読書日記『四月になれば彼女は』
本を通じて自分の成長と時の流れを知る
そんな体験をさせてくれたのがこの小説だ。
確か、発売された当初にこの小説を読んだと思う。
まだ大学に入りたてで、ラテンアメリカ熱に浮かされていた私は、
ウユニ塩湖が美しく描かれた表紙に惹かれこの本を手に取った。
残念ながら、当時はこの小説に登場する人物に共感できず、胸が苦しくなって読み終え、その後、引っ越した際に手放してしまった。
年月を経て、なぜか最近、その本がふと読みたくなった。
過去の苦い記憶とわくわく感と共にページをめくる。
不思議と、どの登場人物にも共感を覚え、理解できるようになっていたのだ。
なぜ、ハルが昔別れた恋人に手紙を出したのか、なぜ主人公と弥生はあのような行動をとったのか、奈々がなぜあれほどまでに頑なに自身の主義を貫けるのか。
8年ほど経ちその間に様々な経験をし、今までに持たなかった感情を持つ中で、この小説に出てくる登場人物の思いがあの時、そして今を生きる自分に重なりはじめたのかもしれない。
この読書体験を通して、私はちょっとずつコンフォートゾーンを抜け出し、
自分自身の思いも考えもうつろいただよいながら前に歩みを進めてきたことを図らずも知ることとなった。
また、8年後この小説を読んだときに、どういった感情を抱くのか、
その時を楽しみに、日々の研鑽に励みたい。