村上春樹 『街とその不確かな壁』 を読む ①
「その」タイトルの違和感
タイトルから違和感が最高潮。
なぜなら、もし、これから始まる話がストレートに街と壁の話ならば、『街と壁』が最もシンプルで強いタイトルだろう。
もし「不確かな」が重要なのであれば、『街と不確かな壁』で十分意図をなせる。普通はタイトルに「その」は必要ない。つまり確信犯である。
本文、一行目を見て欲しい。
きみがぼくにその街を教えてくれた。
☝️ 早速「その」が使われる。しかし、タイトルで「その」がかかるのは街ではなく「不確かな壁」だ。順番がひっく