しかっちゃってごめんね、の代わりに。お母さんの救いになる絵本をつくるまで
私は今、絵本を書いている。
といっても、実は5年前から思い立っては絵本のコンテストに応募している。
まったく賞にはかすりもしないから趣味のようなものだけど。
絵本をかくことになったきっかけは、コピーライター時代にかいたコピーだ。
ブレーンというクリエイティブの専門誌の「子どもに絵本を読み聞かせたくなるコピー」のコンテストで、グランプリをとった。なんだか過去の栄光のようで恥ずかしいが、私が人生で一番嬉しかった賞。上司の発案で部署のみんなと応募したのが懐かしい。
あれから7年。私はこのコピーに救われるとは思ってもいなかった。
やっぱりね、子供を育てていると、怒りたくなくても大きな声で怒っちゃうことってある。というか、日々怒っては、自己嫌悪の毎日。
でもね、本当は怒りたくないの。
イライラもしたくないの。
子どもにはいつものびのびしていてほしいの。
自分の感情を素直に出せない子どもになってほしくないの。
親の顔色をうかがいながら過ごす子どもになってほしくないの。
だから、怒ってしまったらその日のうちに「ごめんね」って伝えたいんだ。
だから、私は絵本を読みきかせる。
親のエゴかも知れないけど、嫌がらない限り読もうと思っている。
絵本は単に言葉を教えるための手段じゃなくて、コミュニケーション手段だんなんだよね。
ひざのうえに座らせて、絵本の言葉にない言葉をかけあって、ときには子どもが突然おどりだしたりもする。
そんな、親子の会話が生まれる手段なんだよね。
だから、私は絵本をつくる人になりたいって思うようになった。
お母さんを救う絵本をつくりたい。
しかっちゃった日の夜に、読み聞かせたくなる本をつくりたい。
ごめんねが言えないまま、布団の中で泣くお母さんをなくしたい。
私は「しかっちゃってごめんね、の代わりに」なる絵本をかきたいんだ。