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サッカーと人生は「つぶし」がきく 。柿谷になれないなら岡崎になれ

柿谷曜一郎を目指すな。

ムリだ。


自分に合った戦い方を見極めろ。

という話をします。




柿谷曜一朗が引退を表明


サッカーの柿谷曜一郎選手が引退を表明した。


周りがドン引きするほどの才能を持っていた彼には、サッカー以外にも通じる真理を教わった。



人間に与えられた才能の多様さや、その活用方法のバリエーションの広さ…

つまり世界の奥深さである。


柿谷の何がスゴイのか?


柿谷曜一朗を知らない方のために説明すると、彼は歴代屈指のテクニシャンとして知られるサッカー選手である。

現役選手の間でも「柿谷クラスに上手い」などとベンチマークに使われるほどの技術力と知名度を持っている。小学生の頃からずっと日本代表。

彼の真骨頂は、曲芸を思わせるボールコントロール能力にある。


これなんかヤバイ。ゾッとする。

もし他の選手なら「とっさに出した左足が偶然いいトラップになったんだろ?」などと思うが、柿谷の場合は計画通りなのだろう。ょっちゅう見るから。



サッカーにはボールを扱いやすい身体の部分や向きがあって、ある程度は動きにセオリーが導き出される。


ディフェンダーはその予測をもとに守っている。進行方向を限定したり、利き足側に身体をぶつけて邪魔したり。

そしてパスを出す味方選手も、受け手がなるべく処理しやすいようなパスを心がけている。そのために死ぬほど練習している。


だというのに、柿谷は厄介なパスが来ても難なくトラップしてしまう確率が高い。とても高い。ボールを扱う感性がフツーではない。


だから、セオリーをぶち壊した動きを涼しげな顔で繰り返せる。

ぶっちゃけコワイ。引く。


実に柿谷らしい。背負いながらオーバーヘッドは結構あるけれど、このスムーズさは異常である。



 
これは別の選手(ロベルト・バッジョ)の動画だが、柿谷が同じことをするのを何度も見た。

「右後ろから来るボールを、右足で左側にトラップする」みたいなやつだ。


そんなんできひんやん普通。

オーバーヘッドとかの方が素人ウケはいいのだろう。しかし、経験者にはこっちのほうがはるかにヤバい。


ロベルト・バッジョはインステップ気味に足首の可動域でボール下部をクッションして勢いを殺しているようだが、柿谷の場合は「右足インサイドでボールの上側面を触って地面と挟みこむ形で」ボールのスピードを殺していた。


ちょっと何やってるかわからない。どう考えても向きが逆だろ。左右も上下も!マネしたら1ミクロンもできなかった。

そんなのを試合中にナチュラルに披露されたら、俺なら泣く。


こんな映像がゴロゴロ出てくるのが柿谷だ。見えている世界が違う。



子どもは柿谷のマネはするな



マネをするなら、柿谷よりもイニエスタなんかがオススメだ。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%8B%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%82%BF


「基礎動作を最小限かつ最速の動きで繰り出す」

という剣豪っぽいイニエスタのスタイルは、サッカーの教科書によく喩えられている。

柿谷のようなハデさや意外さはないが、あれができれば世界中のどんな選手や監督にも認められるだろう。あらゆる局面でゲームを加速させるから。



なぜ柿谷よりも基礎ガチガチのイニエスタを推すか?といえば、「インサイドで止める」といった基本動作を身体のどの部分でもできる人間(!)でなければ、あのスタイルは実現できないからだ。

柿谷にとっては「基礎動作を最小限かつ最速の動きで」という言葉の意味が変わってしまう…というだけだ。


良い子のみんな!柿谷のマネをしようとして時間を無駄にせずに、イニエスタを目指しましょう。

フロンターレ式の「止めて蹴る」の基礎訓練を嫌になるほどやりましょう。


これだけでイニエスタみたくW杯優勝できるから。ボクシングの「左を制するものは世界を制する」 と同じだ。



凡夫は岡崎になればいい


とはいえ、99.99%の人は柿谷にもイニエスタ にもなれない。


ならば岡崎慎司を目指せばいい。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A1%E5%B4%8E%E6%85%8E%E5%8F%B8


日本代表得点ランキングで歴代3位、出場数でも4位の記録を持ち、欧州リーグで3度の二ケタ得点をはじめ、世界最高峰のプレミアムリーグで優勝すら成し遂げたほどの岡崎だ。

しかし、ミーハー層には恐ろしく知名度が低い。





だからこそ知ってほしい。

岡崎には、柿谷のような狂った運動精度や、イニエスタのような洗練された基礎と視野の広さがあるわけではない。さらには、足も遅ければ背も低かった。

誤解を恐れずに言えば、サッカーの才能があったと評価する関係者は少ない


にもかかわらず、なぜ彼は結果を残せたのか?

それは「動き出しの質」という自分の武器を磨き続けたからだ。とても地味な武器を。


僕は欠点だらけのプロサッカー選手。

足が遅い。背も低い。テクニックもない。人気もない。そして、アタマもあまり良くない。でも、それが幸いした。

「才能がない! 」と、悟ることもないし、毎日、強い課題意識をもって練習に取り組めるから。

同書より引用


サッカーという競技の奥深さは、工夫で補える領域の多さにある。 

例えば、

・昔からサッカー選手にはチビが多い。歴代最高の選手ことリオネル・メッシの身長は168cm。日本人男性の平均より下である。

・50m走が中学生の平均タイムより遅いくせに、快速選手たちをゴボウ抜きにできた本山雅志がいる。

・体育の成績で一度も「5」も取ったことがないのに日本有数の選手になった、サッカー特化型アスリートの中村憲剛がいる。

・リフティングが100回ぐらいしかできない野人もいる(遅くも中学に入るまでに達成できないとヤバイ水準)。


他にもガリガリのノッポもいる。オフの度にブヨブヨに太るのもいる。すぐキレてレッドカードをもらうのもいる。長距離走がダメな選手すら存在する。

つまり、特定の能力がなかったとしても他の力で補える余地が大きい。結果として、他のスポーツと比べ選手の多様性が強い。



そんな「つぶしの利く」サッカーだからこそ、岡崎のように自分の才能を伸ばし続けることが成功を引き寄せたのだろう。


私たち凡夫がお手本にするべきは、柿谷やイニエスタよりも岡崎慎司なのだ。


…ただし「アタマもあまり良くない」という自己評価だけは絶対違いまっせ、岡崎さん。


天才じゃなくても大丈夫


サッカーを「つぶしの利くスポーツ」と表現したが、人生には遠く及ばない。

人生にはありとあらゆるプレースタイルが許可されているのだから。


ドイツでクラブ経営者として第二のキャリアを歩み始めた岡崎氏、指導者のライセンスを取得中であるイニエスタ氏、次なるステージへ進もうとしている柿谷選手をこれからも注目したい。



アンドレイ・イニエスタさん、岡崎慎司さん、現役生活お疲れ様でした!

柿谷曜一朗選手は最後まで頼むぜ!

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詠み人知らず
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