「カニの床屋さん」 木村研


 春の小川に、カニの床屋さんがオープンしました。
 カニは、じまんのはさみをチョッキンチョキチョキさせて、毎日、お客さんをまっていました。
 それなのに、お客さんは、だーれもきません。
 カニは、自慢のはさみを、チョキチョキさせて、
 「早く、お客さんこないかなあ」
と、外にでていきました。
 すると、おたまじゃくしが泳いできました。
 おたまじゃくしの大きなしっぽが、目の前をゆらゆらゆれていると、
 「じゃまだなあ」
と、はさみを、チョキン。おたまじゃくしのしっぽを切ってしまいました。
 カニは、大あわて、
 「ごめんなさーい」
と、穴の中に逃げこんでしまいました。
 だから、カニの床屋さんは、店じまい……。

 それから何日かたったある日、かえるになったおたまじゃくしが、
 「床屋さん、いつまでお休みするのかな」
と、ぴょんぴょんぴょんぴょん、池の外に飛び出していきました。

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