高身長女子をコンプレックスにさせる日本社会
自慢からコンプレックスへ
学校でどこかに移動する時や集合する時、誰もが背の順で並んだことがあるだろう。私は常にその一番後ろにいた。小学生までは誰より身長が高いことに優越感を抱いていた。周囲が一様に「モデルになれるよ」と言ってくれることも、嬉しくて仕方なかった。
しかし中学生になると同時に、それはコンプレックスへと変わっていく。思春期を迎え、友達との恋愛話も増えていく中で、高身長女子は男子から“モテない”ことを知ったからだ。低身長の女の子が言う「背が大きくていいな」には、「小さい私の方が可愛いけど」という皮肉が隠れているように感じるようになった。
更にコンプレックスを増大させたのは高校時代。初めてできた彼氏とのデートに張り切って、ヒールを履いていった。そのせいで彼氏の身長を抜かしてしまった私に彼は「嫌がらせかよ」と一言。自分より背の高い彼女は嫌だ、と言われたようだった。
男性の目に可愛く映るのは、結局のところ、背が低い女子なのだ。こうした風潮を嫌いながらも、やはり男性の目線を通して自分を評価してしまう。そうした矛盾への苦しさが、私の特徴をコンプレックスに変えていったのだった。
高身長女子への棘
世の中のふとしたことにも、高身長女子を傷つける要素は溢れていると思う。たとえば「カップルの理想の身長差」がある。主に男性と女性が付き合うなら、15cmの身長差がベストとされる通説だ。
この類を紹介するウェブサイトに、女性が男性よりも高く表記されているのを見たことがない。彼女が彼氏より15cm背が高かったら、理想の身長差とは言えないのだろうか。
恋愛作品も同様だ。恋愛もののドラマ、映画、漫画、どれを見ても、女性の身長の方が低い。稀に女性の身長の方が高い作品も見かけるが、女性の説明に「高身長」や「巨人」といった言葉が使われており、特殊な男女の組み合わせとして描かれている。彼氏よりも背の高い彼女は、普通でないのだろうか。
こうして見ると、付き合うなら自分より背の低い女性がいい、女性は身長が低いことが普通という考えが偏在していることが分かる。どれだけ褒められても、こうした空気に触れる度にコンプレックスは刺激されるのだ。
高身長に言及すること自体、それを特殊に捉えているといえる。体に一つほくろがついていても特別言及されないように、高身長も取り止めのない特徴になってくれたらと思う。
自身の言動、社会の空気が高身長女子を生きづらくさせていないだろうか。「背が高いね」と言う前に考えてみてほしい。
執筆者:市川南帆/Naho Ichikawa
編集者:三井滉大/Kodai Mitsui