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エオルゼア福寿録

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FF14の自機小説を溜めて置くところ。
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呼び声の柔らかさ

呼び声の柔らかさ

前書:これはなんですか?

呼び声の柔らかさ1

 ニムファーレには子供時分の記憶がない。気が付いた時にはザナラーンにいた。服のほかに唯一持っていた、血塗れの枝切ナイフに”NIMPHALE”と記してあったし、傍にいた大男にはニムファーレと呼ばれた。ニムファーレはこれは自分のことだと思った。当時既に歩けたし走れたし、何より立派な少年だった。まともなヴィエラならもう里を出ていてもおかしくない年頃だった

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祝いの朝〈あした〉

祝いの朝〈あした〉


前書:これはなんですか?

本編『祝いの朝』

 エールポートに雨が降っています。フレカニ・チライキナが広場から埠頭に目をやると、商船が停泊しています。それも二隻も。その大きさといったら、まるでお城のよう! 船窓から船室の明かりが漏れ出でて、月星の代わりに海を照らしています。甲板の上ではゼーヴォルフやララフェルの人たちが懸命に働いています。
「帆布もっと持って来い!」「樽はいい! 酒に雨を入れる

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薫香とカソナード

薫香とカソナード


前書:これはなんですか

本編『薫香とカソナード』 黒衣森に雨が降る。月星は分厚い雨雲の褥に籠り、辺りは下草一叢見えぬ濃きインクの如き闇。その闇を抉り取るようにぼうっと一つ、朱い光が灯った。フレカニ・チライキナが掲げたランタンだ。ランタンは彼女の――ルガディンの――足捌きに合わせて揺れている。そして一息分、灯りは止まり、また揺れだす。今度はやや忙しなく。
(軽率だった)とフレカニは思った。
 背

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