海月になりたかった私
「はぁ。」
吐いた息を飲み込むことなく私は朝の電車に揺られる。
周りを見渡す限り、電子機器を見ている人ばかりだ。
人が多い。私は何故かそれが気持ち悪いと思ってしまった。
「海月になりたいなぁ。もう人間として居るのは嫌だな。」
心の中で呟いた。
そして、まだ読み途中の小説をゆっくり時間をかけて、
1ページずつめくる。
中身が気になる?そう、これは海月に関する小説なの。
正直、海月の事は何もわからない。
んじゃあなんで読んでるの?わからないから読んでるんだよ。
でも蓋を開けてみるとそれはまた興味深い。
私達人間と違って、彼らには「心臓」も「血管」もない。
「水管」はあるらしいけど、まぁ置いといて。。。
そんなこんなで私は学校の最寄駅に着いた。
でも、私の足は学校と真逆の道を歩いていた。
学校の真逆には海がある。そこを目指して歩を進める。
もちろん小説を読みながらね。
人にも信号にも車にも気付けないくらい夢中になって
読んでいる。
今から当たり前のことが起きるよ。
「バン!パリーン!!!」
わかるでしょ?何が起きたかなんて。
「何だろうこれ、、私の周りに人が沢山。あれ、私って。
そっか。そんなことより何言ってるのかわからあいよ。ろれふもまわらない。あぁ、眠い。赤い。」
ここでプツンと映像が切り替わるかのように、瞬き一つで世界が変わった。
「え、あぁ。そっか、私って元々海月っだったのか。」
そこは海の中だった。ひどく頭をぶつけたせいか、自分が元は何者だったのかすら分からなくなっていた。
まるで海月が人間の夢を見ていたのかと脳内で処理された。
私は人間になりたかったのか、?
「まぁよく分からないけどいっか。」
今の私にはそれよりもこの感覚がとても気持ちが良かった。
宙に浮いてる感じがとても良い。
「海の中で空を飛んでいるよ私。」と自分に話しかける。
こんなに自由に動けて、尚且つ綺麗だった。
綺麗なことが嬉しかった。
「なんせ私は、華のJKだからね。あれ、?いやなんで、
私は元々海月。てかなんで自分が客観視できているんだろう。」
果たして海月はここまで物事を考える生き物なのでしょうか?
何故かとても人間味を感じてしまう自分が少し怖くなってきた。
そんな事を思いながら泳ぎ続けていた。
夕日が水面を斜めに差し込む。
耳はないはずだし経験してる事でもないのに、カラスの鳴き声と懐かしいチャイムが聴こえる。
「私、帰らなきゃだよね。」
そう、私は帰らなきゃいけない。帰る場所などないけど。
ただひたすらに泳ぎ続ける。
それでも家は見つからない。またそれが私の恐怖心を擽る。
ないはずの耳がないはずの心臓、動悸を聞き取る。
「ドクンッ。ドクンッ。ドクンッ。ドクンッ。」
「ピッー。ピッー。ピッー。ピッー。」
「何の音。?」
全身で、機械音を感じる。脈の音ではない。
これは何の音か。
その瞬間眩しい光に目が覚める。
集中治療室
手には離すこと無くずっと持っていたであろう血で滲んだ
小説を握っていた。
「あ、そうそう。本の題名言ってなかったよね。海月に関することで終わらせてたけどさ、題名はね。」