ジェットコースター悪党伝
恥ずかしながら、『雨月物語』も『春雨物語』もはじめて読んだのです。
読んだのです、と現代語訳くらいで偉そうに書くのも何なのですが。
特に『春雨物語』の中の「樊噲」という悪党話が超絶面白い!
石川淳の現代語訳が優れているのか、原文からしてそうなのかはわかりませんが、痛快無比のスケール感で、クソ悪党の人生を描き抜きます。
戸川純の『Not Dead Luna』という名曲を思い出します。
ありとあらゆる自殺の方法を試みて死ねなかった女が、急に恋に落ちて幸せになってガンガンに愛し合って、その男に振られて一人になって、ヤケクソで働いたら大金持ちになって、でもやがてそれも失って、でもいつも空には月が優しく光っていたね、みたいな歌詞の曲。
ジェットコースターのように浮き沈みをゴンゴン突き抜けていく推進力に唸る名曲です。
「樊噲」もジェットコースターです。
悪党・樊噲の悪事のスピード感がたまらない。人も馬もひねり潰すように殺しまくり、金を奪いまくり、やってることはエゲツないのですが、それをロードムービーのような軽快さで描いていきます。
石川淳の編集力なのか、上田秋成じたいの筆力なのか?
気になってしかたありませんので、速攻で原文も注文しました。
はやく確かめたいと思います。
(シミルボン 2018.2)
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