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“Papyrus”

YouTube におすすめされて面白かったショートムービーの紹介です。7年前にアップロードされたものですが。

タイトルは「Papyrus(パピルス)」。売れっ子俳優のライアン・ゴズリングが出てるし、何だか深刻そうなシーンから始まるので映画の予告動画かと思って見たら、ものすごく本格的に作ったとてもアホらしいギャグ・ストーリーでした。

元は、アメリカの長寿番組「Saturday Night Live」用に制作されたみたいです。SNLについては、今まで名前は聞いたことはあったものの、見たことがありませんでした。でも、覗いてみると、他にも馬鹿馬鹿しいギャグのスケッチ(寸劇)に今をときめくティモシー・シャラメが出演していたりして、すごく豪華でびっくりしました(しかし、ティモシー・シャラメの方は面白くなかった)。

動画の後に脚本風に書いた日本語訳を載せているので、良かったらご覧になってください。


「パピルス」

ーー夜中の寝室、うなされ飛び起きる男性

                                         
(主人公の独白)まただ。もう過去のことだと思っていたのにまたあの悪夢が戻ってきたんだ。俺は一晩中眠れなかった。

ーー翌朝、台所

(主人公の独白)食欲もない、眠れない。

妻「どうかしたの?」

(主人公の独白)あれが頭から離れない。

男「何でもないよ」

妻「ああ、スティーブン! まさか、またあれなの? 嘘でしょ?」

(主人公の独白)もう何年も忘れていたんだ。それなのに、思い出してしまったんだ。『Avatar(アバター)』が、…あの世界中でメガヒットした映画が、「パピルス」のフォントをロゴに使ったってことを。

ーー精神科医のオフィス

精神科医「アバターって、あの9年前に出た映画の?」

男「そう、あの男は無造作に「AVATAR」の文字列を選択して、ドロップダウンメニューから適当にパピルスのフォントを選んだんだ。…まるで考えなしの子供が庭を歩き回って気まぐれに葉っぱを引きちぎるみたいに…」

精神科医「それで、あなたは今、続編がもうすぐリリースされるから不安になっているの?」

男「続きが出るのか?」

精神科医「ええ、その、耳にした覚えがあるわ」

男「デザインに変更は? 直したのか?」

ーーポケットからスマホを取り出して、ネットで続編のロゴをチェックするカウンセラー

精神科医「…同じように見えるわ」

ーー帰宅途中の車の中

(主人公の独白)なぜこんなことが罷り通る? あの男…プロのグラフィックデザイナーでありながら! 怠惰なのか? それとも人の心が無いのか?

ーー自宅ガレージで友人に映画のポスターを見せる男

友人「前にも見せられたけど、これはパピルスそのものじゃないだろう? もしかしたらデザインの下敷きにしたかもしれないけど、明らかに手直しされている」

男「あいつらがどんな変更をしたか知らんが……、足りないんだよ!!(激昂)」

ーー車の中

(男の独白)そして俺は今、かつて二度とするまいと誓ったことをやっている。ーーそう、奴の家の外に車を停めて見張っているんだ。奴の暮らしぶりを一目見てやろうと思って。

ーーガレージで酒を煽りながら

男「パピルスを目にするたびに考えちまうんだ」

友人「いや、そもそも他のどこでパピルスのフォントを目にする機会があるんだよ?」

男「シーシャ・バー、テキーラのグッズ、ノーブランドの茶葉…」

ーー場面変わって、グラフィックデザイナーの家の前を偵察するように車で通過する男。
窓辺に立ってこちらを見るグラフィックデザイナーに気を取られ、男は消火栓に激突し事故る。
近所の住民が家から飛び出してくる。

女性「オーマイゴッド! 大丈夫? 何が起きたの?」

男「ああ… 君はアバターのロゴを覚えているか?」

女性「ええ。原始的な感じだけど、同時に未来っぽさもあるやつよね?」

男「パピルスなんだ!」

女性「え、ええ」

ーー窓からこちらを見るグラフィック・デザイナーに向かい叫ぶ男

男「俺は貴様がやったことを知っているぞ!知っているんだからな!」

ーーグラフィック・デザイナーはニヤリと笑い、カーテンを閉める。


【終わり】


実は続編もあります。

 


ありがたくいただきます。