よもぎの空飛ぶお手伝い 最終回
どこまでも繋がる風の街道。
すっかり元通りになって、おしゃれさんも上機嫌。
これから賑やかになるんだろうね。
束の間の穏やかな時間。
せっかくだから、ぼくとおしゃれさんと鳥さんでうきうきおさんぽ。
ぽかぽか陽気でハイキング日和。
だけど誰かさんはなんだかそわそわ。
そうそう、ぼくはお昼寝スポットを探しにきたんだ。
おしゃれさん良い場所知らない?
日当たりが良くて、景色がきれいで、楽しい夢が見れそうな場所だと最高なんだけど…。
そんなお話しをしていると、
あ、誘導手さんだ。こんにち…
あれれ?行っちゃった。
なんだか忙しそうだね。どうしたんだろう。
のんきなぼくらへ、誘導手さんがもうっ!と痺れを切らして教えてくれた。
ぼくの後ろに何かついてる?
振り返ったらいつものきれいな街道の景色…と思った瞬間。
ぼくが目を瞑ったから…なんて事はない。
あんなに明るかった街道が真っ暗になった
…………ぼく、この風景と似た場所、よく知ってる。
このライトも鳴き声も、忘れるなんて、できっこない。
ぼくは震えて、自分でも気づかないうちに縮こまっていた。
でも、それどころじゃない。震えを抑えながら、周りを見渡す。
街道を囲む嵐の中、岩も鳥たちも一緒くたに掻き回されている。
助けなきゃ
さっきまで震えていたはずなのに。
ぼくはケープを勢いよく広げて、嵐に飛び込んだ。
何度も岩にぶつかりながら、強風に翻らないよう、鳥たちを見失わないよう、街道を駆ける。
助けなきゃ、助けなきゃ、
ぼくの体は特別丈夫みたい。
アフロも上に乗ってる鳥さんもケープもみんな無事だよ。
助けた鳥たちも大丈夫そう。
けれどまだまだ安心はできなくて。
大きな岩が浮島の方へ飛んできて、
間一髪!近くの岩肌にぶつかった。
けれど…。
大きな岩に街道が塞がれ、風も止まってしまった。
それに飛んできた岩にくっついていた蝕む闇にマンタや鳥たちが囚われている。
楽園から大マンタが来てくれた。岩を砕いてくれるって!
けれどこのままだと鳥たちまで巻き込んでしまう。
まずは、みんなを助けなきゃ。
彼らを逃すと、マンタが合図するかのように鳴いて、
ドゴーン!!!
大マンタが岩を壊してくれた。
まだまだ奥にも、同じように街道を塞ぐ岩や蝕む闇に捕まった光の生物たちが。
ぼくが彼らを逃して、
大マンタが岩を砕く。
だんだん息があってきたよ。
ドーン!!!
砕かれた岩は雲の底へ落ちていく。
みんなが羽ばたき起こした風で、街道を覆っていた闇は吹き飛んでいった。
おしゃれさんが戻っておいでと、手を振ってぼくを呼ぶ。
広い袖が風を拾って大きくなびき、その姿はまるで翼を広げたぼくらの様。
大きな浮島に帰ってきて振り返る。ぼくの心はとってもハッピー!
あんなに怖かった景色は元通り!
帰ってきた風が、カランコロンと風鈴を奏でる。
それに、いろんな地方から精霊さんたちがやってきた!
とっても賑やかで、キラキラで。
これがかつての風の街道なんだね。
精霊さんたちも、大満足。
ワクワクドキドキなひと時をありがとう。
さて。
お手伝いはこれで終わり。
でも、ぼくはまだやる事があるんだ。
浮島よりもーっと高い場所、ここはどうだろう?
うんうん、賑やかな街道を見渡せるし、日当たりも良くて、お花もきれい!
ここなら素敵な夢を見られそう。
それではさっそく。
ぼくはふかふかの草はらに、ごろん。
遠くに聞こえる鳴き声に風鈴の音、さわさわ揺れる小さなお花。
自慢のアフロの上でくつろぐ鳥さんの温もり。
みんなに包まれたぼくの体は、だんだんほかほかぽやんとしてきて、
心地よいまぶたの重みにちょっとだけ抗いつつ、ゆっくり目を閉じた。
おわり。
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