よもぎと小さな友だち 3
そこへ着くまでに、
君は凍えやしなかったかい?
²³
²⁴
それとも、
鳥たちと一緒にいたから、雲の上を飛んで来たんだろうか。
²⁵
「迷子になっちゃった」
洞窟の奥を眺めていた君は、
ぼくに気づくと困ったように頭をかいた。
²⁶
道案内なら任せて。
君は差し出したぼくの手をぎゅっと握った。
ケープを羽ばたかせて、岩肌に沿いながらすいっと飛び上がる。
なんてことはないんだよ、いつものことだからね。
²⁷
ハイタッチをしてくれるほど君は困っていたし、
とっても喜んでくれた。
²⁸
今度は君がぼくをおんぶする番。
君の肩は僕のおしりにぴったりで、絶対落ちない自信があるよ。
君はおとなを探していたけど、もう探すのはやめたのかな。
²⁹
崖の先には大きな洞窟が広がっていて、
ここにはいろんな生き物が暮らしている。
海月に茸に鳥の群れ。蝶々もいるよ。
³⁰
そして大きなお魚さん。
静かな洞窟に大きな鳴き声を響かせて、雲の海を泳ぐんだ。
「あの子を飼いならせるとおもう?」
あんなに大きい子が、ぼくらの言葉を聞いてくれるだろうか?
³¹
君は探検してる途中だったね。
二人ならどこへでも行けそうだ。
「探検て、そんなに難しいものじゃないな。
住む場所を探すとなるとそうもいかないけど。」
海月たちはね、聞こえないくせに大きな声で。
それでいてみんなで歌うのが大好きなんだよ。
³²
洞窟の奥には蝶々のすみか。
君は大喜びで蝶々の群れの中に飛び込んで、
前に居た星のことを少しだけ教えてくれた。
³³
「上に何があるか、見に行こう!」
君の笑い声につられて、蝶々たちは喜んでぼくらを押し上げる。
こんなに高くまで来ちゃった。
上に、上に、どんどん昇ろう。
ほら、あそこが出口だよ。
³⁴
君が座ったので、僕も座る。
そしてぽつぽつと君が話しだした。
「僕が知ってる先生は、花のにおいをかいだこともないし
星をながめたこともない。
だあれも愛したことがなくて
してることといったら、足し算ばかり。
そして日がな一日、なんども口ぐせに言うんだ。
『大事なことばかりで、いそがしい、いそがしい!』
それでいばりくさってるんだ。
でも彼はひとじゃなくて、」
あはは!それはたしかにキノコだ!
³⁵
「楽しかったね!」
弾むような気持ちで僕らは出口へ向かった。
けれど君はなんだか真剣な顔をしてて。
なんだかむつかしい言葉を残して、
君は渡り鳥たちと一緒に、光の方へゆっくり飛んで行った。
またね。
³⁶
バラさん、今日は友だちと洞窟を探検したよ。
彼は友だちを探していたけど、それは君のことなの?
ぼくがそう尋ねると、
またバラが眩しいくらいに輝いて、ぼくを思い出で包んだんだ。
³⁷
どうして君たちは、
嬉しそうなのに、
寂しそうなんだろう。
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※補足のきのこ