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『冷蔵庫を抱きしめて』荻原浩

''「直子はなんでも自分でためこんじゃうから。俺も言う。例えばほら、直子が前に、俺たちのこと、磁石みたいに相性がいいね、って言ってただろ。あれ、ちょっと違うなって、俺、ずっと思ってて、いつか言おうと思ったままずるずると」
「わたしたち、実は相性が良くないってこと?」
「そうじゃなくて。磁石がくっつき合うのは、S極とN極だからなんだよ。似たもの同士なんかじゃない」''

 「生きづらい」は、名前のつけようのない生の苦しみに使われる言葉だ。
 持論だが、生きづらい人間には共通していることがある。
 生活に不自由しているか。自分は不幸せか。2つの問いかけにノーと答えられる、しかし、どこか満たされない点だ。何か、どこかが欠けている感じ。足りない感覚があるのだ。
 足りない感覚は身近な他人との関係でじわじわと起こることもあるし、テレビから感じる社会の雰囲気であったり、他人にはとるに足らない自分だけの悩みであったりもする。
 「なんか足りない」としばらく思っていたら、これまたよくわからないネガティブな感情が爆発する。気持ちの津波みたい。その津波が病として体に生じたりもする。

 そう、『冷蔵庫を抱きしめて』は気持ちの津波について書いてあると思った。言葉にできない心の貧困は誰にでもあって、いろんな種類、大きさの生きづらさを抱える人がいることを気付かせてくれる。

 何か起こったわけではないんだけど、最近疲れてるな〜という方、読んでみて。短編たちが心の栄養になってくれると思います。

 ちなみに、好きな小説を6分読むとストレスが7割軽減する効果があります。読みましょ!

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