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3つの言葉を使って創作。(創作27)


エステ カラス 風鈴


外を歩いていると、色々なものに出くわす。

やる気なさそうに、ただロボットのように、ティッシュ配りをしている男。

笑顔でエステのチラシを配る女。

そのどちらも避けて、路地裏に入る。

カラスがゴミを漁っている。

こちらに気づくがそこから離れようとはしない。

(カラスは人なんて怖くないか。人は人が怖い時あるけどな)

カラスも避けて路地裏を進むと、店らしきものがあるのに気づく。

(こんな路地裏でやっていけるのかな)

店の様子をうかがっていると、中から人が出てきた。

慌てて立ち去ろうとするが、声をかけられた。

「どうぞ、中へ」

『いえ、私は…』

断ろうと思ったけれど、何の店か気になり、入ってみることにした。

『ここは何のお店なんですか』

「少しだけ過去に戻ることのできる店です」

(怪しい店だった…やっぱり帰ろう)

『そうなんですね、知らずに来ちゃって…帰ります』

「そうですか、残念です。でもここに来られたので、少し影響を受けることがあるかもしれません」

『それは、どういう意味でしょう?』

店主はそれには答えず、微笑んで入り口の扉を開けた。

「では、またお会いすることがあれば」

そう言って私を外に送り出し、扉を閉じた。


店を出て、大通りに戻るために歩き出す。

(過去に戻ることのできる店?)

気になった私は、ポケットからスマホを取り出して、調べようとした。

が、スマホがない。

(しまった。落としたか?さっきの店かな?)

店に戻ろうとした時、大通りの方から賑やかな音と声が聞こえてきた。

そして、香ばしいソースの匂い。

(なんだか、懐かしい匂い)

匂いに誘われて、大通りに出ると、ずらっと並んだ屋台の数々。

(え、さっきまでこんなのなかったのに)

綿あめにりんご飴、イカ焼きにたこ焼きにお好み焼き、クジ引きに風鈴屋さんにお面屋さん、ヨーヨー釣りにミドリガメ釣りに金魚すくい。

子どもの頃に見た光景がそこにあった。


カー。カー。カー。とカラスの鳴き声が響く。

カラスがゴミを漁っている。

私に気づくと、カラスは飛んでいった。

ゴミの側にスマホを落としていた。

拾って、壊れていないのを確認し、大通りに戻った。





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