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教養としてのオタク - 1人のオタ活が終わった話

「オタク」をしたことがない人にも受け入れてもらいやすいよう、工夫して書きました。誰かがこのnoteに共感してくれたら、この涙も救われる気がします。

解散のお知らせが届いた日

やっぱり「解体したんだね!」と無邪気に私に知らせる夫。
おい、もっと深刻に言え。

昨日STARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ)から「新グループ3組誕生」のニュースが発表された。

もともとあった3グループ+数名を再編してできた新グループ。
つまり、実質的に今までのグループは「解散」したことを知らせる発表だった。

ファンの誰もが薄々気づいていた。その事実がついに公式に発表された。
「HiHi Jets」というグループそのものを推していた私にとって、これはオタ活の終わりを告げるものだった。

オタ活は、私の日常である。元気がないときはYoutubeでMVを見て元気をもらい、毎週の冠ラジオを聴いて癒され、冠TVを見て曜日感覚を保っていた。

恋愛とは違う。
私にとっては、ただ「応援すること」自体が、かけがえのない日々の一部だった。

でも、そのすべてが終わる。それがこんなにも苦しいのは、なぜなのか。
これを言語化することで、この気持ちを供養したい。


「サポートする側」の視点 ー 応援とはなにか

私は学生時代、運動部のマネージャーをしていた。プレイヤーではなく、サポートする立場だったが、それでもチームの勝敗に一喜一憂した。選手の努力を知るからこそ、その成功や挫折に心を揺さぶられていた。

3. 応援する・される共創価値

サッカーや野球など対戦型のスポーツ競技については、「ホーム」であるか「アウェー」であるかも、大きく影響するようです。
(中略)
プレイヤーと応援との相乗効果で、皆が夢中で一体になって、さらにモチベーションを高めていくといいます。「共感」「分かち合い」が非常に大きな追い風になるのだとコメントしています。

応援する・される心理的価値:「推し活」文化 ③

推しのアイドルを応援することも、これと似ている。直接ステージに立つわけではないが、彼らの努力を見守り、成功を願う。そこに「自分も関わっている」という感覚が生まれ、結果が出たときの喜びも大きくなるのだ。

マネージャーだった頃も、今のオタ活も、私自身が主役になることはなかった。でも、それが応援することの醍醐味なのかもしれない。


チームの成功は誰のものか ー 心理的一体感とリーダーの役割


推しの成功は、なぜか自分のことのように嬉しい。

オタ活をしているとよく感じることだ。有名な音楽番組にでた、バラエティで爪痕を残した、Youtubeの再生回数が伸びた。
そんな時「やった!」と心の中でガッツポーズをしている自分がいる。

  • 心理的一体感 … 推しの成功や成長を自分のことのように感じる心理。

心理的一体感とは,推しを自分の人生の理想として崇めて,推しと同じように考えたり,行動したりすることに喜びを見出すという次元
【心理的一体感(5)】
・推しはもはや自分のパーソナリティの一部である
・推しは自分の心の拠り所である
・推しの応援は自分の人生で大きな位置を占めている
・推し活をしているおかげで充実した人生を送れている
・推し活を行うことに誇りを感じている

アイドルに対するファンの心理的所有感とその影響について - 井上 淳子, 上田 泰 著

これは、ビジネスの世界でもよくある。
例えば、マネージャーがチームメンバーの活躍を自分のことのように喜ぶ感覚。「〇〇さんがプレゼンで評価された」「〇〇さんが顧客から喜びの声をいただいた」——こんなとき、自分が直接関わっていなくても、チームの一員として誇らしくなる。

推しの活躍を見届ける喜びは、仕事においても同様に、チームの成長を支え、成果を共に祝う喜びに通じる。ビジネスの場面では、単なる「個の成功」ではなく、チーム全体の成果を自分ごとのように感じることで、より大きな達成感が生まれる。組織においても、このような一体感がメンバー同士のモチベーションを引き出し、個々のパフォーマンス向上やチームの結束力強化につながる。

特に、リーダーやマネージャーにとっては、部下やチームメンバーの成長を「自分の成功」として捉えられるかどうかが、組織の健全な文化を形成する上で重要だ。
「自分が成果を出す」だけでなく、「誰かが活躍できる場を作る」ことに価値を見出すマインドセットは、長期的に見て組織全体の成長につながる


支え続けることで失うもの ー 責任感と燃え尽き症候群

グループが解散してしまった今、何を応援すればいいのか。そんな喪失感がじわじわと広がる。

推しのために費やしていた時間、情熱、そしてお金。応援することが私の一部になっていたからこそ、突然その対象がなくなったとき、ぽっかりと穴が開いたように感じる。

  • 心理的責任感 … 推しの成功のために自分が貢献してきたという感覚。

心理的責任感とは,推しを自分が育てなければならない,推しの人気を自分が高められるように努力しなければならない,そして自分にはそれができると考える次元
【心理的責任感(5)】
・自分は推しの人気を高めるのに何らかの影響を及ぼしたいと思う
・推しの人気がないと何か責任を感じてしまう
・自分は推しの活躍に何らかの影響を及ぼしたいと思う
・推しに対して何ができるかを常に考えている
・推しを育てているという意識を持っている

アイドルに対するファンの心理的所有感とその影響について - 井上 淳子, 上田 泰 著

私は心理的責任感が比較的弱い方のオタクだったと思う。それでもどこかに「推しに貢献できるよう数字を出さなきゃ」という気持ちがあった。
「Youtubeを再生しないと」「グッズを買わないと」「SNSで拡散しないと」と、数字に対する義務感のようなものが生まれ始めた

そうやって義務感を抱えている状態で、今回のような解散に向き合うとどうなるか。自分がもっと〇〇していれば、、、という感情が芽生えてくる。こうやってファンは暴走していくんだな。

退屈で平凡でただ漫然と生きるだけだった日々に光が差したような気がして、『この人を応援しよう』って決意したんだ
ーーーとある小説家のファンが、純粋な気持ちでトークイベントに参加しようとしたら、スタッフに追い出された。これは「おじさん」だから?
注目を集めた”被害者のおじさん”。実は、行き過ぎた言動や問題行動を起こす有名なファンだった。本当の被害者はどちらだったのか、、、、

「嘔吐」小川哲 -GOAT 2024 Autumn


仕事に置き換えてみよう。長年取り組んできたプロジェクトが終わったとき、大切にしていたチームが解散したとき、そこに注いでいた時間や努力が報われなかったように感じることがある。

特に、リーダーやマネージャーであれば、そのチームの成果を支えることが自分の使命であり、存在意義の一部になっていたかもしれない。「自分が支え続けなければ」と思うあまり、いつの間にか責任を抱えすぎ、気づけば燃え尽きてしまう。

かくいう私も、大切にしていたチームが解散した時に燃え尽きてしまい、そのまま退職した経験がある。

しかし、組織の成長や持続可能な成果のためには、「すべてを自分が背負うのではなく、適切に役割を分担する」ことが不可欠だ。リーダーとは、常に最前線で戦う存在ではなく、メンバーが自律的に動ける環境を整える存在でもある。推しの活躍を遠くから支えるように、組織においても「支える側の在り方」を問い直すことが重要なのかもしれない。


健全な応援とは何か ー ビジネスとオタク活動の共通点

応援し続けるためには、「心理的一体感」と「心理的責任感」のバランスを取ることが大切だ。

  • 一体感は大切だが、距離を取ることも必要
    推しの活躍に共感しつつも、すべてを自分の責任と感じる必要はない。仕事においても、プロジェクトの成功に尽力しながら、自分自身の心身の健康を守ることが大切だ。

  • 適度な責任感がモチベーションを生む
    責任感を持つことで、チームや組織に貢献しようとする意識が芽生える。ただし、その責任が過度になると、逆にストレスを生み出し、長期的なパフォーマンスを下げてしまう。

ビジネスシーンでも、自分の役割に誇りを持ちつつ、適度な距離を保ち、必要に応じてリフレッシュすることが、持続可能な成果につながるのではないだろうか。


結論:「推しは推せるときに推せ」

推しの解散を受け入れるのは簡単じゃない。でも、だからこそ気づく。推しがいたことで、私の人生にはたくさんの「応援できる瞬間」があったのだ。そして、それはアイドルに限らず、これからの人生にもきっと存在する。

アイドルも、アーティストも、アスリートも、アニメも、ゲームも、小説家も・・・引いては私たち自身も。誰もが永遠に同じ環境にいるわけではない。
だからこそ、好きなことを見つけたら、何かに好意を抱いたら、挑戦したいと思ったら、、、そんな時は迷わず踏み出して欲しい。

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