盗塁阻止率だけで盗塁阻止を語るな!捕手の''ここ''を見ろ!
昨年の日本シリーズで、ソフトバンクの甲斐が6連続盗塁阻止を成し遂げ、''甲斐キャノン''という言葉が日本中で話題になった。
盗塁阻止とは、捕手の見せ所であり、見ていて気持ちいいものである。
そこで今回は''盗塁阻止''というのをテーマに考察していこうと思う。
ポップタイム
''ポップタイム''という言葉を聞いたことはあるだろうか?ポップタイムとは別名2塁送球タイムのことで、捕手が捕球してから2塁にいる野手に送球が到達するまでの時間のことである。
ここで昨年2018年の平均ポップタイムランキングを見てみよう。
※Data Stadiumによって算出された15選手が対象
NPBの平均は1.95秒なので平均より速い選手とそうでない選手で色分けをしている。
これを見ると、上位は甲斐や梅野などといった強肩揃いになっている。強肩故に野手に到達するまでの時間が短いわけだから、当然といえば当然である。
1つ気になったのは、''強肩''と言われてる小林が平均より遅いということである(後で触れる)
盗塁阻止率
次に、捕手の盗塁阻止を評価するうえで、よく用いられる盗塁阻止率について見ていこう。まずは昨年2018年の盗塁阻止率ランキングを見てみよう。※対象を先程と同じ選手とする。
これを見ると、先程同様で甲斐、森、田村、梅野といった選手が上位に入ってくる。そしてセ・リーグで3年連続盗塁阻止率1位の小林も3位につけている。
しかし、これだけで本当に盗塁阻止について語れるのか?
ここでもっと掘り下げて見ていくことにする。
ポップタイムと盗塁阻止率
ここで、先程見た2つの数字はどんな関係があるかを見てみよう。
相関係数は-0.62で、負の相関である。ポップタイムが速ければ速い選手ほど、盗塁阻止は成功しやすいというのはほとんどの選手に成り立つ。
盗塁阻止のメカニズム
盗塁阻止は守備側において、どういう時間分けがなされているのかを見てみる。
①クイックスロータイム
投手がセットポジションから動いて、投球し、捕手が捕球するまでの時間。
②ポップタイム
捕手が捕球してから2塁にいる野手に送球が到達するまでの時間。
③タッチタイム
野手が捕球してからランナーにタッチするまでの時間。
この3つに分けることができる。
盗塁阻止は捕手だけの責任ではないというのはよく言われてることである。
①クイックスロータイムは1.30秒以下で速いとされている。
②ポップタイムは平均1.95秒で、1.90秒を切ると速い。
③タッチタイムは平均0.20秒前後とされる。
①~③を足し合わせたタイムは平均3.6~3.7秒で、そのタイムをいかに短くするかが盗塁阻止の鍵になってくる。
ここで整理しておきたいのは、①~③の時間が誰に依存しているかということである。
①のクイックタイムは投手である。
②のポップタイムは捕手と投手である(捕手の方が割合は大きい)
投手の投げる球種であったり、コースであったりでポップタイムは変わってくるので、投手も関係してくる。
③タッチタイムは捕手と野手である。
捕手のスローイングの正確性によってタッチタイムは変わってくる。野手のタッチ技術も少し関係してくる。
盗塁企図数
次に、盗塁企図数について見ていこう。
ここで盗塁企図数/9という指標を用いる。盗塁企画数/9とは、9イニング(1試合)捕手として出場した場合、企図される盗塁の数を表している。まずは盗塁企画数/9ランキングを見てみよう。
※守備イニング300イニング以上到達している捕手を対象としている。
これを見ると、小林が1位となっていて、他球団は小林の肩に警戒してるようだ。
盗塁阻止率があまり高くない會澤が2位と意外な結果にはなったが、上位のほとんどは盗塁阻止率も高い。
小林の凄さ
小林はポップタイムが平均よりも遅いのになぜ3年連続盗塁阻止率No.1なのか?
ここで先程示した盗塁阻止における3つの時間分けを思い出してみよう。捕手が依存している時間は②ポップタイムと③タッチタイムである。小林の場合、②ポップタイムで遅れをとっているため、③タッチタイムで挽回していると考えられる。具体的に言うと、スローイングの正確性である。小林の送球を見ていると、ほとんどがベース上の野手がタッチしやすいところにコントロールされていてることに気づくと思う。これが高い盗塁阻止率に直結してきていると予想する。
※スローイングの正確性を他選手と比較するには、野手のタッチタイムを球団別に比較したら考えられそうである。(データを所持してないのでここでは省く)
次に小林は他にどこが優れているか?
→先程の表にある通り盗塁企図数の少なさである。
盗塁を阻止するには、盗塁をしてきた時に刺すということ以外に、盗塁をそもそもさせないというのがある。小林には抑止力というものがある。
この抑止力の変化を小林の具体的なデータを元に見ていこう。
これを見ると、盗塁企画数/9は2016年から2017年を境に下がってきていることが分かる。
小林は2016年、正捕手として1年マスクを被り、セ・リーグトップの盗塁阻止率をマークした。これにより、他球団は小林をマークし、盗塁をしようとする機会がどんどん減っていったと言えそうだ。抑止力は盗塁失敗のイメージを植え付けていけば、どんどん上がっていくのである。
そして、盗塁阻止率も下がってきているのも事実である。これは何故か?
マークした上で、小林から塁を盗もうとする選手は、盗塁技術の高い選手だったり足が極めて速い選手であるからである。母集団の選手のレベルが上がっているため、小林の盗塁阻止率は下がっていると考える。
今後の展望
小林について触れてきたが、今後甲斐も小林と同じような感じになると予想する。
昨年の活躍で他球団からのマークは厳しくなるため、甲斐の盗塁企図数は減少していくだろう。その一方で、パ・リーグの強者が''甲斐から盗塁を決めてやろう''と奮起し、盗塁阻止率は下がってしまうのではないかと思う。
まとめ
・ポップタイムと盗塁阻止率は密接な関係がある。
・盗塁阻止は3つの時間で構成される。
・抑止力を持った捕手は強力。
・肩の強さスローイングのバランスは大切。
・小林の盗塁阻止は色んな意味で凄い。
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