木の話18 この木なんの木
木と樹。どちらも「き」です。
どっちがどっちでも私はいいと思っていますが、字が違うのだから意味も違うと言われる方もいらっしゃいます。
違いがわかりますでしょうか?
そうです。山に立っているきを樹、それを切って丸太にしたきが木です。
そうそう、私は大阪の人間ですが、大阪弁では木は「きぃ」と言ったりもします。
大阪弁は一文字の名詞に母音をつけることがよくあります。目は「めぇ」だし、歯は「はぁ」だし、「血が出てる」は「ちぃでてるでぇ~」だし。
ちなみに「きぃ↓」と小さい「ぃ」は下げて発音します。…文章では非常にわかりにくいですね…。
木の話にもどりますと、山に生えてる木を立木といいます。「たちぎ」と読んだり「りゅうぼく」と呼ぶ場合もあります。「りゅうぼく」と読まれると、私はついつい「流木」のほうを連想してしまいます。
立木を伐採、つまり切り倒すと、丸太になります。
丸太を製材すると、板になります。
木偏に反ると書いて「板」。丸太の時木はたくさんの水を吸っています。丸太から板になったときもその水は木の中にあるわけで、だんだんと蒸発して乾いていきます。その乾くときに板は反っていきます。
私の仕事はここの部分です。
丸太を板にして、板を天日に干して乾かします。すると板が反る。長い時間干して、反るだけ反って、もう反らなくなったなぁ…というところで、もう一度綺麗に製材して出荷する…という仕事です。
私はこのように製材を仕事にしていますが、一般の人から見るといわゆる「材木屋」さんに見えるようです。「材木屋」さんは材木の専門家で、木のことはだいたいなんでも知ってると思われます。
それで、山とか公園とか、木のあるところでたまに聞かれることがあります。「この木なんの木?」と。
「わからへんなぁ…。」と答えると、「そうなんだ。」と納得してくれますが、(なんだよそれでも材木屋かよ!)とクッキリハッキリと顔に書いているのがわかります。
ここまで読んでくださったみなさんにはおわかりと思いますが、私は板を扱っているので、立木は見てもわかりません。
「この木なんの木?」と聞かれたときは、これからは「板にしてくれたらわかるよ」と答えようかな?
あ、いや、とにかく、何が言いたいかといいますと、同じように木を扱っていても見方がみんな違う…ということです。
林業をやっている人は立木を見たら何の木かわかるでしょうけど、板を見てなんの木か見分けるのが苦手かもしれません。
私は立木や木の葉っぱを見てもなんの木か当てるのが苦手ですが、板を見たらわかることも多いです。
一番面白かったのが、大学で木の研究をしている先生。大学の先生だから一番の専門家で、木のことならなにを聞いてもわかるんじゃないかと思いますよね?
でも、立木をみても板をみても何の木か当てるのが苦手だそうです。
顕微鏡で見ないと何の木かわからない…とのこと。
このように、木というのは実はその扱いにおいていろんな専門分野でわかれているんですね。そして、その専門によっていろんな違いがある。
やっぱり木って難しいと思うし、そこがとても面白いとも思います。金属やプラスチックといった素材と違って、木は生き物だからなんでしょうね。
木の面白さを引き続き伝えていこうと思います。
ほんじゃまた!