「一年生」 木村研


 ともちゃんは、一年生です、
 でも、五月になったけど、まだ学校にいってません。新型のコロナウイルスが拡大しているから学校がお休みになっているからです。
 お父さんとお母さんは、テレワーク。会社にいかないで仕事をしています。
「つまんないの」
 ともちゃんは部屋にもどると、田舎のおじいちゃんが買ってくれたランドセルも、机の上で元気がありません。
「じゃあ。学校にいこう」
 ともちゃんは、ランドセルをせおって、部屋をでました。どんどん廊下をあるいて台所を横切ると、お母さんがいいました。
「どこにいくの?」
「学校よ」「学校?」
「うん。一年生だもん。勉強しなくっちゃ」
 ベランダにでて、ランドセルから絵本をとりだすと、大きな声で読み始めました。
 すると、となりのベランダから、パチパチパチと、拍手が聞こえました。
「だあれ?」
「ともちゃん。じょうずですねえ。隣のおばあちゃんですよ」
という声が聞こえました。
 向かいの団地のベランダからは、
「もうちょっと聞かせてくれよ」
と、おじいさんが拍手をしています。
 その隣のベランダからは、赤ちゃんをだいたお母さんが、子どもたちも喜んで聞いていてるから、お願いしますと頭を下げました。
「いいわよ」
 ともちゃんが絵本を、大きな声で読み始めると、子どもたちが、ぞろぞろベランダにでてきました。

(作者のことば)
読み聞かせをしてもらうだけでなく、時には、子どもに読んでもらって聞くのもいいものですよ。最初は、「よむよんで」の短い話から、どうぞ読んでみてくださいね。

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