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消そうと思わない記憶

「そこから見えますか?」


寒さを感じる匂いと肌触り。
暖かい毛布を握って、枕を濡らすいつかの夜。僕は眠れなかった。過去の自分を指折り数えると、心が暗闇に呑まれ、挙句息するのをやめたくなってしまう。そんな夜だった。
本当に考えたってどうしようもない。同じことを考えては
同じ結末、結果を呼ぶ。


そんな時に、そばにいてくれる子が居たんだ。
僕より小さいけど、頭が良くて、僕を笑顔にしてくれる。
家に帰ったらいつも、出迎えてくれるし、すぐ遊ぼうと誘ってきたり、僕がご飯を食べ始めると、真似して同じタイミングで食べ始めたり。食べ終わった後は、すぐ寝てしまうけど、いつも足元で寝ていた。


そんな君がもう居ない。


君のいない生活の仕方を僕は知らない。
だからいつも以上に夜は震えてる。ずっと暗い夜なんだ。忘れちゃいけない存在じゃなくて忘れたくないし忘れられないからさ。もっとその小さい身体を撫でていたかった。
最期の君の姿はずっと忘れてないよ。
1月8日の朝3時ちょうど。一鳴きもせず、君は僕を見て、触ろうとしてくれた。僕は涙が止まらなかった。どんな夜よりも辛かった。
その日は僕の成人式でもあった。心配させないようにって、最期までいい子だよずっと。これからも。

同窓会から2次会へ。帰り道の朝は、お酒の力も借りながら
一人泣いた道。帰ったら君のもので散らかった部屋を見て
タバコに火をつけた。









「君の居ない生活の仕方を忘れたよ。」

心の中でしか呟けなかった。もっと生きてほしいなんて
呪いになってしまうんじゃないかなと思った。
覚悟をして一緒に生活していたけど、やっぱり寂しい。
ちょっとした物音で、まだ居るんじゃないかなとか思ってしまうくらい、僕は彼を求めていた。
今、居たらもう病まないって、元気で居るって約束できるのに。
「君は後悔していないかい?もっとこうしてほしいとかなかった?幸せだった?」
口があるのに言葉が発せないからわからなかった。
だから今でもたまに泣いたりするんだ。

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