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がん保険は不要?日本人2人に1人はかかるのになぜ?
「2人に1人はがんになる」こんな広告を見たことありませんか?
確かに、がんは日本人にとって身近な病気。しかし、だからといってがん保険に入るのが正解とは限りません。本当に必要なのか、それとも別の選択肢があるのか、データと行動経済学の視点から考えてみましょう。
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30歳でがん保険に加入した場合のシミュレーション
たとえば、あなたが30歳で「年間5万円の保険料を払い、がんと診断されたら一時金で300万円もらえる」という保険に加入したとします。
がんになる確率は「一生のうち2人に1人」と言われていますが、年齢別に見てみると…
がんの平均発症年齢:男性 46.6歳、女性 43.7歳
死亡率が最も高いがん(肺がん)の発症ピーク:75~79歳
つまり、がんは年齢によってかかりやすい種類が違い、若くしてがんを発症する人もいるため、全体の平均が下がっているのです。
では、75歳で肺がんと診断された場合、これまでに払った保険料はいくらでしょう?
45年間 × 5万円 = 225万円
300万円の一時金を受け取ることができますが、45年間払い続けた225万円と比較すると、利益は75万円です。
別の選択肢:年間5万円を積立投資した場合
仮に、年間5万円(毎月4000円で計算)を年利5%で積み立て投資した場合、45年間でいくらになるでしょうか?
約784万円
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どうでしょう? もし「75歳でがんになったときの医療費を考える」という視点なら、保険よりも積立投資の方が10倍以上の利益があります。
45歳でがんにかかった場合はどうなる?
「でも、もしもっと早くがんになったら?」
15年間、年間5万円の保険料を払い、45歳でがんを発症した場合…
支払総額:5万円 × 15年 = 75万円 受取金額:300万円
つまり、利益は225万円。これだけ見ると、保険の方が得に見えます。
一方、年間5万円(毎月4000円で計算)を15年間、年利5%で運用していた場合…
約106万円
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投資の方が得かどうかは、がんになるタイミングによるわけです。
この場合、確かに保険の方がリターンは大きいですが、あくまで「たまたま当たった」だけとも言えます。事前に「自分は45歳でがんになる」と確定していれば保険が正解ですが、それは不可能。つまり、これは「ギャンブルに勝った」のと同じです。
なぜ「払った金額がもったいない」と思ってしまうのか?
ここで、10年間がん保険に加入していた人が「ここまで払ったのに、今さら解約するのはもったいない」と考えてしまうケースを考えてみましょう。
これ、サンクコスト効果という心理バイアスの影響です。
「もう50万円払ったし、解約したら損する気がする」
「ここまで続けたんだから、あと10年も続けよう」
でも、これは過去の支払いにとらわれて、将来の合理的な判断を阻害しているのです。
大事なのは、「これから先もその保険が自分にとって最適なのか?」を考えること。過去の支払いはどうしようもありませんが、これからの支出はコントロールできます。
がん保険の広告に潜む行動経済学のトリック
「2人に1人はがんになる」
このような広告を見たとき、人は「そんなに高確率なら、絶対に備えなきゃ!」と思います。
これ、フレーミング効果によるものです。
「2人に1人はがんになる」と聞くと、リスクが非常に高く感じる
しかし「40歳のとき、10年後の50歳までにがんになる確率は2%」と言われると、そこまでのリスクを感じない
同じデータでも、伝え方によって受け取り方が変わるのです。
また、「がん保険に入らないと危険!」という煽りは、損失回避バイアスを利用したもの。
人間は「得をすること」より「損を避けること」に強く反応する
だから、「がんになってお金が足りなくなるかも!」という不安を煽る広告が効果的
これらの心理バイアスを知っていると、冷静に判断できます。
がん保険は不要なのか?
ここまで、がん保険のデメリットや投資との比較を紹介しました。
でも、がん保険が絶対に不要と言っているわけではありません。
たとえば…
家系的にがんのリスクが高い(親が若くしてがんで亡くなっている)
貯蓄が少なく、突然の医療費負担が怖い
精神的に「備えがある」という安心感を持ちたい
こういう人にとって、がん保険は「安心を買う」ための合理的な選択になり得ます。
まとめ:あなたはどちらを選びますか?
年間5万円をがん保険に支払い、がんになったら一時金を受け取る
年間5万円を積立投資し、必要なときに使える資産を作る
どちらが正解かは、あなたの状況や価値観次第。
大切なのは、企業の宣伝文句や広告に流されずに冷静に判断すること。
「なんとなく不安だから保険に入る」のではなく、データと自分のライフプランをもとに最適な選択をしましょう!
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