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「すべてのイラン人女性のために」日本から世界に向けて呼びかける、12人の思いとは?

/違和感ポイント/
「11歳で警察に捕まった」「捕まった甥と連絡が取れない」「当事者かどうかは関係ない」

2022年10月1日、東京・渋谷で「東京デモ:イランの人々のために(以下:デモ)」が、在日イラン人有志により開かれ100人近くの人が集まった

頭髪を隠すスカーフ「ヒジャブ」を適切に着用してないという理由から、イランの風紀警察に逮捕されたマフサ・アミニさん(22)の死亡に対する抗議活動が行われた。

イランでは、9歳以上の少女と女性に対して公共の場におけるヒジャブ着用を義務付けている。9月13日(現地時間)、テヘランを訪れていたアミニさんは、女性の服装を取り締まる風紀警察によりアミニさんは拘束された。

拘束中に意識不明となり病院に搬送されたものの、同月16日に病院での死亡が発表された。テヘラン警察はアミニさんの死因を「心臓発作」としているが、アミニさんの家族は「心臓に問題はなかった」と話している

デモ主催者の1人であるFatemehさん(イラン人女性、東京在住)は、「サポートしてくれる人を探して、知り合い1人1人にSNSでメッセージを送りました」と話す。

どのような人が、どのような思いを持ってデモに参加したのだろうか?

デモに参加した12人にインタビューを行った。

Aisuさん「全てのイラン人女性のためにいる」

写真=Aisuさん。イラン・カシュガイ出身、現在は日本で働いている。撮影=原野百々恵

「私はイラン・カシュガイ族の出身で、イランの中ではマイノリティです。今日は、カシュガイの伝統的な服を着ています。イランの法律では『髪が見える』という理由で、この服を着ることが許されていません。私はこの服を着ることができないガシュガイの女性を代表して来ています。そして、マフサ・アミニさん、全てのイラン人女性のためにここにいます」

イラン人男性「捕まった甥と連絡が取れない」

写真=デモの様子。撮影者=RIHOKO

「僕の甥(妹の息子)はまだ20代ですが、イランで(平和な)デモに参加したことで警察に逮捕されました。妹とは連絡が取れているのですが、甥とは(取材時点で)二日間連絡が途絶えていて、どうなっているかがわからない状態です。

政府には辞めていただいて、国から出ていただきたい。新しく自由な国を作りたい。日本にいるみなさんには、今日みたいな集まりがあったことを世界に届けて欲しい。僕たちが国を取り戻せるまで、一緒に届けて下さい」

※この方は安全上の理由から匿名を希望されました。

Saraさん「11歳で警察に捕まった」

写真=Saraさん。大学での留学のために日本に数ヶ月前から滞在。それまでの24年間はイランで暮らしていた。撮影=RIHOKO

「わたしの周りでは、マフサさんのように警察に捕まったことがある女性達が何人もいました。私もその1人です。初めてヒジャブの着け方を理由に警察に捕まったのは、わずか11歳の時でした。”正しく”ヒジャブを着けないと、男性を誘惑していることになると言われました」

キヤニさん「今の政治リーダーと仲良くしないで」

写真=キヤニさん。イラン・テヘラン出身。日本に16年間住んでいる(自営業)。撮影=RIHOKO

「マフサ・アミニさんの事件は、新しい問題ではないです。イランでは女性だけではなく、男性の服装や髪型に対しても、取り締まりが行われています。過去40年の間にも、イランの中では沢山のデモが行われました。特にインターネットやSNSがなかった時代は、デモに参加している国民を殺したり、暴力を振るったり、捕まえて刑務所に入れたりすることはもっと簡単でした。でもイラン人も諦めずにデモに参加しました。

新しい政治、新しい政権が必要です。日本の岸田総理にも伝えたいです。今のイランの政治リーダーと仲良くしないで。その人たちは恐ろしいし、汚い奴らです。沢山テロをやったり人を殺したりしています。岸田総理もイランの国民の味方になって欲しいです」

モナさん「娘にも知って欲しい」

写真=モナさん。イラン出身、4歳の時にイランから来日。撮影=RIHOKO

「イランではデモにより人が亡くなっています。その死を無駄にしないように、ここで私たちも声を出していかないといけません。海外にいる自分達にできることは少ないし、イランにいて同じように血を流せるわけではありませんが、せめてできることを...という思いで参加しました。イランは大好きですが、政治は悪い。

今日、ずっと日本で暮らしてきた娘をデモに連れてきたのは、知って欲しいから。イランを嫌いにならずに、イランの人たちが戦っていることをリスペクトして誇りに思って欲しいです」

30代女性「当事者かどうかは関係ない」

写真=30代女性(匿名希望)、日本出身。撮影=原野百々恵

「世界には女性だからという理由で尊厳や権利を奪われ、抑圧されている女性たちが多くいます。それに抗議しなきゃダメでしょって思い(デモに)来ました。差別に声をあげることは、当事者かどうかは関係ない。社会にいる個人として声を上げる権利があると思います。世界の全ての差別に声を上げることは難しいですが、できる時にできる人ができることをすることが重要なのではないでしょうか」

※この方はプライバシー上の理由から匿名を希望されました。

SONA MOKRI(髙橋ソナ)さん「関心がないのは勉強不足だから」

写真=SONA MOKRI(髙橋ソナ)さん。日本で生まれて、日本にあるイラン人学校でペルシャ語を学んだ。専門学校を経て、現在はファッションデザイナーとして働いている。撮影=原野百々恵

「私はイランと日本のハーフ。日本に住む多くの人には『イラン・中東では今回のようなことが起きていて当たり前』という認識があると思う。だから、もっと多くの人が関心を持たなくてはいけないと思う。

関心がないのは勉強不足だな、と思ってる。それに対して私は怒りを感じる時もあるけど、他国で起きる問題で私が知らないこともあるので、しょうがないとも思う。でも、こうやってイランで起きてる問題に対してみんなが1つになって声を大きくしているので、中東で起きていることにももう少しフォーカスしてもらいたい。殺されている若者達は日本の若者と同じように、映え写真を撮って楽しんだり、彼氏がいたり...そうやって楽しく生きてるような若者たちです」

Maressa Jorgeさん「連帯を示したい」

写真=Maressaさん。ブラジル生まれのアメリカ育ち。現在は日本でフォトグラファーとして働いている。撮影=原野百々恵

「私は先ほど、イランの法律を変えるために泣きながら戦っているイラン人女性と話しました。彼女がこのデモを通じて、多くの人が連帯を示している姿を見ることが、大きな変化に繋がると思います。イランにいる人たち、日本に住むイラン人の人たちのためにも連帯を示すことはとても重要です」

Bさん・75歳女性「そこには怒りがある」

写真=Bさん。撮影=原野百々恵

「知人に誘われて来た今日のデモですが、パワーを感じます。そこには、怒りがあると思うのね。イランで起きていることを、自分ごととして捉えられない人もいると思うけど、世界で起きてることは全て自分に関係のあることだから。ニュースを自分の問題として見ていく。そういうような感覚を研ぎ澄ませていって欲しいなと思います」

※この方はプライバシー上の理由から匿名を希望されました。

Hanaさん「髪の毛を切った」

写真=Hanaさん。イラン出身、日本でパートタイムとして働いている。撮影者=RIHOKO

「みなさんこんにちは。私はイラン出身で、日本に住み始めて4年が経ちます。今、私の国・イランでは人が殺されています。ヒジャブの身に着け方を理由に人が殺されています。髪の毛を切った理由は、サポートを示したいからです(参照1)。 こんなに馬鹿げたルールはもういらないです」

参照1:イランと世界の女性たち、髪を切ってヒジャブ着用強制に抗議「もうたくさんだ」

Fatemehさん「イラン人のために声を出してください」

写真=Fatemehさん。「東京デモ:イランの人々のために」オーガナイザーの1人。イラン人女性。12年前、日本で博士号を取得するために来日。今は東京で正社員として働いている。

「日本では、イランで起きてるような問題はないと思いますが、イラン人のサポート、イラン人女性をサポートして欲しいです。イラン人のために声を出してください。イラン人女性の正義を日本の政府へ求めてください。デモに出なくても、Tiktok、TwitterなどのSNSでハッシュタグを使ってイラン人の女性を世界に届けてください」

記事アップデート:プライバシーの問題により、インタビューを受けてくれた一人の方の発言、写真、名前を削除しました。


執筆者:原野百々恵/Momoe Harano、RIHOKO
編集者:金井薔那奈/Banana Kanei、三井滉大/Kodai Mitsui、石田高大/Takahiro Ishida


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