみよがしに書いてはいけません。

作文としての致命的な欠点は見受けられませんでした。原稿を提出した人たちは、その第一段階はクリアしたと思ってもいい。胸をはってください。

以下、個別に赤入れをしています。
赤入れは、「ありがちなミス」「ちょと直せばぐんと良くなるポイント」「クセでやってると思われる部分」「考えなければいけないポイント」を中心に入れている。
「書く姿勢」に関わることについて多く指摘しているので、考えてみてほしい。考えたうえで覚悟を持って書いてください。
土台に近い部分の欠点から指摘しているので、その上に積み重ねるべき部分についてはあえて言及していない。(そっちも指摘すると、土台を考え直すまえに、積み重ね部分を考えて迷走しちゃうから)

基本的に「厳しい指導」になっていると思います。
講座が半年しかなく短期間で、書くための土台、書く姿勢を身につけてほしいためです。
立場上そうやってるーのよー。
(受講生のみなさんは、他の人の原稿で、気に入ったものや、いいなーと思ったものがあったら、本人にそのことをぜひ気軽に伝えてください)

他の人の原稿と、赤入れを読んで、自分の原稿はどうかということも再確認してみてください。ものすごく勉強になります。

課題提出した人は、フェイスブックのメッセージか、TwitterのDMで、「これこれこういう内容で課題を提出しただれそれです」ってメッセージください。個別でやりとりして指導したほうがいいポイントを返信します。

実践こそが最大のトレーニングです。トレーニングする者には、道が開ける。たゆまず続けてください

トレーニング
「させていただく」禁止
「が、」禁止(「文章を書いたらチェックしたい18の項目」参照)
「かもしれない」禁止

評価は数値化したほうがわかりやすいので、強引に経験値として数値化しています。
次回課題を提出するときに自分の合計経験値を書いていてください。
プチ専門について具体的に書いてないもの(自己紹介や予告みたいな内容)の場合は、よほど面白くない限り経験値少なめの評価になっています。


以下、個別の赤入れが続くのである。今数えたらA4でみっしり52枚。A5サイズの本にしたら100ページ超えだ。
隔週で、この膨大な「赤入れがついているいろいろな原稿」を読むのだから(しかも、それは講座で会っている人が書いている原稿だ)、そりゃ文章の胆力がつくってもんである。

と、同時に、この最初の原稿で、あきらかな力量差が見えてしまうので、「わー」ってくじけてしまう人も(ひとり、ふたり)いる。くじけずに課題を出し続ければ、あっという間にうまくなって追いつく人もいる(いくつかのポイントを実感するとあっという間にうまくなるのだ)から、くじけないで。

人のやる気を直接コントロールすることはできないから、やる気がでるような環境を作り上げなきゃいけない。

いまのところ講座でやっていることは、以下。
隔週の講座そのものがマイルストーン 講座で、みんなの進捗や成果を確認することでたゆまないようにする
刺激を与え合う関係性づくり 4人チームと、部活チームを作って、チームで、相談したり、励まし合ったりする環境をつくる。2つのチームに参加することで楽にチーム参加できるようにする。
刺激を与え合う外部刺激の導入 先輩や、プロの編集者ライターに遊びにきてもらう。講座内だけで閉じるのは良くないので、できるかぎり先輩や、プロの編集者ライターに遊びにきてもらっている。今シーズン第2回目の講座もプロとして活躍している先輩10人ぐらいに遊びに来てもらった。
講師へのアクセスの通路をつくる フェイスブックのグループやメッセージ、ツイッターで、講師に気軽にアクセスできるようにした

と、こうやってまとめて整理していると、何か、1つ新しい仕組みを加えるだけで、抜群にもっとやる気がでる環境になりそうだなと思えてくる。考えるーーー。

第2回はnoteの志村優衣さんゲスト講師で、noteの使い方をいろいろ教わった。今後、そのあたりを活用して新しい使い方をしていくので、乞うご期待。

この講座は、10年続けた。
宣伝会議編集ライター講座の総合コースの講師は、いまでも続けている。

やー、ふりかえってみても、いい講座だ(自画自賛)。プロのライター&編集者になった人もたくさんいる。
とはいえスパルタなので、「いまどきのやりかた」じゃなくなったのも確かだ(辞めた理由のひとつでもある)。
というわけで、「創作の秘密」として、「いまどき」どころか、最先端の創作実験場として、講座をスタートさせます。

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