夜長マコト

気ままに文章がかけたら。 今のところ虚構+本当の日記の散文を書いています。

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最近の記事

終業時間は夢の後_11月24日真偽日記

「怒ってます」 「はい」 両腕を胸の前で組、頬を膨らませ、ザ・怒っているホノカがいたので何となく正座しておく。 怒っている理由は多すぎて思い当たらない。さてどれだろうか。また靴下を丸めたまま置いておいたか、上着をその辺に置いてしまったか、れともお弁当箱に残っていたご飯粒を食べてしまったとか……。うーん、わからん。 「ところでなんで正座したんですか?」 「えっと、それはホノカさんが怒ってるからですかね?」 「私、リョウ君に、とは言ってないんですけども」 まさかの引っかけで

    • 祝日を祝おう_11月23日

      「お祝いしようよ、祝日だし」 そんな言葉に寝ぼけ眼をこする。いつの間にか起き抜けていたミハルはふんふんと鼻息荒く息巻いている。 いつもながら唐突だ。夢でも見たのかもしれない。 「祝うって何を?」 「だから、祝日」 「あー、えっと、それじゃあ……どうやって?」 「えっとね、まずはお赤飯炊くでしょ?」 「おお……本格的だな」 朝っぱらからとんでもない事を言い出した。赤飯って確か、作るとかなり時間がかかるはずだ。 眠いから寝たい。だって今日祝日だし。 「それでね、誕生日みた

      • 箸休めに甘いもの_11月22日真偽日記

        カタカタカタとキーを叩く音が響いている。調子の悪い空調の音がハーモニーを奏でる。……なんてオシャレに言ってみたものの、そこそこ不快だ。 「ねえ先輩、ここの空調、何とかならないんですか」 「なってたら直ってる」 「身も蓋もないんだから」 「うるせえよ」 そうは言うものの、先輩がキーボードを叩く手を止める様子はない。いつも通りだなあと思う。俺は先輩のこういうところが好きだし、尊敬しているのだ。指先がかじかんできたので、はあと息を吹きかける。 ここは職場近くにある先輩の家で、

        • 心は明日満たしましょう_11月21日真偽日記

          「……………………お腹すいた」 そう気づく時には大抵手遅れなくらい体が空腹を訴えている。窓の外を見ればとっぷりと日が暮れていた。さてここで問題になるのは、今が前回食べてから何回目の夜か、ということだ。 だがそんなことを考える頭を動かすための体力さえ底を尽きている。睡眠不足もあって目を閉じたら眠れそうだけど、そのまま死んでしまう可能性は否定できない。 「た、食べ物…」 握っていたペンを机の上に放り投げて這うように仕事部屋を出る。 すると、ふわりといい香りがした。ぐぎゅ

        終業時間は夢の後_11月24日真偽日記

          鼻歌は今日も聞こえてくる_11月20日真偽日記

          「ふっふんふふふ〜ん」 今日も鼻歌まじりに掃除をする。気分は素敵な魔法使い。サッとひと拭きするだけで何もかもがキレイに……なーんて。 新居に引っ越してきて一週間。未だに浮かれた調子が落ち着かない、 「ららら〜」 『ちょっとアナタ、いいかしら』 「うひゃあ!?」 急に声がして驚いてしまった。 ちなみに私は一人暮らし、悲しいかな恋人の類もいなくて、今日は来客もない。 そう、つまり。 「オバケ!?」 『はあぁ?失礼ね!あんな低俗なものと妖精を並べるなんて、歌が下手なだけじ

          鼻歌は今日も聞こえてくる_11月20日真偽日記

          空のウサギは黒く焼ける_11月19日真偽日記

          放置された公園のベンチに腰かけ、夜空を見上げる。吹き抜ける風の冷たさに身を縮め、カイロ代わりに購入したココアの缶を転がす。 「月が食べられるって表現、言い得て妙だよね」 隣でホットコーヒーを飲んでいたユウは、長い時間をかけて形を変える月を見上げながら言う。 今日は皆既月食の日らしい。それを知ったのは今朝のニュースで、じっくり見ることになったのは目を輝かせたユウに連れ出されたからに違いない。 確かに見上げる月は欠けていて、いつもと違う顔を見せている。けれどそれがどうしたと

          空のウサギは黒く焼ける_11月19日真偽日記

          目覚ましはぶどうの香り_11月18日真偽日記

          「聞いてよナオ。さっき凄いことがあってさ」 アカネはスライドドアを開けるなりそう言った。返事はないが、いつものことだと気にせずに中に入る。 「近くに歩道橋あるでしょ、雨の日に凄い滑るところ。  あそこでお婆ちゃんが困ってて。おっきい荷物持ってるの。  いやああるんだね、こんなテンプレなことって」 驚きだよ。なんて両手を広げてから、相変わらず返事のない部屋の主のことを無視して窓を開けた。澄んだ秋の風がふわりと入り込む。 風を受けて目を細めてから、部屋を彩っている花瓶に

          目覚ましはぶどうの香り_11月18日真偽日記

          次に繋げる痛み_11月16日真偽日記

          「はあ、はあ……」 息が切れる。 必死に鞭を打ち続けた体はボロボロで、体が千切れそうだ。 実際にどこかが千切れているのか、ぶちぶちと繊維の切れる音がする。 「まって、休憩を、」 悲鳴を上げてもどんどん前に進んでいく。 引きずり回されるような感覚に、どうにか足を動かす。 体が硬直して熱を帯びる。もうだめだ。いい加減どうにかなってしまいそうだ。 限界ギリギリのところで、ようやく解放された。 力を抜いて倒れ込む。全体が異様に熱くて痛い。今日は酷い強行軍だった。 痛む体を回

          次に繋げる痛み_11月16日真偽日記

          酔いがゆるめるもの_11月15日真偽日記

          「かんぱーい!」 と、グラスを合わせる。 最初はビール……なんてルールはなく、私はサングリアを、対面のルカは梅酒のロックで唇を濡らしている。 喉を通っていく甘みと酸味がブレンドされた冷たさは何者にも変えがたい快感を脳に伝えてくる。 「あぁ〜おいっしい〜」 「美味しいね」 ルカと一緒に飲むのは久々だ。社会人になってからは互いに忙しくてなかなか予定も合わなかった。 仕事の話や学生時代の友人の話など、話題には事欠かない。 「それであの時さあ、」 あのころは良かったと言うに

          酔いがゆるめるもの_11月15日真偽日記

          お使いしましょう喜んで_11月14日真偽日記

          「お使い系のゲームあるじゃん」 リオンが両手に荷物を持った状態で切り出した。 鼻息荒く聞いてほしいと息巻いているので僕は一応肯定しておく。 「まあ、あるね」 「あれって何が楽しいのかなって思ってたんだけど」 「うん」 「今すーごい楽しいんだよね」 ドサドサと置かれた荷物には頼んだものが入っている。 急にお使いやりたい!なんて言い出した時はどうしたものかと思ったけど、満足してもらえて何よりだ。 「次何いるっ?買ってくるけど!」 「え〜っと……」 テンション高いなぁと思

          お使いしましょう喜んで_11月14日真偽日記

          翌日の自分に期待して_11月13日真偽日記

          じわりと染み出すように、どこからともなく眠気が溢れてくる。 眠い。 そう自覚してしまえば全身が包まれるのは一瞬の出来事だ。今すぐ横になりたい。横になって、出来たら暖かい布団に包まれて幸せに眠りたい。 「ダメですよ。……とか言いたいところですが、最近は無理をさせると上に怒られるんですよね」 「なかなか大変だね、管理職さんは」 「そう思うなら原稿を早く仕上げてください」 「おっと、急に言葉が理解できなくなった」 「……」 「……」 沈黙が落ちる。 やがて担当編集のキヤマさ

          翌日の自分に期待して_11月13日真偽日記

          暖かいのは心から_11月12日真偽日記

          「蛇を首に巻くやつあるじゃん?」 蛇の話題を出しながら、ユアは亀のように首を上着の中に引っ込めながら横を歩くカホを見やる。 「ああ、はい。テレビで見たことありますね」 「あれって冬にしたら寒いのかな」 「ええと、考えたこともなかったですね……」 カホは真面目な顔で考え始める。む、と唇を尖らせながらどうなんだろう、と呟いている。白い肌は寒空に吹かれて赤くなっていた。 どんな話題でも真剣に受け取ってくれるカホを眺めるのが好きだった。 「蛇は恒温動物ですし、外気温と同じ程度

          暖かいのは心から_11月12日真偽日記

          穴_11月11日真偽日記

          人を呪わば穴二つ。 なら神様を呪った場合は、天から見守っているとかいう神様も、穴に入ってくれるだろうか。 「ツクシ、一緒に帰ろ」 下駄箱で靴を履き替えていると背後からそんな声がした。 振り向けば先生に睨まれている明るい髪色に、負けず劣らず明るい笑顔を浮かべたサヤが立っていた。 「おー、いいね」 私もニッと笑えば、サヤは「へへ、やったぜ」と言って並んでくる。 「珍しい。今日早いんだ?」 「そね。大会も終わったし、ちょっと休憩~みたいな?」 「そっか」 私達は並んで歩

          穴_11月11日真偽日記

          宇宙で1番沁みる味_11月10日真偽日記

          頭が痛い。ぎりぎりと輪っかで締め付けられているような感覚がする。 ああでも、晩御飯、作らなきゃ。そう思うのに体が沈み込んだベッドから立ち上がれないでいる。この間にも時間は刻一刻と過ぎていて、窓の外はすっかり暗くなっている。 「お姉ちゃん、大丈夫?」 とんとんと優しいノックの音とともに、目に入れても痛くない妹の声が聞こえる。心配させてしまっている。何とかしなければという気持ちがぐぐっとベッドから起き上がる気力に繋がりそうだ。 「大、丈夫~……」 のろのろ歩いてドアを開け

          宇宙で1番沁みる味_11月10日真偽日記

          素直な君が見たくって_11月9日真偽日記

          ――届いてしまった。 ああどうしよう。なんで買ってしまったんだろう。 ぐるぐる部屋の中を動き回りたい気持ちを抑えて、机の上に置いてある小さな瓶を見つめる。不思議の国でアリスが飲んでいたような、まるで玩具のような見た目をしている。指先でつつけば、たぷんと液体が揺れた。 ピンポーン。 「っおわあぁ!?」 心臓が飛び出たんじゃないかと不安になるくらい驚いた。 衝撃で小瓶が倒れたが、ガラス製ではないようで割れたりはしなかった。 インターホンが鳴ったということは、だ。 慌てて

          素直な君が見たくって_11月9日真偽日記

          異世界の癒し手_11月8日真偽日記

          「いでででで!!っ、なんだ!?やはり殺す気か!?謀反か!?痛めつけても何も出ないぞ!?」 「HPは減ってないすよー。団長さんもやっぱり凝ってますねー。ストレッチ大事っすよー」 「お前!っくそ!どこにそんな力があるんだ!?いだだだ!」 施術中は暴れないでほしい。 ガチガチに固まった筋肉を解しながら「力抜いてください」と付け加える。 そもそも事前に痛みが生じると説明してあるのだ。部下の人だって実験台と称して何度も受けさせているのだから、わかっているはずなんだけどな……。 「こ

          異世界の癒し手_11月8日真偽日記