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今日の「ルンルン」

現代を代表する女流作家のひとり林真理子さんであるが、デビューはコピーライターだったというだけに、著作『ルンルンを買っておうちに帰ろう』は、タイトルも非常に秀逸なコピーだとつくづく思う。今日びほとんど使われなくなった「ルンルン」という擬態語は、末尾に「ルンルン♪」とつけたくなるほどに、気分が浮き立っている様子を見事に表現している。ごくたまに、ちょうど今日のような気持ちのよい夕暮れ時などに、「よーし、今日はいい気分だしちょっと良いワインでも買っちゃおうかな♪」というときなどにわたしはこのコピーを思い出している。そうよ、ルンルンを買っておうちに帰るんだわ、と。

改めて考えてみると「ルンルン♪」のパワーワードぶりがすごい。そもそもなんの品物にも代替できてしまうではないか。冷え冷えの缶ビールの人もいるだろうし、化粧品の場合もあるだろう。その人にとって心弾ませる物であるのなら、有形無形問わずなんでもござれなのだ。

著作のタイトルが意味する本当のところにならうと(すみません、内容を覚えていません…)、品物の暗喩ではないと思うのだが、戦利品を大事に両腕に抱え、バスに揺られて家路をたどっているときなどに「わたし、いま、ルンルンを買っておうちに帰ってるんだわ」と思うとなおのこと一層胸がときめいたりしている。

今、仕事である企画を着想し、来週早々にしかるべき方とお約束がとれたことで「ルンルンを買っておうちに帰ろう♪」と思ったのだが、この場合すでにルンルンを手にしているのにわたしときたら、ご褒美として何か品物を買おうとしているのであった。

photo by Mark Sebastian


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