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90年代のヒリヒリした空気感の中に作り上げた虚構で生きる少女「式日」

今回は、庵野秀明監督作品「式日」について。

2000年公開ですが、90年代の世紀末的な空気感があって大好きな映画です。


あらすじ

撮るべきテーマを失い、故郷へと戻ったカントク。ある日彼は、明日を拒絶し“誕生日の前日“を生き続ける“彼女“と出会う。カントクは彼女に興味を抱き、カメラを手にする

カメラワークや構図が美しく 好きなシーンが多いので、私のスマホの待ち受け画像は3年くらい「式日」です。

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庵野監督の趣味がひたすらてんこもり

冒頭から、工場地帯がどどん。

電線や煙突。さびれた風景に線路。繰り返される時報が不安感を掻き立ててくるし、場面転換のときのピアノの音、そして美しいクラシックは健在。

わ~!これだよこれ~!!!

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線路に横たわる女の子がトラウマのように繰り返す

「明日は、私の誕生日なの」

原作者の藤谷文子さん演じる「彼女」は天真爛漫で無邪気で、不思議な魅力。そんな 彼女に惹かれて「カントク」はビデオカメラをまわして、彼女を撮る。

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真っ赤な衣装の女の子、とか 白塗り、とか随所に寺山修司の「田園に死す」っぽさもあり、これも庵野監督の原点であって、「らしさ」に含まれるのかな。

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庵野監督作品の中で岩井俊二が映画を撮っている、というシチュエーション

これだけで私のフェチズムに刺さりまくっています!!

この映画の個人的に好きなところは 庵野監督の、現実なのにどこか虚構のような不安感と孤独感のある日常、の中で 岩井俊二が撮る ノスタルジックで優しい映像。この二人の「らしさ」がお互いの要素を中和していて

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とても、良い。(しみじみ)

カメラ越しに観る「彼女」はとっても可愛くて、お洋服・髪型・メイク・行動・言動すべて印象的で魅力的。

でも、ふと次のシーンにはいなくなってしまっていそうな。存在自体が不安定で、危うくて ギリギリな感じ。たまんないな~、すごく好きです。


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シン・エヴァ ラストにも描かれていた「庵野監督の好きなもの」

庵野監督はシン・エヴァの舞台挨拶で「ラストカットに凄い費用をかけて追加した好きなものがある」と話されていましたが、これはこの映画で彼女の住む廃ビルです。ラストの空撮映像に、取り壊されたこのビルをCGで追加し、時空を超えて存在させています。

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そしてこの物語では、彼女の住まいである ビル自体が、彼女の心情のメタファー。

彼女のプライベート空間。初めてカントクを招き、そこではじまる 彼女 プレゼンツ!おうちツアー!

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1フロアごとに違う雰囲気をもつ彼女の「部屋」を自慢げに紹介していく。カントクはそれをビデオカメラに映す。

この、誰も踏み入れたことのない、誰も知らない、自分だけの「部屋」を、カントクだけに ひとつひとつお披露目していくのが、すっごく可愛いし、わくわくするし。彼女の心情を表した、大好きな表現。

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そしてこの映画を観て、だいぶ時間が経った後にシン・エヴァを観たのですが・・・庵野監督はブレないなあ、と改めて思いました。

「作り上げた現実」は、いつまでも続かない。ラストは とても「らしい」終わり方でした。


まとめ

この映画は、細かい設定にリアリティーがないし(なぜ女の子が廃ビルで一人で住んでいるのか?など)起承転結の波が大きくないので、よくわかんない、とまとめられてしまったらそれまでなのですが。

ビルでのシーンは特に 引きの映像が多い分、本人たち以外の空間に散りばめられた感情の動きとか、色々な発見があって(わたしもまだ全然わかりきれてないから、改めて観たいな)難しい映画だけど、すごく面白いなあって思うのです。

そしてシンプルに、工場地帯バックに二人で仲良く歩いているだけのシーンが、とにかく可愛くてキュンでした。

声も動きも表情も控えめで、可愛げのある カントクの包容力にハマってしまいそうでした。(危ない・・・。)

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トラウマ要素があるので、急なホラー演出が入ります。(これは2000年くらいの邦画あるあるなのかな?たまにあるよね)苦手な方はお気をつけてね。もし機会があれば是非観てみてほしいです。

LOVE&POPよりも生々しさがなくて観やすいのかな?と思ったけれど、どうなのかな~。どっちも大好きです。庵野監督の実写映画が、もっと観たい私でした。



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