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いま再びのクレア・アンダーウッド

  がりっがりに痩せて薄い身体が羨ましい。キレッキレのモードな服がどんなに似合うだろうに。「羨ましい」というからには、自分にその体型は備わっておらず、単純に決死のダイエットをすればそうなれるかと言えばならないのだ、ということはとっくに実証済みなのだった。骨組みとか肉の付き方とか、そういう問題が単純に体脂肪云々と違って影響するのだ。

 この何年かで、突如自分のなかでアメリカンブランドがヒットして、カルバン・クライン、ラルフ・ローレン、ブルックスブラザーズを買い集めてきたが、これがひも解くと極めて正解だったのだ。元々は、「もう装飾とか最低限でいい。シルエットがきれいでトラッドな、要するに普遍的なものしかもう要らん」という自己ムーブメントが到来したことに端を発し、次にドラマの「ハウス・オブ・カード」でロビン・ライト演じる女性像のキャリアファッションのミニマムな美が追い打ちをかけた。そして着てみるとわかるのだが、自分は日本で今主流のビッグシルエットの服よりもこうしたキャリアファッションの方がまだ合うのであった。しかしここで問題が浮上。


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 冬になるとどうしても着込んでしまうので、自分の最優先事項は防寒になる。だからシルエット以上に繊維の質の方が気になるし、薄着のシーズンに肌の露出があった部分がほとんど布に覆われると、途端に本当にもっさりとみっともなくなるのだ。わかっていてもまったく気にしていなかったこの10年ほど。「寒くなきゃいい」。これに勝てる動機が存在しなかったからだ。

 しかし、たまに登場する17年の付き合いになる知人がまたしても声高に糾弾してくるではないか。「あのさぁ、あなたの体形はそういう(※いま普通に店頭に出ているようなトレンド品)服は似合わないよ。肌を出す部分を考えないと、服を着ることがスタイルを悪くする典型」と。いつもながら普通、人が言えないようなことを突いてくる。遠慮がない。これが1度や2度じゃないのだ。会うたびに言われるとさすがに着るものを悩むようになった。「この人だけでなく、みんなもそう思ってるんだろうな」とだんだん何もかも敵!の気分にマインドコントロールされていく…。

 そんなときテレビで骨格診断なるものを観た。ええ、若い方の間では常識のようですよね。ぶっちゃけそういうカテゴライズに自分を投入するのが嫌いなので興味もなかったんですけれどもね、テレビをぼーっと眺めていたら目からうろこが落ちた。「え、なるほどね」。解決策がわかったのだ。そして、ずいぶん長い年数、冬のファッションの正解を見失ってきたことも思い至ったのだった。

 そして大改革を決行。一気にワードローブを刷新できないのでまだ波打ち際で遊んでいる程度であるが、とにかく「着ちゃいけないもの」がわかった。たとえば冬にあったかくバリエーションの楽しいタートルネックだが、私の体形ではタートル部分に厚みと丈がしっかりあって、折り返して首回りの長さが出るもののみがOK。いわゆる半端丈のハイネックはNG。

 それと重要なのが肩のラインがはっきりしているものがベスト。実際の肩より下の方、腕の方にラインが落ちたシルエットは完全に面積を無駄に広く見せて絶対に近寄ってはならない服であることを知った。いっぱい持ってるけどね・・。そして、全体的に身体のシルエットが出るものでないとダメ。ぴちぴちのボディコンシャスというほどでなくていいのだ、メリハリが失われなければ。とにかくゆるっとふわっとは鬼門。ああ、これだけでも本当に全然違う。胸の高さがあるので気にしてあまりシルエットが出ないものを選びがちなのだが、これがスタイルをとても悪く見せる服であることがわかった。

 問題はボトムス。丈問題や型問題(ペンシル、フレア、Aライン、ボックス、プリーツ…)は実はそんなに重要でなかった。ウエストからお尻半分あたりまでのラインがびしっと出ている縫製であればOK。要するにウエストからパターンがひとつだとダメ。マーメイド型とかはとても相性が良いようだった。この辺まで理解が進み、ちょっとずつそろえたり整理したりを開始している。そして週末、映画「スキャンダル」原題はボムシェルを観た。FOXテレビで実際にあったセクハラ問題を扱った映画で、シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マ-ゴット・ロビーたち女優陣が熱演している。

 好き嫌いはおいておいて、この映画を観ていて思った。シャーリーズが演じるメーガン・ケリーのファッションとかそのものなのだ、やっぱり。「ハウス・オブ・カード」しかり、アメリカのキャリアファッションが長々と私が上記で解説した問題点をクリアしているのだ。

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 はい、一周回りました笑。やっぱりこれが正解でした。

  キャリアファッションをずーっとつまらないファッション、と決めつけて生きてきた期間がとても長かったです。しかしここ数年の個人的トラッド回帰からの自分の体形に合うファッション再考を経て、キャリアファッションの絶妙なカッコよさと色っぽさに開眼しました。そりゃ突然のですます調にもなります。

 ずいぶんと長いこと、世の中のファッションの流行に体を合わせるために四苦八苦してきてしまったけれど、それがちっとも自分には似合わずむしろみっともなく見せていたという悲劇。そしてたどり着いた、簡単な公式にしてしまうならば、海外ブランドのキャリアファッションが自分の体形には合うという発見。さらには年齢がいって、存在感に迫力が(老化ともいうかもしれん)加わったことで、キャリアファッションは極めたらたぶん面白くなると思う。

あとは耳と胸がずきずきと傷む、かつてのボスが某敏腕PRの女性に言われて自己改革を開始したという言葉を改めて自分に与えることで戒めたい。

「40歳を過ぎてからみっともない身体でいるということは、出世して接待ばかり受けて美酒美食に明け暮れています、と宣言するようなもの」。

 要するに「接待なんか受けてないで、実直にもっと働けよ!!」って意味と、「実際接待を受ける立場である以上は、節制して体を絞れや!!」っていう二つの意味があると思います。元ボス(男)はこの言葉に開眼し、以来20年以上パーソナルトレーニングで体づくりをしていて、見事な美しい体形に磨きをかけている。

 さあ、今回こそ言い逃れはやめて、この言葉に向き合おう!

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