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困ったら掃除で運気UP⇒ずっと掃除すればええやん⇒手術室の清掃バイトでプチ悟りを開いた

といった流れで、病院の手術室を清掃するアルバイトをやったことがあります。

この仕事で清掃するものは、血まみれの床や手術道具、飛び散った患者さんの骨や肉です。

キモチワルイですか?コワイですか?



そうかもしれませんね。

しかし、衛生基準が厳しいことを除けば、やること自体は普通の清掃と変わりません。何よりも、この仕事には大切なことを教わりました。

仕事内容の説明とあわせて、詳しく紹介していきます。


何をする仕事なのか?


主な業務は「手術室を清掃して、次の手術ができる環境を整えること」です。


手術室には使用スケジュールが組まれているため、手術と手術のすき間時間に清掃したり、必要な医療機材をセットアップする必要があります。

私の勤めていた病院では、12部屋ある手術室を6~9人のスタッフで分担して清掃していました。

例えばこのスケジュールだと…

ある日のスケジュール

だいだい色が清掃可能時間です。


要するに、手術が終わったら次の手術までに準備を済ませろ、ということです。


予定が詰まっている場合には、清掃の持ち時間は一件ああり5~10分程度です。人員を集中させて全作業を済ませる必要があります。

そのためには、最初に全ての手術室の予定時間と内容を把握して、アサインする人員を考えなければいけません。

しかし、手術時間はあくまで予定です。
ある程度は前後することがザラであり、3時間の予定が5時間にのびることも珍しくありません。

そんな場合には、後ろにスケジュールされていた手術の為に慌てて別の部屋を融通したり、2~3部屋を一度に対処(制限時間10分)するハメになることもあります。

そうしたリスクを先読みし、パズルゲームのように人と仕事を割り振っていきます。


この仕事のキモは「絶えず状況を把握して、やるべき事を優先度付けしてテキパキ動くこと」と言えそうです。



さらに、仕事内容に清掃だけではなく、手術に使う医療機材を部屋にセットする役目も含まれます。大きい機材は運ぶのがけっこう大変なんです。

Cアームなんかが特に厄介です。
デカいから、ぶつけないように気を遣うんですよね。

患部を覗いているのがレントゲンを撮るCアームです。デカくて重いけど働き者。


他にもベッドや電気メス、各種の医療機材を移動させるために、医療スタッフで溢れる狭い通路を右往左往します。

機材の移動にも、簡単なパズルゲームの要素があります。

限られたスペース内を、どの順序で何から運べば効率的か?どのタイミングで割り込みの救急患者さんが来ても大丈夫か?を考慮して配置していきます。


何をどう清掃するのか?


清掃する対象は、血まみれの医療機材、ベッド、床、壁、頭上ライト、血や体液であふれる吸引器具などです。

・・・大丈夫、コワくないですよ。


使用後の医療器具や注射針なんかは、頑丈な医療廃棄物の箱にまとめます。
なお、注射針をうっかり刺すと病気に感染する恐れがあるので、清掃中にも注意が必要です。

出典元:株式会社山本清掃「感染性廃棄物(医療廃棄物の)「バイオハザードマーク」の意味や種類について


手術直後の手術室というのは、大なり小なり血まみれです。

ほぼ出血がない手術(眼科とか)もありますが、ベットの側面や裏側まで血液でベットリなこともザラです。

しかし、血が残った部屋で次の手術を行うのはご法度です。一滴でも残っていればNGなので、徹底的に次亜塩素酸ナトリウムで拭いていきます。


服装はこんな感じです。

ちなみに、ガウンの下には医療スタッフ向けに消毒された服を着ています。

医師も看護師も検査技師も清掃業者も、みんな似たような格好です。
とにかく衛生第一!

仕事のやりがい&向いている人


この仕事は、献身的に尽くすのが得意な方、キッチリするのが得意な方に向いています。

完全に黒子だし、単純労働の側面は確かにあるのですが、医療が円滑に流れるサポートができるのは悪くない気分です。血が怖いとかは正直最初だけです。慣れればケチャップと同じ。

あと分娩室から新生児の泣き声が聞こえてくると、何度聞いてもほっこりするものです。

医療関係の専門学校に通っている人にも適しているのではないでしょうか。
現場を理解するに少しは役立つはずです。実際にそういう動機の人間も在籍していました。


この仕事をやろうと思った背景は掃除道 ⇒ そして「プチ悟り」へ


20代中頃に仕事を辞め、先を思いあぐねていた時に、一度初心にかえろうと思いました。

その時ふと、イエローハット創業者の著書である「掃除道」を思い出し、クソみたいなプライドは捨てて掃除でもするか!運気をアゲるか!と考えだした折に、この仕事を見つけました。

どうせなら、人の嫌がるものを掃除してやろうと思ったワケです。


しかし、実際に現場に入ると、認識の甘さに気がづきました。

仕事をする対象が血だろうが便だろうが、グロテスクな手術場面を日常的に見ようが、毎日のように悲しい中絶手術が(別記事で扱う予定です)行われていようが、人はなんだって慣れてしまうものです。

そもそも、血や便が汚いというのなら、生物は全て汚物の塊なのですから。



「人間の血や体液は汚い、それを扱う手術もコワイ」

なんてイメージが一般化しているけれど、そんなものは先入観に過ぎません。


従って「汚いものを掃除することで精神を叩き直そう」という動機は、根本的に間違っていました。

なぜなら、美醜を決めているのは、その人の固定観念に他ならないのだから。
キレイとか汚いとか言ってるようでは、まだまだダメだから。

それに気づいた後は、チンケなプライドと一緒に汚れを落としまくる日々を送りました。



仏教でいうところの、不垢不浄(ふくふじょう:ものごとには本来、汚いとかキレイという意味はない)というのは、きっとこういう意味なのでしょう。

五臓六腑に染みわたる経験でした。
ちょっとだけ悟りを開いた気分にさえなりました。


まとめ


有名な映画「おくりびと」では、納棺士に対する偏見が、徐々に覆されていく様が描かれています。

ヒトのご遺体をていねいに納棺するの美しいのなら…ヒトの生体から発生した医療廃棄物を片付ける仕事が、卑しいわけがありません。


手術室の清掃バイトは、いわば「そうじびと」です。

単なるアルバイトや労働と捉えずに、その現場から学べる価値を重視できる方にとっては、悪くない仕事ですよ。


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