カワウソの行方を子どもが教えてくれた話
「かーちゃんて、どんな話かいてんの?」
と、電気を消した寝室で小5の次男から聞かれた土曜日の夜。
思いがけない突然の質問に、
出来心でやった万引きが見つかったような(未経験)気持ちで、
「どんな……?しいて言えば、へんな……?」
と、うろたえながら答える母。
「へんな話って、どんなー?」
次男と長女から楽しげに質問を重ねられて、
両脇を抱えられてスーパーの事務室にずるずる連行されていくような(未経験)気持ちで、
「レントゲン写真をバキバキにして、こわす話……?」
と、しどろもどろ答える母。
「レントゲン?なんでこわしたの?コッパ?」
「バキバキwww」
勝手に想像して勝手にウケてる子どもたちに、
事務所のテーブルに盗った超熟と魚肉ソーセージをこれ見よがしに並べられているような(しつこい)気持ちのまま、
「あの、おもしろい?」と、
オモロいかどうかだけはしっかり確認しようとする母。
子どもたちは私が創作狂であることを知っていて、
応募したり賞をいただいたりしてることも知っていて、
ノート(note)に物を書きつけてる時は話しかけても8割スルーされることも知ってます。
でも、書いた物を見せたことは一度もなかったし、
そもそも子どもに読ませるという発想自体が、
私の中に1ミリもありませんでした。
創作してる自分がなんとなく恥ずかしい。(だって何者でもないのに)
ってフェーズはかなり昔に通り過ぎたと思ってたけど、
完全には吹っ切れてなかったのかもしれないです。
常識を持ち合わせてる、ちゃんとした普通のお母さんになりたい。(なぜなら自分が変だってよく分かってるから)
ってフェーズもかなり前に通り過ぎた、
と言うか難しすぎて挫折して落ち込んでたら案外みんな同じ気持ちで「お母さん」やってるんだと知って肩の荷が下りた、はずだったのに、
心のどこかでほんの少し、憧れ続けてたのかもしれないです。
でも、今度こそ本当に、そういうの心底どうでもいいかもしれない。
そんなわけで、
「えーと、よかったら、かーちゃんが書いたもの音読してもいい?」
寝室の暗闇に突撃するような気持ちで提案すると、
「いいー!聞きたーい」と盛り上がってくれる子どもたち。
だから音読しました。
スマホでnoteを開いて、
動物が出てくる話なら楽しいかなとモルモットの話を読んでみたら、
「ポンデリングかわいい」って大爆笑してくれました。
「つぎは?」って言われたからテナガザルの話を読み上げたら、
「こわーーい」ってゲラゲラ笑ってくれました。
「つぎは?」
懲りずにおかわりを所望してくれたので、
長めだけどカワウソの話を読んだら、
「おしまい」と言った瞬間「えっ」と声をあげた子どもたち。
「なんでカワウソいなくなっちゃったの?」と呆然とした声で聞いてきた子どもたち。
私「え…なんでって。 なんでだろう。カワウソは、花金楽しめなかった。とか?」
次男「あと分かんない事がもういっこあるんだけど、なんでお金捨てちゃったの?」
私「なんでだろう。ごめん、わかんない。いやになっちゃったのかな。必要ないと思ったのかな」
長女「ねー、はなきんてなに」(←すでに2回説明済)
私「金曜日の夜のこと。次の日が休みだから心置きなく酒が飲めて嬉しいなっていう金曜日のこと」(←小1への説明)
長女「はなきんでカワウソいなくなっちゃったの?」
私「うん、いなくなっちゃった」
長女「おかねすてて?」
私「うん」
長女「キイだったらすてないけどね」(←即答)
私「うんそうだろうね」(←即答)
「……」「……」「……」
寝室がいい感じに静まり返ったので「おやすみ」と声をかけたら、
「おやすみぃ♡」
とキュルンとした声を返してきた長女に続いて、
「カワウソ……か……かわいそう……」
って、
長い沈黙をやぶって涙声絞り出して感想を述べてくれた次男。
……ダジャレ……じゃないよな?
(※うちの子どもたちはしょっちゅうダジャレ対決をしています)
「もしかして泣いてる?」
って確かめると、
「だって……みんながたのっ、たのしんでるのに……カワウソだけ仲間に入れなくて、たいやき食べ……て、それで川で一人ぼっちで……ゥゥ、グゥゥゥゥ」
って呻きながらガチ泣きの次男。
かわいい生き物が絡んだときの感受性やばいな。
すみっこぐらしを偏愛してる次男に心の中でツッコみながらも、
なんか、嬉しくてありがたくて、私までうっすら涙が出てきました。
「そんなふうにお話聞いてくれてありがとう」ってお礼を言って、
おやすみを言い合って寝ました。
翌朝、起きてきた次男が「おれ昨日カワウソの夢見たよ」って言うので、
ペラペラ喋り出そうとするのを遮って、
「それ、書いてほしい」と頼みました。
カワウソの行方は、
聞くのではなく、
読んでみたいなと思ったからです。
いいよー!と言って、すぐに2行の物語を書いてくれた次男。
A4のコピー用紙に書かれた次男の文字の向こうで、
ふたたびカワウソが歩き出すのを見たら胸が熱くなって、
これだから創作はやめられないんだって思いました。
カワウソがきちんと辿り着いたのを見届けたら、
私は何者でもないのではなく、
最初から私という者なんだと、そんなふうに思えてきました。
よかったら、次男が書いてくれた物語の続きを読んであげてください。
(誤字はそのまま転記してます)
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つかれきった かわうそは、かわうそだけが行けるかわうそ王国に帰えって行ったのです。
かわうそは そこでトランプをしたり うのをしたり みんなで食事をしたりして、花金を楽しみました。