カマウチヒデキ(読む人)
本に関するコラム。
シミルボンに12回にわたって連載された「写真の本」の紹介コラムです。
読書感想文です
過去に書いた200字小説の自選集です
年を食って物忘れが激しくなった。最近のことは忘れても案外昔のことほど覚えているものだというけれど、程度問題であって、昔のことでも記憶は混乱する。だったら「鮮明な記憶」というのはいつの時期ならあるのか、という話なのだが、もしかしたらそういうのはなくても人は生きられるのかもしれない。すべての記憶は薄れ拡散し組み替えられて改竄されて、ゆっくり霧に溶けるようになくなっていくのだろう。それでもときたま、霧のように霞んだ記憶の底から、ぽっと浮き出してくる出来事もたまにある。 最近まで僕
写真というのはたしかにどこか特定の場所を写しているのに、写ったものは常にどこかよそよそしい貌をしている。見慣れた通勤路、見慣れた河川敷、見慣れた信号、見慣れたコンビニ。しかし写真になったそれらは必ずそれらの見慣れた記憶とはどこかずれている。 見慣れた西宮の光景が、初めて見たどこかのように写るかもしれないし、違う眼球から見た映像に見えるかもしれない。まぁあたりまえといえばあたりまえで、レンズという眼球から見てるからなのだが。 人が何かを「見る」とき、動員されるのは眼球だけでは