『批判』と『反対意見』は全く違うけど、区別できていない人が多い。という話です。
『批判』と『反対意見』の違いは何か?
感覚的には分かるし、「いや、自分は批判なんてしない。ましてや、会議で批判することなんてない。」と思っている人がほとんどだと思います。しかし、自分では「ためらわずに反対意見を率直に述べた」と思っていても、実は『批判』だったりするかもしれません。
『批判』と『反対意見』の違い。
例えば、こんなやり取りです。
新型コロナウイルスの影響で、東京オリンピック延期の可能性について、JOC会長 森喜朗さんの記者会見で、
JOC会長 「現時点で、延期は考えていない。あくまで予定された日程で開催するために準備を進める。」
と述べました。
この発言に対して、
コメンテーターAさん 「大丈夫でしょうか?国内感染者は1,000人を超え、感染者数がどんどん増えている。他国では移動制限もしている。そんな状況で『延期はしない』『あくまで予定通り』というのは、リスクマネジメント能力を疑う。この世代の方は、『リスクマネジメント』というのを分かっていない人が多く、JOC会長としての資質を疑いますね。旧日本陸軍の命令系統を彷彿させます。この発言は許せないですね。」
コメンテーターBさん「私は、現時点で延期を検討すべきだと考えます。国内感染者数は1,000名と報告されていますが、一部の疫学専門家によると潜伏期間の長い感染症の場合、実際の感染者数は報告よりも10倍くらい高いことが多いと言われています。また、今回の感染症はシンガポールやバンコクなど気温の高い地域でも流行しているので、季節性に収束するとは考えにくい。オリンピック開催期間の8月に大流行する可能性も否定できないので、具体的な延期プランも練っておく必要があると考えます。」
コメンテーターAは『批判』で、コメンテーターBは『反対意見』です。
Aでは『延期はしない』といったJOC会長の発言に対して、『リスクマネジメント能力がない』『資質がない』とJOC会長の能力について批判しているに過ぎず、『延期すべきか否か』について自身の意見は述べられていない。
一方でBでは、『現時点で具体的な延期プランを練っておくべき』としており、『オリンピックを延期すべきか否か』について述べている。統計データや専門家の意見などを踏まえて、自身はこの問題に反対なのか賛成なのかを明確に表明している。
このように、批判は、『相手の発言内容から、相手の能力、人格や人柄を憶測で決めつけて否定すること』であり、問題の本質には触れられていないことが多い。また、批判している人のスタンスがはっきりしない事が多い。結局のところ『あなたは、反対なの?賛成なの?』が明確でない。何より、言われた側は不快である。
反対意見は、自分とは異なる意見を認めつつも、自身のスタンスとその理由を明らかにしている。自分は「賛成だ。なぜなら~」あるいは「自分は〇〇という意見には反対だ。なぜなら~」といった具合だ。あくまで問題の本質に言及するに留め、間違っても自分とは意見が異なる相手の能力や資質などを指摘したり、攻撃したりはしない。基本的には、議論の相手が不快になることはない。
『批判』をせず、しかし『反対意見』は躊躇なく述べられると信用度は高い。