「応援のこいのぼり」 木村研
りゅうくんのお父さんは、お医者さんです。お母さんは、看護婦さんです。
コロナウイルスが広がって、お父さんもお母さんも忙しくて家に帰れません。だから、りゅうくんは、ずっとおばあちゃんのうちにお泊りです。
学校がお休みになって、外であそべません。
「つなんないなあ」
と、窓の外をみていると、おばあちゃんがいいました。
「こいのぼりでも作ろうかね」
「こいのぼり?」
「ほら。おじいちゃんが買ってくれたこいのぼり、持ってこられなかっただろう」
おばあちゃんは、ポリ袋をだして、袋を何枚もテープでつなぎました。そして、油性ペンをだして、りゅうくんにいいました。
「さあ。これで、元気のいいこいのぼりをかいてちょうだい。ベランダで泳がせよう」
りゅうくんは、大きな目をかくと、
〈おとうさん、おかあさん、がんばって〉
と、お腹に大きな字で書きました。
おばあちゃんが、ベランダにつるすと、こいのぼりは気持ちよさそうに泳ぎだしました。
すると、お隣のおばちゃんが顔をだして、
「そうか。お父さんとお母さん、病院で働いているんだったね。応援のこいのぼりだったんだ。じゃあ、おばちゃんも作るね」
大急ぎでこいのぼりを作ってベランダにつるしました。
すると、向かいのマンションのベランダにも、いろんなこいのぼりが並びました。
りゅうくんは、うれしくなって、
「おとうさん。おかあさん。がんばってね」
と、大きな声でいいました。
応援のこいのぼりは、お父さんとお母さんが帰ってくるまで、元気に泳いでました。
(作者のことば)
自粛していて、つまんない。とばかり言ってないで、病院で頑張って働いている人たちのために、子どもたちと一緒に応援のメッセージを送れたらいいですね。